モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

東北には無い高山植物(1)ウルップソウ、ツクモグサ・・。

2022年03月02日 | 高山植物

今まで本カテゴリー(高山植物)で扱った花は東北の高山で見たものが大多数を占めている。
東北の山は(尾瀬の燧岳を除くと)一番高くても鳥海山の2200m程度であり、
厳密な意味での高山帯(草本帯)は存在しないと言われる。
しかし山に行くと、標高が1400mを超えるあたりから、早くも森林限界が現れ、
高山帯のような景観になることが多い。
極端な場合は奥羽山系の真昼岳のように1000m程度でも森林限界に達している。
森林限界が異常に低くなっているのは、緯度よりも、厳しい気象条件(豪雪、強風)や山体効果、
他には(早池峰山や一部の火山では)地質的な要因もあると思われる。
そのため、既に本カテゴリーで報告しているように数多くの高山植物が見られるわけだが、
中部山岳や北海道には有るのに、東北の山には無いものもけっこう有った。

本編ではそういった植物を集中的に取り上げてみるが、
まずはウルップソウとツクモグサだ。

1993/07/16 白馬岳三国境にて。ウルップソウ。



写真は大昔(1990年と1993年)、北アルプス白馬岳で撮っものである。

当時はリバーサルフィルムを使用しており、後にフィルムスキャナーで画像ファイルに変換した。
既にフィルムの劣化が進行しており、あまり鮮明とは言えないが、どうかご寛容頂きたい。
1990年7月下旬に初めて白馬岳に登った折り、山頂でウルップソウを見たが、
残念なことに花は終わり、黒い棒のようになっていた。
その隣にやはり花は終わっていたが、ツクモグサらしき実を見つけた。

1990/07/28 白馬岳山頂にて。ツクモグサの実姿。



これらの花は開花が早い。
真夏の登山シーズンには花後のものしか見られないと知った。

1993年は7月中旬に登っているが、三国境のガレ場で、見慣れぬ花風景に遭遇した。
それはツクモグサの群生だった。

1993/07/16 三国境にて。






1993/07/16 白馬岳三国境にて。ツクモグサ。






ツクモグサ Pulsatilla nipponica はキンポウゲ科オキナグサ属で日本固有種。
生育地は本州では雪倉岳、白馬岳、八ヶ岳、北海道ではポロヌプリ、石狩山地、芦別岳、日高山脈。

白馬岳(三国境)では、
イワベンケイやミヤマキンバイ、ウルップソウと一緒に小さな叢を作っていた。

ツクモグサとイワベンケイ



ツクモグサとオヤマノエンドウ、ミヤマキンバイ、ウルップソウ



ウルップソウ Lagotis glauca は、本州ではツクモグサと同じく雪倉岳、白馬岳、八ヶ岳、
北海道では礼文島、色丹島に隔離分布しているが、
国外では千島列島、カムチャツカ半島、オホーツク、アリューシャン列島、アラスカと広く分布している。


1993/07/16 白馬岳三国境にて。ウルップソウ。




1993/07/16 白馬岳山頂付近にて。バックは杓子岳。



1993/07/16 白馬岳山頂付近にて。ウルップソウは構造土上に群生していた。白っぽい花はハクサンイチゲ。




白馬岳では他にも、東北では見られない花にいっぱい巡り合っている。
ここでは二種類だけ。

チョウノスケソウ Dryas octopetara var. asiatica 
はバラ科。名前は「草」だが低木。またチングルマに似ているが、別属。
分布は本州中部、北海道、千島、サハリン、朝鮮半島北部など。

基準変種のvar. octopetara は、北半球の高山帯や高緯度地方に広く分布。


1990/07/28 白馬岳にて。チョウノスケソウ。残念ながら花は終わる寸前だった。



1990/07/28 白馬岳にて。ハゴロモグサ。




ハゴロモグサ Alchemilla japonica
もバラ科。
花は地味だが、以前、ガーデニングをやっていた頃、
近縁種のアルケミラ・モリス(レディース・マントル)を
長年栽培していたので親近感がある。
本州では北アルプスと南アルプス、北海道では夕張岳のみ、海外では南千島、サハリンに稀に産する。

以上。



コメント (4)
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高山に咲くキク科あれこれ

2022年02月27日 | 高山植物

キク科の高山植物は、
既に、「キオンとトウゲブキ」、「高山に咲くアザミとトウヒレン」、
ウスユキソウの仲間は「ジャパニーズ・エーデルワイス(1)」と「(2)」などでも、
取り上げているが、本頁では、それ以外のキク科を扱ってみた。

ミヤマアズマギク Erigeron thunbergii subsp. glabratus var. glabratus
は国内では北海道と本州中部以北の高山に分布する(北海道東部では低地にもある)
と言われるが、
東北では少なく、私は早池峰山でしか見たことが無い。
よく似たアズマギク Erigeron thunbergii subsp. thunbergii は海岸や低山の乾いた草地で見かけるが、
山によっては1000mを超える高所にも現れる。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、冠毛の色と長さで識別するとあった。
・アズマギク・・・・・・・冠毛は帯赤色、長さ5mm。
・ミヤマアズマギク・・・・冠毛は汚白色、長さ2.5-3.5mm。  

2017/06/29 早池峰山にて。ミヤマアズマギク。



2017/06/29 早池峰山にて。ミヤマアズマギクとミヤマシオガマほか。




2017/07/20 早池峰山にて。ミヤマアズマギク。




2017/07/20 ミヤマアズマギク。バックはチシマフウロ。
 

                                      2017/07/20 ミヤマアズマギク(白花)


ウサギギクはヒマワリを小さくしたような頭花がよく目立つ。
和名は葉の形がウサギの耳を思わせることに由来と聞く。

国内にはウサギギク Arnica unalascensis var. tschonoskyi
とエゾウサギギク Arnica unalascensis var. unarascensis の二種があり、
分布域も重なるようだ(北海道ではエゾが多い傾向)。

エゾの方は、筒状花の狭筒部が無毛とのことだが、フィールドで識別するのは難しく、
下写真三枚はひとまずウサギギクとした。

2016/07/23 月山にて。ウサギギク。
他にハクサンイチゲ、ネバリノギラン、ヨツバシオガマ、ハクサンシャジンなどが混じる。




2020/08/18 鳥海山にて。ウサギギク。




2020/07/30 鳥海山にて。ウサギギク。
 

                                        2017/08/27 焼石岳にて。チョウジギク。


ウサギギクが出たので、同属のチョウジギク Arnica mallotopus も出してみる。

こちらは厳密には高山植物ではない。本州の日本海側と四国に分布し、
山地帯と亜高山帯の沢沿いや湿った草地に生え、遊水地や滝の周辺にも生えている。
東北では、『はまでうつくしい?(2)・・・』で紹介したオニシオガマと同時期、一緒に咲くシーンも見られる。
チョウジギクはウサギギクとはおよそ似ても似つかないユニークな花型だが、
同属なのでウサギギクとの自然雑種を作ることもある
(月山では、チョウジギクに小型の舌状花があるものが見られ、ガッサンウサギギクと呼ばれるが、
私はまだ見たことが無い)。

2017/08/27 焼石岳にて。チョウジギク。


2020/09/16 焼石岳にて。チョウジギクの群生。



ミヤマアキノキリンソウ Solidago virgaurea subsp. leiocarpa
は高山や亜高山帯でよく見かける花だが、

低山性のアキノキリンソウ Solidago virgaurea var. asiatica によく似ている。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
・アキノキリンソウ・・・・・・頭花の柄は総苞よりも短い。
 総苞は狭鐘形で外片は短く鈍頭。筒状花は頭花あたり10個以下。
・ミヤマアキノキリンソウ・・・頭花の柄は総苞と同長か少し長いことが多い。
 総苞は広鐘形で外片は長く鋭頭。筒状花は頭花あたり10個以上。
とあったが、理解できただろうか。
 

2015/08/02 月山にて。ミヤマアキノキリンソウの群生。



2020/07/30 鳥海山にて。ミヤマアキノキリンソウ。
 

                                     2017/08/06 焼石岳にて。カンチコウゾリナとタカネナデシコ。


高山植物で「コウゾリナ」の名が入る種類は、二種ある。

カンチコウゾリナ Picris hieracioides subsp. kamtscha は低地に多いコウゾリナの亜種だ。
コウゾリナは茎や葉に剛毛が多く、触ると痛い。
そのため、剛毛を剃刀(かみそり)に見立て、「カミソリ菜」⇒「コウゾリナ」となったと聞くが、
ミヤマコウゾリナ Hieracium japonicum は学名からわかるように別属(ヤナギタンポポ属)、
毛はあるが、触っても痛くない

2018/07/20 鳥海山にて。ミヤマコウゾリナ。



2014/08/02 月山にて。ミヤマコウゾリナ。
 

                                   2021/07/31 鳥海山にて。ミヤマコウゾリナ。


ヤマハハコ Anaphalis margaritacea var. margaritacea は低山にも見られることから、

高山植物とするには異論もあるかもしれないが、けっこう高所まで進出している。

2018/07/20 鳥海山にて。ヤマハハコ(とオンタデ)。バックは新山と七高山。



2008/08/12 鳥海山八丁坂にて。ヤマハハコ(とハクサンシャジン)。



高山にはヨモギの仲間も生えている。

タカネヨモギ Artemisia sinanensis は日本固有種。
本州の中部地方および東北地方に特産し、高山帯の日当たりが良い裸地に生育する。 

東北では少なく、月山の一部と朝日、飯豊連峰に有る程度か。
ヒトツバヨモギ Artemisia monophylla は本州の日本海側の高山、亜高山帯に多い。

2019/08/05 以東岳にて。タカネヨモギ。
 

                                    2016/08/11 乳頭山にて。ヒトツバヨモギ。


以上。


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高山に咲くアザミとトウヒレン

2022年02月23日 | 高山植物

他の地域はよく知らないが、東北の高山にはアザミが多いと感じる。
それが特に顕著なのは鳥海山。
この山の固有種、特産種のひとつにチョウカイアザミがある。

このアザミはどこから登っても、標高が1500mを超えるあたりから多くなる。
生育場所は草地がメインだが、雪渓跡の岩がゴロゴロ転がっているような裸地にもけっこう進出している。
草丈は1m前後。頭花は大型で花色は暗赤紫、遠目には黒っぽく見える。
総苞からは粘液が垂れている。

けっして奇麗とは言えないが、独特の存在感があり、よく目立つ。


2020/08/18 鳥海山にて。チョウカイアザミの群生。



2020/09/07 鳥海山にて。チョウカイアザミ。

 

                                                                         2018/07/20 チョウカイアザミ正面から。


チョウカイアザミは鳥海山だけだが、奥羽山系の山に行くと、

やはり同じような草姿で、もっと背が高く、頭花もでかいアザミを見かける。
オニアザミだ。
チョウカイアザミのように群生はしない。
分布は本州(石川県~秋田県)、日本海側地域に偏る。

次の二枚はオニアザミとしたが、厳密には変種のハリオニアザミかもしれない。


2018/07/09 和賀山塊薬師岳にて。オニアザミとニッコウキスゲ。



2013/07/20 秋田駒ヶ岳にて。オニアザミ。
 

                                        2011/07/19 八幡平にて。ハチマンタイアザミ。  


八幡平のアスピーテラインを走ると、
黒谷地湿原近くの道路端でオニアザミのような大型のアザミを見かける。

チョウカイアザミ同様、総苞から総苞からは粘液が出ているが、その量がすこぶる多い。
ハエ取りリボンのように粘り、たくさんの虫を捕えることから、
発見者の高橋喜平氏は、当初、「ムシトリアザミ」と呼んだが、

後に八幡平特産の新種、ハチマンタイアザミとして発表された。

以上、三種のアザミについては、『森と水の郷あきた』の頁、
山野の花シリーズ⑫ 鳥海・八幡平アザミ・・・』が詳しい。是非、参照頂きたい。


アザミの仲間は種類が多く、その分類はとても難しい。
図鑑で検索表等を見ても、さっぱりわからない。

そのため、私は、まずは分布域が限定的で、著名な種類から少しずつ覚えて行くようにしている。

ウゴアザミの分布域は、改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
八幡平、秋田駒、鳥海山、月山、朝日連峰となっているが、鳥海山に極めて多い。
滝の小屋ルート、鉾立ルートにある薊坂という地名はチョウカイアザミではなく、ウゴアザミに由来したもののようだ。

2016/09/03 鳥海山にて。ウゴアザミの群生。



ウゴアザミは焼石岳にも多かった。
このアザミの棘はけっこう痛いので、脛や腕を出して歩くと酷い目に合う。

2020/09/16 焼石岳にて。ウゴアザミの群生。



2015/08/16 秋田駒ヶ岳にて。ウゴアザミ。
 

                                      2020/08/19 早池峰山にて。ガンジュアザミ。

ガンジュアザミは岩手県の岩手山、早池峰山、五葉山などに限定的な種類のようだ。
「ガンジュ」とは岩手山の古名、岩鷲山にちなむとのこと。

月山もアザミが多かった。
鳥海山や焼石と同様、ウゴアザミが多いが、ここにはそれよりももっと痛いアザミがいっぱい。

ナンブタカネアザミだ。
花は割と奇麗だが、鋭い棘を満載しており、へたに触ってはいけない。

「ナンブ」とあるが、岩手県には少なく、栗駒山のみ。
他の分布域は鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊連峰、吾妻山と聞くので、

南部よりも山形や羽前を名乗った方が良さそうだ。

2016/08/20 月山にて。ナンブタカネアザミ。



2016/08/20 月山にて。ナンブタカネアザミ。
 

                                     2016/08/11 乳頭山にて。アオモリアザミ。

アオモリアザミ(オオノアザミ)は秋田駒ヶ岳より北に行くと、急に多くなる。
なおこの種類は高山だけでなく、低地にも多い。


次はアザミ属ではなく、トウヒレン属の仲間だ。
トウヒレンとは聞きなれない名前かもしれない。
ウイキペディアによると、
『トウヒレン属 Saussurea に属する日本産の種の和名については、
〇〇トウヒレン、〇〇ヒゴタイ、〇〇アザミとあり、紛らわしい。

北村四郎は、平凡社刊の旧版『日本の野生動物 草本III』で「日本ではこの属ははじめよく理解されないで、
トウヒレンとか、ヒゴタイとか、アザミとかに比較されて、名もはなはだ不統一で、でたらめの感が深い」としている。』
とあった。
また
『「トウヒレン」は「塔飛廉」の意で、日本産の種、セイタカトウヒレンを意味したものと考えられている。
北村によると「飛廉」とは、中国名でキク科ヒレアザミ属 Carduus のことであるが、
セイタカトウヒレンの直立した総状花序のようすを「塔」に見立て、「塔飛廉」としたという。
牧野富太郎による「唐飛廉」説もある。
「ヒゴタイ」は同じキク科にヒゴタイ属 Echinops があるが、あまり似ていない。
「アザミ」についてはアザミ属 Cirsium に似ていることからつけられたと考えられるが、
本属の種にはアザミ属の種のように葉に刺がないため容易に区別がつく。 』
との記述もあった。

トウヒレン属の高山植物は、中部山岳ならば、
クロトウヒレンが一般的だか、東北では磐梯山以外では見かけない。

登山道を歩いていてふつうに見かける種類は、早池峰山ならばナガバキタアザミ
鳥海山や焼石岳では(ナガバキタアザミの)変種のオクキタアザミの二種類くらいだろうか。

2020/08/19 早池峰山にて。ナガバキタアザミ(右奥のピンク穂花はナンブトウウチソウ)。



2020/08/19 早池峰山にて。ナガバキタアザミ。



2014/08/24 鳥海山にて。オクキタアザミ。



2020/08/18 鳥海山にて。オクキタアザミ。




2020/08/18 鳥海山にて。オクキタアザミ。 
 

                                    2015/08/16 秋田駒ヶ岳にて。ウゴトウヒレン?

奥羽山系や鳥海山の高所草地では、右上写真のような地味な色合いのトウヒレン属をよく見かける。
同様のトウヒレン属は低山の林内にも多く、いずれも名前が一発で特定できないのがつらい。

乳頭山にはヤハズトウヒレンが有るようだが、下写真がそれにあたるかどうかは何とも言えない。

2016/08/11 乳頭山にて。ヤハズトウヒレン?



以上。

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キオンとトウゲブキ

2022年02月21日 | 高山植物

キオンは東北地方では海岸や低山でもときおり見かけるが、
一部の山では山頂や稜線の草地に群生している。

その咲きっぷりがみごとなので、今回、高山植物のひとつとして取り上げてみた。

2015/08/02 月山山頂部にて。キオンやハクサンフウロ、ハクサンシャジンなどが咲き乱れる。



2015/08/02 月山山頂部にて。キオンとハクサンフウロ。        2019/07/26 和賀山塊薬師岳にて。
 


2016/08/11 笊森山のキオン群生地。



2016/08/11 笊森山のキオン群生地から荷葉岳を望む。



キオン、トウゲブキなどの分布マップ


▶キオンについては、高山で生育するケースのみ記載し、低山や海岸での生育地は割愛した。

▶マルバダケブキ、オタカラコウについては北部の生育個所のみ記載し、山形、宮城、福島での生育地の多くは割愛した。


真夏に北東北の高山を歩くと、海岸植物ツワブキのようなキク科植物をよく見かける。
トウゲブキだ。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
『トウゲブキ(エゾオタカラコウ、オニタカラコウ) Ligularia hodgsonii var. hodgsonii
山地~高山草原あるいは海岸草原に生える高さ30-80cmの多年草。茎は・・・(略)
頭花の基部に二個の小苞がある。(略)北海道、本州(東北地方)に分布する。
なおサハリン、千島列島、北海道には、
総苞に暗褐色の毛があるカラフトトウゲブキ var. sachalinensis が分布する。』

とあった。 
トウゲブキは東北地方では、山形県の月山以北の高山や青森では海岸近くにも分布するようだ。
鳥海山や焼石岳ではすこぶる多く、独特のお花畑を形成することから、
その二山での生育状況を報告してみる。

まずは鳥海山。

2018/07/20 鳥海山長坂道(標高約1650m)にて。
ここではミヤマトウキ、ニッコウキスゲ、ハクサンシャジンなども混生。




2021/07/31 鳥海山南面八丁坂(標高約1400m)にて。



2021/07/31 鳥海山南面八丁坂にて。
ここではシラネニンジン、エゾノヨロイグサ、クルマユリなども混生。




2020/07/30 トウゲブキ                         2020/07/30 クルマユリと一緒。
 



次いで、焼石岳では、
標高900m程度の中沼湖畔から咲き出していた。
この植物は草原だけではなく、湿原や水辺も好むようだ。

2021/08/05 中沼湖畔のトウゲブキ群生。



その後も登山道沿いの湿地にはトウゲブキの行列が延々と続く。

標高1400~1500mの姥石平、東焼石岳ではトウゲブキが主役のお花畑が展開する。

2017/08/06 東焼石岳のトウゲブキ群生。バックは焼石岳。






ここは初夏にハクサンイチゲやミヤマシオガマが群生していた場所だ。

真夏にはトウゲブキの他にコバギボウシ、クルマユリ、シラネニンジン、
ハクサンシャジン、ハクサンフウロ、二度咲きのハクサンイチゲなどが咲き乱れる。

焼石岳山頂ではキオンやウスユキソウを交えて咲いていた。
山頂を北に下りたら、南本内岳にも多かった。
ここではハクサンフウロやクガイソウ、後述のマルバダケブキと混生していた。

2018/07/27 南本内岳のトウゲブキ群生。



2018/07/27 頭花の基部の苞に着目。                  2020/10/09 トウケブキの秋姿
 



南本内岳ではやや大型の種類も混生していた。
こちらはマルバダケブキだ。

2017/08/06 マルバダケブキ                      2018/07/27 マルバダケブキ
 



マルバダケブキ Ligularia dentata はトウゲブキによく似ているが、やや大柄で花色はオレンジっぽい。
確実に識別するためには頭花の基部を確認する。

マルバダケブキは頭花の基部に苞が無い
マルバダケブキの分布域は、本州(東北~中部)、四国、海外では中国、ベトナム、ミャンマーと聞く。
焼石岳が北限かなと思ったが、その後、盛岡市郊外の低山でも見かけた。
トウケブキより少し低所に生育する印象だ。

トウゲブキ、マルバダケブキはともに、キク科メタカラコウ属 Ligularia に分類される。
同じ属のメタカラコウオタカラコウは東北の高山ではほとんど見かけないが、
折角なので自分が偶々見かけたものを紹介してみる。

2016/08/20 オタカラコウの群生。月山石跳川の湧水地にて。
 



2016/08/20 オタカラコウ                         2014/07/08 メタカラコウ。由利本荘市にて。
 


改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、オタカラコウの分布は少し変わっていた。
海外では、中国、シベリア東部、サハリンなのに、国内では、本州(山形県以南)、九州とのこと。
北海道や東北北部に無いのは何故だろう。
メタカラコウを初めて見たのは、昔、栂池自然園から白馬岳に登った時。
そのせいか、亜高山帯のイメージがあるが、

秋田県内では低所の出羽丘陵のあちこちで見かける。これもまた不思議な分布パターンだと感じた。


以上。

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はまでうつくしい?(2)深山や亜高山帯のシオガマ類

2022年02月20日 | 高山植物

前作『はまでうつくしい?(1)ヨツバシオガマとミヤマシオガマ』では
高山に咲くシオガマギクの仲間を紹介したが、
山地帯や亜高山帯に咲くものもある。
うつくしさでは、高山種に劣るかもしれないが、ユニークなキャラが多い。

1993/08/24 焼石岳(南本内岳)にて。オニシオガマの群生。左奥の山は三界山。



シオガマギク Pedicularis resupinata subsp. oppositifolia は、

手持ち図鑑では、北海道南部から本州、四国、九州、更に韓国に分布し、
山地草原に生えるとあったが、東北では見かけた記憶がほとんどない。

2019/09/07 東根山にて。シオガマギク。               2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。トモエシオガマ。
 



東北の山で見かけるのは、トモエシオガマ Pediculasis resupinata var. caespitosa の方だろう。

焼石岳や和賀山塊、月山の偽高山帯(亜高山帯)草地に比較的多い。

2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。トモエシオガマの小群生。



2015/08/02 月山にて。トモエシオガマ。



トモエシオガマとシオガマギクはよく似ている。

上から見て、ねじれた花冠が巴形に並ぶのが、トモエシオガマだと思っていたが、
シオガマギクやエゾシオガマも上から見ると巴形に並んでいる。
よってこの特徴で識別することはできない。トモエシオガマの花は茎の上の方にだけ付き、
シオガマギクは茎の途中からも花を出すことに着目した方がよさそうだ。

今一度、シオガマギクを。

2019/09/07 東根山にて。シオガマギク。上から見ると巴形に見える。



エゾシオガマ Pedicularis yezoensis var. yezoensis は、本州中部以北、北海道、サハリンに分布し、

高山の草地に生えるとされるが、東北では低山でも見かける。
また高山では雪田の近くの湿った場所に群生することがある。
花は上から見ると巴形に並んでいるが、色は緑がかった白なので識別しやすい。

2017/08/27 焼石岳(南本内岳)にて。エゾシオガマ。



2020/08/18 鳥海山の雪田付近で。エゾシオガマ。
 



2016/07/16 月山にて。エゾシオガマ。                2017/09/09 禿岳にて。エゾシオガマ。
 



ここで分布マップを。
トモエシオガマとエゾシオガマについては、かなりアバウトなので、
眼を細めてご覧頂きたい。




オニシオガマ Pedicularis nipponica は、日本固有種。
石川県から秋田県に至る本州の日本海側山地に分布するとされるが、
その後、青森県からも見つかっている。
深山の湿った谷間に生えるが、
岩手の焼石岳には何故かとても多く、中腹の湿地から山頂近くまで進出している。

1993/08/24 焼石岳(南本内岳)にて。オニシオガマの小群生。



2019/09/01 女神山にて。オニシオガマの蕾。             2019/09/01 女神山にて。オニシオガマの全体像。
 


国内に生えるシオガマ類としては最大。草丈は40-80センチ、ときに1メートルを超える壮大なものも有る。
なのに半寄生植物とは驚きだ。

全体に毛が多く、大きな葉は羊歯のように細かく裂けて、迫力満点。
中生代の花園に紛れ込んだような気分になる。

2017/08/27 焼石岳にて。オニシオガマ。               2016/08/20 月山にて。オニシオガマの終わり頃の穂花。
 



イワテシオガマ Pedicularis iwatensis も日本固有種。
分布域は狭く、岩手秋田の県境稜線の標高1000m前後の笹原や樹林下に生える
(最近、秋田の太平山や宮城からも報告あり)。
その花はでかいだけで格別綺麗ではないが、草姿がとてもユニークだ。
羊歯を思わせるような根生葉の間から、横方向に50センチ以上も花茎を伸ばし、その先に上向きに穂花を咲かせる。
よって葉と花を一緒に写すことはなかなか難しい。

2019/08/26 平ヶ倉稜線にて。イワテシオガマ。



2019/08/26 イワテシオガマの根生葉。                 2019/08/26 イワテシオガマの穂花。
 



2021/09/01 乳頭山にて。イワテシオガマ。



2021/09/01 上から花と葉を一緒に。                 2021/09/01 イワテシオガマの穂花。
 


何故、これほどまでに変な咲き方をするのか、理由はわからない。


以上。

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