さて、1本目は綾部市の山間部での古道復活の動きを言いだしっぺの高齢者の方とお仲間が始めた話題だ。この話題は地元でテレビ局に協力する住民ビデオカメラマンの経験豊富な村上さんがひょっこり現れ提案した話題だった。ご本人は気管系の病気もあり、山道を歩くのは難しいので、「わんど」のメンバーが協力する形で取材が始まった。高齢者の皆さん15人でチェンソーやスコップなどもって使わなくなって久しい山道を切り開いていくのだが、「わんど」のメンバーはカメラを回しているどころではなくお手伝いに忙しい!!結果的には重要な動きのときは当然、撮影していない。一緒に働いている。・・・、というまさに住民ディレクター番組になった。
映像があまりない状態でいかにその現場の空気を伝えるか?これが住民ディレクターの最も得意とするところだ。私も一緒になり映像を見ながら皆で「このときはどうだった?この作業のときは誰が何をした?」などとことん現場を再生して、構成を何度も何度も練り直す。このプロセスが多くの活動の整理をする段階で一番大事なところだ。編集作業と一体となっていく。またこのプロセスを一人でやってしまうのではなく皆で意見を交換しながら整理していくことが「発想の協働作業」につながる。編集で具体的に映像を切ったり張ったりしながら再度協働する。
編集が上がって、今度はそのつながった映像を見ながらどこで何を語ればいいかをまた皆で考える。「一人作品」にはない協働作業の連続が地域作りの大事な企画力とネットワーク力を育む。さらに本番前に時間に合わせて実際に話してみる。もう一度チェックする。そして本番、もうどこでどんなことを話せばいいかは何となくわかっている。が、やはり本番は即興だ。誰がいきなり何を言い出すかわからない。テレビ局ならかなりこの内容をシナリオ化しその通り事を運んでいくが、我々はそれをしない。いつも即興性を大切にする。だからとんでもない方向に寄り道することもあるが、それは我々の日常であり、一時的に緊張した15分の中で発言されることはやはりその人にとって大事なことなのだ。そこを大事にする。むしろそれを表現するためにそれまでの手のかかるプロセスを踏んでいると言ってもいい。
中心になったのは提案者の村上さんだ。村上さんはこれまで撮影だけしてテレビ局に送って放送で初めて見る番組とは違ってスタートからゴールまで全部自分が関わってきた番組作りにとても感動されたようだ。しきりに「足を引っ張った」といって謝られるが、「わんど」の代表長岡さんは村上さんのおかげで自分たちが地域に入って地域の人と一緒に活動できたのは村上さんのおかげだと感謝している。地域活動とつながることが課題だった「わんど」に新しい風が吹き込まれた。
住民ディレクターは素晴らしい。自分で発想し、平成8年から実践開始したものなので自画自賛になてしまうが・・・、皆さんのコミュニケーションが深まり、それぞれがイメージしていた映像化が具体的に映像になり共感しながら共有したイメージを具現化する。心ひとつになってこの住民ディレクター活動をすすめることが結果的に地域作りになってしまっている。平成7年、民放の中でやろうとしてやれなかった協働番組作りが今、全国各地の住民レベルで確実にカタチになってきている。
長くなってしまったので2本目の番組については次に書くことにする。
(写真は収録現場:綾部市、宮津市、兵庫・但馬の住民ディレクター合同チームだった)
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