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岸本晃の住民プロデューサーNEWS

台風5号通過中に考えた「住民自身の災害報道」

  九州をまたまた台風が襲ってきた。外はまだ雨風の音がするが、昼からするとずいぶん収まった。我が家は幸いたいしたことはないが、すでに避難している地域もあるようだ。 水害で思い出すのが、住民ディレクター発祥の地、熊本県山江村の農家であり村議の松本さんと取材した時のことだ。水害が激しかった翌日、たまたま村を訪れた私は松本さんについて被災地の片付けの手伝いを兼ねて、村人の現状を撮影した。松本さんはビデオカメラに触れて間がなかったので、交代で撮ろうと思ったが、さすがに村人の被災状況を見ると撮るよりは手伝うほうが主だ。私も実際は崖から落ちてきていた大きな岩をどけたり、荷物を運んだりで、わずかな合間にしか撮影はできなかった。 村議の前に近所の住民の松本さんは回れば回るほど被害が予想より大きいことがわかり、だんだん表情もつらくなっていた。被災住宅の方にかける声も真にやさしい。裏山の土砂崩れが押し寄せ、家の半分が土砂に埋まってしまった家では、本当に松本さんの表情がつらそうだった。 私はこの気持ちで松本さんが撮影する「山江村の水害」はどのようなものだろうと不謹慎だが心の中で考えていた。さらに翌日は見事に晴れた。私はビデオカメラを松本さんに託し熊本市内へ戻った。松本さんは今度は村議会の災害視察の委員として村内を回ったらしい。一応ビデオを持っていった。片付けもだいぶん進んでいたこと、多くの村議が一緒だったこともあって合間合間に撮影したらしい。 中には「ビデオでんもって(ビデオなんかもってきて)、なんばしよっとね(何をしてるんだ)、手伝わんね」と非難する村民もいたらしいが、一日を終えた感想を改めて伺った時に聞いたら、驚いた。それまではテレビで災害や飛行機事故などの時にテレビ局の人間が「お気持ちは?」とインタビューするのを見ていた時は「その記者を殴ってやろうか」と思うほど、腹が立っていたが、自分で今回こういう事態で撮影してみて「記録することの大切さを痛感した。」ということだった。メディアリテラシーそのものだ。しかも、被災状況を残すことにも意義があるが、村民が一生懸命助け合って復興していく姿をしっかり記録しておかなければと考えた。ということだった。 この話を語る松本さんはプリズムTV(http://search.goo.ne.jp/web.jsp?IE=utf-8&from=blog-edit&PT=blog-edit&MT=http%3A%2F%2Fwww.prism-web.jp%2Ftv/ 6番目の画面:水害をテーマに山江村と杉並区)で見られるのでぜひ見ていただきたいが、今日もテレビの災害報道を見ていると、現場は大変ではあるだろうが、相変わらずの紋切り型、やたらに声を張り上げているアナウンサーばかりで、スィッチを切りたくなる。 松本さんのような人たちがつながる「住民マス・コミュニケーション」が成立すると世の中のニュースは、本当に思いやりに満ち、自分のこととして伝えられる情報でいっぱいになる。よいニュースも不幸な出来事も現象面の面白さや、不幸の誇張ではなく、その事象の芯にある大事なことを共に考えられる機会を提供することになるだろうと思う。 住民であるからいい、のではなく、このような感性と行動力のある住民がテレビというメディアを使ってくれたらどんなに世の中に役立つことだろうと思う。 平成8年の春、このような気持ちで住民ディレクター活動を始めた。松本さんがビデオカメラをもち、編集し、テレビで発信する。この仕組みを早く作りたかった。今、全国に「松本さん」が相当増えた。「時は今」と思う今日この頃である


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