「濱地健三郎の霊(くしび)なる事件簿」
著者:有栖川有栖
「見知らぬ女」「黒々とした孔」「気味の悪い家」「あの日を境に」「分身とアリバイ」「霧氷館の亡霊」「不安な寄り道」
それぞれ最後の一行やワンセンテンスにインパクトがある短編集。
最後の「不安な寄り道」に至っては「…これも計算づくか⁉」と唸ってしまうw
著者にしては珍しいホラーもの(元々掲載されていたのがホラー系文芸誌)だがいわゆる本格ミステリーとも絶妙に融合している。
純粋な怪談(内容だけでなく言葉の選び方まで)から、むしろ(アイテムを霊的なモノに差し替えてあるだけで)紛う事なき本格ミステリーな作品まで、著者の筆は相変わらず冴えている。
そして何よりやっぱり文章が上手い。
特に時折散りばめてある「誰もが共感する描写」は鮮やかで、その一言があるだけで物語はグッと読者の耳に馴染む。
記憶に関する49ページのアレとか「顔」についての104ページの表現などは実に見事。
また個々のキャラクターについても活き活きとそしてある種生々しく描かれ更にリアリティが増す。特に助手の志摩ユリエについては一部にファンさえ居るようでww
さり気ない賑やかしネタが実は巧妙な伏線だったりするのは著者の十八番。
(小声)某大有名作品のラストについて軽いバレが有るのでほんのり注意(本作を読む以上は回避不可能と思われ)
どうやら続編も出ているようで…楽しみである。
蛇足…解説にある著者の「持論」もなかなか読ませる。
著者の他作品
江神二郎シリーズ
っ「江神二郎の洞察」
火村英生シリーズ
っ「絶叫城殺人事件」
っ「怪しい店」
っ「長い廊下がある家」
っ「火村英生に捧げる犯罪」
真夜中の探偵シリーズ
っ「論理爆弾」
っ「真夜中の探偵」
っ「闇の喇叭」
「満足度:◎」
◎:オススメ
◯:まずまず
△:好きな人もいるかも
×:読まない方が…
※:絶版キボンヌ