大晦日の初夜から3ヶ月ほど経った頃、ご主人様について裏の崖の上に行った。
その頃はまだ首輪もなく自由の身であったので、ご主人様が行く所へ付いて行って色々と探検をしていたのだ。
崖の上へ行くと、ご主人様は御神木の脇に積んである孟宗竹を下に落とし始めた。竹炭を作るためである。
何か面白い事はないかと、拙者は武器である鼻をクンクンとさせて辺りをうかがうと、ピヨンピョン飛び跳ねる虫がいた。その虫を前足でチョコチョコと触って遊んでいたが、その虫の奴が急に大きくジャンプし始めた。拙者は思わずそれに飛びついて捕まえようとした瞬間である。突然地面が消えた。その後の記憶は全くない。
気が付いたらいつも寝ているゲージの中にいた。
ご主人様が拙者の顔を心配そうにのぞきこみながら言った。
「おいクロ、大丈夫か? お前が急に崖から落っこちたからビックリしたぞ。落っこちて動かなくなったから、わしはあわてて降りていってお前の顔を見たら白目を出して息が止まっていたのだぞ。わしはお前が死んでしまったのかと思って、白目を閉じてやろうと手をお前の頭に置こうとしたら、突然「キャインーン」と叫び声を上げて起き上がったのだ。いやはや本当にビックリしたよ」
ご主人様は心配性である。あの程度の崖から落っこちて死んでしまうほど、拙者はヤワではありませんぞ。でも背中のあちこちがズキズキと痛みまする。なんとかなりませんでしょうかご主人様・・・・・・。
続く・・・・・・