戦後の横浜の繁華街・伊勢佐木町に根岸屋という店があった。
飲んで、食べて、踊って、騒いで・・・・
大衆食堂と大衆酒場とダンスホールを一緒にしたような、騒々しくも賑やかな店だった。
もとは進駐軍相手にオープンした店らしいが、その後は外国人船員や港湾労働者あるいは日雇い労働者なども来るようになり、かなり怪しい雰囲気の店となって行く。
後年、あの黒澤明監督が、『天国と地獄』という映画の中でこの根岸屋を使っている。ヤクの密売の舞台としてその根岸屋が登場するのだ。
黒澤が、「日本中で最もいかがわしい酒場を見つけてこい!」と号令を出して、白羽の矢が立ったのがこの根岸家だったという。
港町ヨコハマのそんな店に、愛友丸の男達も通って来た。
店の外壁には「INTERNATIONAL RESTAURANT NEGISHIYA」と書かれた大きな看板が掛けられていた。
店の中に入って行くと、奥の小さなステージでジャズバンドが静かな曲を奏でている。
天井には大きなミラーボールが妖しく輝いていた。
店内中程のテーブル席に松さん達が座ると、店を切り盛りしている女主人が明るく声をかけた。
「あら、松ちゃん、お久しぶり。いつハマに戻ったのよ」
「やあ、スミさん。相変わらず繁盛しているね」
「ええ、お陰様で。でも最近は色々とややこしい話があるのよね」
「そりゃそうだろう。ややこしい世の中なんだからな」
「アハハハーーーー。ところで松ちゃん、今日は何を食べるの?」
「そうだな・・・。牛肉たっぷりのカレーでも食うかな。後でウイスキーをロックで持ってきてよ。おい、みんなは何にするんだ?」
「俺もそれで良いよ」
健さんがそう言うと、他の仲間もみんな同じカレーとウイスキーになった。
奥のバーカウンターには、短いスカートをはいたスタイルの良い女が、長い足を組んでタバコを吸っているのが見えた。外人のような派手な格好をしているが、日本人のようだ。
その女をはさむようにして、進駐軍の兵隊らしい若いアメリカ人二人が、ジャズのリズムに合わせて身体を揺らしている。
バンドの音楽がアップテンポなジャズになっていた。
「これがヨコハマの夜か・・・・」
初めて見る店内のその光景に、耕一は心の中で思わず呟いていた。
続く・・・・・・・
あのころの耕一少年が懐かしく思い出されます。さて、どんな大人になっていくんでしょう?
本当に人生は分からないものだと思います。
明日のことは誰にも分かりません。
分かっていることは、今までの人生と、そして今、自分が何を考え、これから何をしたいと考えているのか、ということです。
・・・・・朝から、拙者は何か変なことを言っているようです。
いつも遅くにごめんなさい。
横浜も変わりましたね。
今はどうかわかりませんが、
昔は氷川丸に乗れたような・・・
船上ダンスパーティーに行った記憶があるのですが、
それが氷川丸だったか・・・?
横浜には違いないのですが。
ちょっと思い出してしまいました。
拙者も30年程前に氷川丸の見学に行ったことがあります。その時はすでに山下公園の波止場に係留されていて動いてはいませんでしたが、でもその船の中でダンスパーティが行われたのかも知れませんね。
しかし、それにしても、横浜で船上ダンスパーティとは、なかなかロマンチックな風情ですね・・・・。