帳場を通ると、耕一は女に案内されて二階に上がった。
女の部屋は六畳間で、既に夜具が用意されていた。
女が甘酒を持ってきた。
「これを飲むと温まるよ」
甘酒の入った熱い茶碗を両手で持つと、耕一は少しずつ味わうように飲んだ。
身体の芯が温まるようだった。
「お兄さんは船乗りさんかい?」
女が聞いた。
「うん、まあね」
耕一は部屋の中を眺めながら甘酒を飲んでいた。
タンスの上に童(わらべ)のコケシが飾られている。
「あのコケシはどこのもんなの?」
今度は耕一が聞いた。
「ああ、あれね、あれは私の故郷(くに)のものさ」
「あんたの故郷はどこなの?」
「新潟さ。新潟の弥彦(やひこ)ていう所さ」
「へぇ・・・。弥彦ねぇ。 どんな所なの?」
「弥彦山の麓に弥彦神社っていう大きな神社があってね。その麓から越後平野が広がっていくんだよ。温泉も出るし。とても良い所だよ」
「へぇ・・・・。なんでこんな所へ来ちゃったんだい」
「そんなことは、どうでもいいじゃないかい。ところで、今夜はチョイの間かい、それとも泊まりかい。泊まっていってくれると有り難いんだけどねぇ・・・・」
女は遠慮がちに言った。女はそう若くはなかった。30半ばくらいだろうか。あまりお客が付かないのだろう。
耕一は、そんな女ともう少し話をしてみたいと思った。まだ素人っぽさが抜けない、田舎の匂いのするそんな女の話を聞いてみたいと思った。
「泊まるよ」
タバコの火を消しながら、耕一はぽつりと言った。
女は嬉しそうに立ち上がり、カーテンを閉めようとして外を見た。
「あら、雪が降っているわ。・・・・・故郷(くに)はもう一杯雪が積もっている頃だわ」
窓を開けて、女はハラハラと舞い降りる雪を眺めていた。
続く・・・・・・・
ひと晩中、語り明かすようかしら。
そういうのも良いですよね。
え?
そんなわけにはいかないですって・・・?
まぁ。
どうなるんでしょうかね・・・・。
夏雪草さんならどうしますか?
この状況で・・・・・。
雪の降る夜に、孤独な男と女が・・・・・。