クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

耕一物語ー遊郭の女

2014-09-10 09:05:01 | 物語

帳場を通ると、耕一は女に案内されて二階に上がった。

女の部屋は六畳間で、既に夜具が用意されていた。

女が甘酒を持ってきた。

「これを飲むと温まるよ」

甘酒の入った熱い茶碗を両手で持つと、耕一は少しずつ味わうように飲んだ。

身体の芯が温まるようだった。

 

 

「お兄さんは船乗りさんかい?」

女が聞いた。

「うん、まあね」

耕一は部屋の中を眺めながら甘酒を飲んでいた。

タンスの上に童(わらべ)のコケシが飾られている。

「あのコケシはどこのもんなの?」

今度は耕一が聞いた。

「ああ、あれね、あれは私の故郷(くに)のものさ」

「あんたの故郷はどこなの?」

「新潟さ。新潟の弥彦(やひこ)ていう所さ」

「へぇ・・・。弥彦ねぇ。 どんな所なの?」

「弥彦山の麓に弥彦神社っていう大きな神社があってね。その麓から越後平野が広がっていくんだよ。温泉も出るし。とても良い所だよ」

「へぇ・・・・。なんでこんな所へ来ちゃったんだい」

「そんなことは、どうでもいいじゃないかい。ところで、今夜はチョイの間かい、それとも泊まりかい。泊まっていってくれると有り難いんだけどねぇ・・・・」

女は遠慮がちに言った。女はそう若くはなかった。30半ばくらいだろうか。あまりお客が付かないのだろう。

耕一は、そんな女ともう少し話をしてみたいと思った。まだ素人っぽさが抜けない、田舎の匂いのするそんな女の話を聞いてみたいと思った。

「泊まるよ」

タバコの火を消しながら、耕一はぽつりと言った。

 

 

女は嬉しそうに立ち上がり、カーテンを閉めようとして外を見た。

「あら、雪が降っているわ。・・・・・故郷(くに)はもう一杯雪が積もっている頃だわ」

窓を開けて、女はハラハラと舞い降りる雪を眺めていた。

 

 

続く・・・・・・・ 

 

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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お泊りですかぁ? (夏雪草)
2014-09-11 01:08:21
こんばんは。
ひと晩中、語り明かすようかしら。
そういうのも良いですよね。

え?
そんなわけにはいかないですって・・・?

まぁ。
返信する
どうしようかな・・・・ (里山のクロ)
2014-09-11 07:42:55
夏雪草さん

どうなるんでしょうかね・・・・。
夏雪草さんならどうしますか?
この状況で・・・・・。
雪の降る夜に、孤独な男と女が・・・・・。
返信する

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