たいせつなものが増えるということ

３月１１日の地震のさなか、ちょうど渋谷のお店の開店準備だった。
掃除機をかけている中に、異変を感じ地下から地上に階段を駆け上がった。

地面がものすごく揺れていて、周囲の飲食店の看板が揺れ、遠くに見えるビルがぐらぐら揺れている。

立っている自分が見ている光景が信じられない。
携帯で連絡しようとする指が震える。

長い、このままどうなっちゃうんだろう。
どうしよう！どうしよう！

揺れがおさまり、地下の店に戻る、思いのほか商品は散乱していなかった。
逃げ道確保のためドアが閉まらないように防犯装置機にドアを括り付ける。

社長へ電話をかけてみるがつながらない。
メールで無事であることを送信し、ネットで状況を確認していたら再びの揺れ。
地上に駆け上がり、また呆然とする。
まだ揺れる、いつまで揺れるのだろうか。


六本木店に電話をかけるとつながり、スタッフの安否確認が取れた。
社長からの連絡を待つように指示。


揺れがおさまり、だんな様にメール。とうぜん電話はつながらない。
メールだって届くのかどうかわからない。
実家に電話をかけてみるがつながらない。

twitterに上がる情報、ネットニュース。

地下にいると揺れがわかりやすい。
カタカタ棚が鳴るたびに地上に出る、地上を歩く人たちはその揺れに気付いていない。その光景がまた怖い。

店は開けているので、こんな時とはいえお客は来る。

やっと社長からの電話がつながり、指示をもらう。店は閉めていいが電車が動いていないので、家までは送るので、避難が必要であるなら避難してもし迎えに行ってシャッターが閉まっていたら帰ったと判断するし、また連絡するので、そちらからもつながらないないかもしれないが連絡を入れてください、と指示される。
主人が車なので連絡がつけば一緒に帰れることを社長に報告して電話を切る。

その後、実家の母に連絡がつき、ずいぶん時間遅れでそれでもメールが届き、だんな様と連絡が取れ、迎えに来てくれることになった。ただ渋滞でいつになるか予想がつかないとのこと。
その後社長とも連絡がつき、迎えが来る旨を伝え、閉店後店に待機させてもらう。

だんな様午後７くらいに連絡がついてから、閉店時間の１０時を過ぎる。
１１時手前、だんなさまから電話。２４６青山トンネルあたりと知る。路駐してもおけないし、それだけの渋滞ならわたしが歩いてそちらに向かうことに。連絡を付ける方法は携帯ゲームの伝言板にした。メールは無理なのに、これだとタイムラグなく通信できた。

２４６に向かう途中、渋谷駅前にバスに乗るのを待つ行列。デパートの入り口で避難しているひとたちは段ボールを敷き、新聞紙を体に巻いていた。建物側からの配慮だったのかな。

２４６に出ると多くの人が歩いていた。人の流れと逆に六本木方向にクルマを探す。
六本木通りと青山通りの合流地点を過ぎて少し、くらいのところでだんな様と会えた。

だいじな人がそばにいてくれるということがこんなにも安心できるものとは知らなかったかもしれない。
だいじなひととこれからの時間をもっと生きていたいと思った。
そしておなかにいる子の命をつながなくてはいけないと強く思った。

守る、守られていることをこんなに意識したのは初めてのことだ。
そして、この世に生まれたこと、親への感謝を痛感した。


まだ何が起きるかわからないけれど、長生きしたいって思ったよ。

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