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内村鑑三の「デンマーク国の話」

2024-03-04 09:52:00 | 日本の思想

【デンマーク】 

 内村鑑三は、明治、大正期に活躍したキリスト者として知られています。彼は、デンマークという小国を賛美しました。デンマークは、現在でも、貧困率が低く、国民幸福度が1位の国として知られています。その面積は、日本の九州大の大きさにすぎません。当時のデンマークの人口は、日本の20分の1でした。しかし、国民一人一人は、日本の10倍もの富を持っていたとされています。デンマークは、天然資源もなく、土地も豊穣ではありませんでした。その主要産業は、酪農と林業で、現在でも酪農大国として知られています。内村鑑三が賞賛したのは、そうした国家ではなく、デンマーク人の精神性でした。

 【敗戦国として】 

 デンマークは、ドイツ、オーストリアに戦争で負けた敗戦国です。その賠償金として、経済的に重要な地域を失いました。そんな時こそ、国民の真価が試される時です。戦勝国の運営は、誰にでも出来きます。しかし、敗戦国の立て直しほど難しいものはありません。どんな国にも暗黒の時代はありました。国が負けても、国民が不幸になるとは限りません。目標がある者には、敗戦など、よい刺激にすぎないからです。戦争に勝っても、内部分裂などによって、滅びた国はいくらでもあります。それは、歴史が証明してきました。 

 現在では、日本も敗戦国です。戦後の日本は、急速に経済復興しました。その要因は、朝鮮戦争と戦前からの産業体制だと言われています。当時の日本には、経済発展を可能にする外的要因と内的条件が揃っていました。そうしたものは、自分たちの力だけでなんとかなるものではありません。いろんな条件が重なり、結果的にそうなりました。ただし、日本人の精神性がなければ、経済復興は成し遂げられなかったとされています。

 【ダルガスの計画】 

 困窮したデンマークを導いた一人の人物がいました。工兵士官だったタルガスです。ダルカスは、敗戦が濃厚だった時から、国土回復の計画を練っていました。その計画とは、デンマークの荒涼とした大地を、肥沃な土地に変えるというものです。ダルカスは、もともとフランス系の人種で、ユグノー党に所属していました。ユグノー党とは、信仰の自由を求めて、外国に脱出したプロテスタントの一派です。プロテスタントには、地上に神の国を実現するという目標がありました。そのため、自分たちの労働は、神から与えられた使命だと考えています。それは、経済を発展させることと何ら矛盾していませんでした。ダルガスは、復讐戦など考えません。戦争は、ただ国を疲弊させるだけだからです。中国の孫子も、戦争は、極力避けるべきだと言っています。ダルガスは、戦争で失ったものを、自国の開発によって、取り返そうとしました。

 【国の改良】 

 ダルガスの武器は「水」と「木」でした。外国産の木を植林しても、その土地に合うかどうかは分かりません。ダルガスは、ノルウェーやアルプス産の樅を植林し、試行錯誤を繰り返しました。植林をすることは、建築用の木材を得ることだけが目的ではありません。樹木のない土地は、熱しやすく冷めやすいものです。樅の林を植林したことで、気候が安定し、穀物や野菜が成育できるような環境になりました。また木には、保水効果があります。それが低地国であったデンマークの洪水の害を防ぎました。確かに、敗戦国デンマークの領土は狭くなったかもしれません。しかし、開発によって新しい国を作りました。それは、戦勝国のように、他国の領土を奪ったものではありません。ただ自国を改造しただけです。ダルガスによって、デンマークには、鉄道や道路などの交通網が敷かれ、経済が発展しました。



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