我が王国を誰に残そうか
原作:Donald E. Wildmon
翻訳:polo181
昔、大きな国の国王がいて、もうかなり歳をとっていました。彼は四人の王子の中から次期国王を選ぶ時が来ていると考えました。そこで、誰を選ぶべきかを決めるために、一人ずつ呼び入れて論議をしました。
第一王子が王の部屋に呼び入れられて、席に着きました。王は彼に語りかけました。「息子よ、私はもう歳をとってしまった。もうそれほど長くは生きられないだろう。私はこの国を最もふさわしい王子に託したい。正直に答えてくれ。もし私がお前にこの国を託したならば、お前はこの国に何をしてくれるか」
さて、この息子は大変なお金持ちだったので、この質問にこう答えました。「私は多くの富を持っています。もし貴方が私にこの国をくださったなら、私は全ての富をこの国に捧げます。そうすれば、この国は世界で最も豊かな国になることでしょう」。国王は「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。
第二王子が呼び入れられて、同じ質問を受けた。この王子は最も出来がよくて広い知識と深い知恵があった。そこで彼はこう答えました。「私は膨大な知識を獲得しています。私はこの王国に持てる全ての知識を与えるでしょう。そうすれば、この国は世界で最も知的な国となることでしょう。」国王は、「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。
第三王子が呼び入れられて、同じ質問を受けました。この王子は武術に長けていて、四人の中では最も力強い人だった。そこで彼はこう答えました。「もしこの国を私に与えてくれたならば、私は全ての国民に武術を教えてやります。そうすれば、この国は世界で最も強い国になることでしょう。」 国王は、「よく分かった、有難う」と言って、彼との話を終えた。
第四王子が呼び入れられて、他の3人の王子と同じ質問を受けました。さて、この王子は、特に金持ちでもなく、利口でもなく、また強くもなかった。そこで、かれはこう答えました。「お父様、ご存じのように私の兄たちは、お金持ちで、利口で、力が強い。お兄さま達がそれらの特性を手に入れるべく努力をしている間、私は全ての時間をこの国の民のために使いました。病気や貧困で苦しむ民の悲しみを私は共有して参りました。その中で、私は民を愛することを学びました。私にはこの国に与えられる物は何一つありません。敢えていえば、それは愛です。それしかありません。ですから、今後もそれを続けるだけですから、私が選ばれなかったとしても、決して驚きはしません。」
国王が死去すると、人々はいったい誰が後継者となるのか気がかりで、遺書の発表を待ちました。そして、その発表が行われるやいなや、国中が喜びに沸き立ちました。第四王子が次期国王に選ばれたのでした。
伺ったら良いお話を読ませていただきました。
熊子さん・poloさんのコメント読んで
そのとおり、その通り、と相槌打っております。
さ~ サッカーが始りますね。
さ~~~頑張れ!日本!!
久々にショートショートを出しました。過去うん十年を振り返ってみて、本当の意味で国民の側にたって働いた政治家はいるのでしょうか。記憶を探っても一人も見あたりません。
待ってました!poloさん自身によるこの物語が大好きで、これまで長いこと待っておりました。
再び拝見できて感激です。何故ならpoloさんの人柄が如実に顕れて、敬意と親しみを覚えます。
どうぞ続けて下さい。
私もショートショートの大ファンですよ。お忘れなくなく。
今回もいいお話です。
今この国に一番必要なものを父王は選んだのですね。
豊かさでも強さでも知識でもない、愛であることを。
その愛は国への愛ではなく、国民への愛。
病気や貧困で苦しむ民の悲しみを共有してきたという王子。
そしてこれが国を司る者にとって一番大事なものであると。
強さこそ一番という某国の政治家にも読ませてあげたい。
一握りの知識人の富める人々を国民と呼んでいる政治家にも見せたい。
でもそれらの政治家たちは、例えこの物語を読んでも、意(こころ)を読まず、政治はこんなに甘いもんじゃないとせせら笑うだけかもしれない。
なぜなら、彼らからは民への愛が感じられないからです。
少し時間ができたのでpoloさんのショートショートを初めて1~11まで読ませていただきました。
う~ん、いいお話で考えさせられました。 そしてまた皆さんのコメントを読むのも勉強になりますね。 実は私、他のブログにある文を読むのがあまり好きでないほうですが(時間が無い事もあって)これからも時々、伺いますね。
返信が大変遅れました。今日は、映画の日でした。もう遅いので、それの感想は明日掲載します。