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西宮神社「十日えびす」 ~上方で商売繁盛を祈る特別な日

2018年01月04日 | 祭・行事・季節の花


一年の福を祈った後は、あま酒が温めてくれます

「えべっさん」とは、関西での「えびす」神の通称です。お正月直後に商売繁盛を祈る風物詩としてとても愛されています。全国のえびす神社の総本社として知られている西宮(にしのみや)神社でも、一年で最も華やかな時を迎えます。

早朝6時に参拝一番乗りを競う「福男(ふくおとこ)」レースは、今やすっかり全国のテレビで生中継される新春の恒例行事となりました。日経平均株価の上昇が注目される2018年、「えべっさん」はどのようにほほ笑むのでしょうか?

七福神の一つの「えびす」神の漢字表記は、関西の神社に多い「戎」、大阪の駅名の「恵比須」、東京の駅名の「恵美寿」、タレントとしてもよく知られる「蛭子」ととても多様ですが、地方や由緒ごとに諸説が多く、おそらくどれが正式かを決めることはできないでしょう。

「西宮」という地名の語源は、京都から西の方にある神社を指すという説が有力で、西宮市の山手にあって西宮神社の本社である「廣田神社」を指すと考えられています。

京都と大坂から山陽路に通ずる街道の合流点となった西宮は古くから交通の要所として栄え、江戸時代には酒造りで江戸をはじめ全国で著名になりました。20世紀以降は財界人が邸宅を構える関西で有数の高級住宅街として知られるようになり、甲子園球場も高級住宅街の一つ「甲子園」に造られたものです。


海岸沿いにあることがわかる境内の美しい松林

西宮神社の杜は、海岸沿い特有の勇壮な松林です。現在は埋め立てが進んで海岸線から遠く離れていますが、元は海岸が近かったことをしのばせます。えびす神は、福の神であるとともに漁業の神でもあります。魚を抱えている姿でもよく知られています。海の近くがやはり居心地がよいでしょう。

「えべっさん」は毎年、1月9日の「宵えびす」から3日間行われます。「宵(よい)」とはお祭りなど特定の日の前日を示す意味で、京都の祇園祭の山鉾巡行の前日が「宵山(よいやま)」と呼ばれることも著名です。3日間は最寄りの阪神電車・西宮駅からの参道が歩行者天国となって縁日屋台が立ち並び、初詣のような活気となります。

「十日えびす」と呼ばれるように、1月10日の早朝にメインの神事が行われます。神事の終了後、最も福があるとされる参拝一番乗りを氏子たちが競ったことをルーツとする「福男選び」が行われます。午前6時に開門と同時に、230m先の本殿を目指して「我こそは」と猛烈ダッシュが始まります。

【公式サイトの画像】 福男選びのスタートダッシュ

現在は例年5,000人以上が福男を目指して列をなします。そのため前日にスタート時の並び順を決める抽選が行われ、抽選で最も有利な最前列を引き当てることも「福」がある証になります。運と実力を兼ね備えた「福男」の栄誉を称え、神社の公式サイトに1921(大正10)年以降歴代の福男の名前が掲載されています。ここに名前を残した人は生涯、福の神として1月の飲み会の話題の中心になることは間違いないでしょう。

【公式サイト】 歴代の福男

本殿近くでは、福笹とそれにつける小判や鯛などの縁起物の子宝を買い求める人でごったがえします。帰り道では、ほとんどの人がこの福笹を持っています。名物の甘酒で体を温め、これから始まる一年に「やる気」を奮い立たせます。

商売繁盛を祈る催事としては、正月直後の「十日えびす」は東日本では一般的ではありません。11月の「酉(とり)の市」の方が著名です。福笹ではなく熊手に縁起物の子宝を付けることも異なっています。

日本は東西で習慣や文化が異なることがとてもたくさんあります。西の人は熊手、東の人は福笹を買い求めてみてください。きっと今までとは違った気分になれること間違いなしです。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。


西宮神社「十日えびす」
http://nishinomiya-ebisu.com/ebisu2018/
会期:毎年1月9日~1月11日



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