今年も「岸和田だんじり祭」の季節がやってきました。地車(だんじり)と呼ばれる山車(だし)を走りながら引っ張り、高速で90度方向転換する「やりまわし」の豪快さが何と言っても魅力です。岸和田市内各地で9月と10月の2回に渡って行われます。
- だんじり祭は関西一円で行われているが、岸和田は全国レベルで圧倒的に有名
- 9月に行われる「岸和田」「春木」地区の祭りは、曳行するだんじり数が多く人気が高い
- 岸和田は関西空港に近い、近年は外国人にも大人気
岸和田だんじり祭りは、昨年2018年に関西空港が沈没した台風と重なってしまったように、ここ3年ほどは天候に恵まれませんでした。令和初となるだけに、例年以上に”てるてる坊主”にお祈りしたいものです。
だんじり祭は関西一円の中でも大阪府南部が最も盛んです。岸和田の「やりまわし」のように、各地区で名物となるだんじり曳行パフォーマンスがあります。
【Wikipediaへのリンク】 地車(だんじり)
岸和田だんじり祭りは、江戸時代に起源があると考えられています。諸説あるようですが、岸和田市のだんじり祭り公式サイトでは、元禄時代に時の岸和田藩主が京都伏見稲荷を勧請し、五穀豊穣を祈った祭が起源だとしています。地元で祀る神社の神の降臨を敬う祭ではないため、神をのせる神輿(みこし)は登場しません。町衆によるだんじりの曳行そのものが神への奉納ととらえられています。
京都・祇園祭の山鉾巡行と同じく、各町内会がだんじりを曳行し華やかさを競います。町内対抗の祭となると、一番乗りを競うのが世の常です。祇園祭の山鉾巡行は古くから一方通行で巡行順もあらかじめ決められていましたが、岸和田のだんじり祭りの曳行は昭和の半ばまでメインストリートを単純に往復するだけでした。
メインストリートと言っても片側一車線程度の幅しかなく、すれ違いの際に道を譲る/譲らないの喧嘩が多発していたようです。昭和の半ばには現在のような一方通行の曳行となり、すれ違いトラブルは解消されましたが、各町会は新たな華やかさを競うようになります。それが高速で90度方向転換する「やりまわし」です。
装飾の華やかさを競う京都・祇園祭とは異なり、気の荒い岸和田の町衆は「やりまわし」という豪快なパフォーマンスに華やかさを求めました。多くの人々を魅了するだんじり祭りの魅力の原点は、町衆の個性そのものなのです。
現在のだんじりの曳行数は、最大の岸和田地区で22台にのぼります。祇園祭・前祭巡行の山鉾23基とほぼ同数です。祭の規模の大きさがわかります。岸和田だんじりは曳行時間、すなわち祭を楽しめる時間がほぼ一日中と長いことが特徴です。通常の山車の巡行は、京都・祇園祭のように、2-3時間程度です。
- 22台ものだんじりが交代で曳行するため、一日中どこかで曳行が行われている
- 京都・祇園祭とは異なり、町内に住人が多いため、曳行にバイトを雇うコストがかからない
- 夜間はさすがに”走る曳行”はできないが、提灯で着飾っただんじりの静かな曳行が幻想的
こうした背景が重なって、岸和田だんじりは一日中楽しめる全国的にも稀有な祭りになっています。、全国的に担い手不足で祭の継続が危ぶまれる傾向の中で、岸和田は活力を維持し続けています。
南海・岸和田駅
岸和田地区は曳行台数が多いだけあって、曳行エリアも広大です。だんじり曳行の見物は基本、曳行ルートの幅の狭い道路の脇での立見です。有料観覧席はありません。祭が行われる2日間で例年、岸和田/春木地区合計で60万人にのぼる観客があります。広大なルート設定があってこそ、観客を収容できます。。
広大なルートの中でも見せ場はいくつかあります。最大の人気は、通称:カンカン場と呼ばれる海沿いの幹線道路の交差点です。片側3車線ある広い道路を、曳行/見物に半分ずつ使っており、ゆとりのあるスペースになっています。
- 各町会は思い切って「やりまわし」のパフォーマンスを競える
- 見る側も混雑による見物の支障が少ない
南海・岸和田駅から海に向かってのびる商店街で、1日目土曜日の13時から行われる「パレード」も人気です。
- アーケードがあるため雨天でも曳行/見物ともに支障なし
- 広い道路幅でまっすぐ、邪魔な電柱や電線もない、屋根の上の大工方が最もパフォーマンスの腕を披露しやすい
人気スポットはまだあります。2日目日曜日の9時から行われる岸城神社への「宮入り」の直前、岸和田城に向かう上り坂「こなから坂」を駆け上るシーンです。
- 曳行ルートで唯一の上り坂で力が入るルート、ここにしかない緊張感を味わえる
曳行ルートは、日本のどこにでもある町と同じく、電柱・電線に頭上を囲まれています。電柱・電線を避けながら、事故もなくよくやっているなと感心します。岸和田こそ、「無電柱化」の先進地域として声を上げてもらうにはぴったりだと思います。
「地上にある電柱の方が復旧しやすい」と大半の人が思い込んでいますが、全く逆です。電線は地下にある方が電柱倒壊や火災損傷を避けられるため、そもそも断線しにくいのです。電気・通信の復旧が遅れるのは、膨大な電柱・電線を人力で確認しなければならないためです。電柱倒壊で道路を通行できないとなると、さらに時間がかかります。
岸和田と言えば”この人”
電柱・電線がスムーズな祭りの催行を妨げているのは京都・祇園祭も同じです。空間が電柱・電線に占拠された日常の風景は、長い目で見て、世界の常識として、決して美しくありません。
岸和田だんじり祭りは、日本屈指の素晴らしい「伝統芸能」でもあります。末永く持続できるよう、あらゆる面から環境づくりを祈りたいものです。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
関西空港のお膝元をディープに訪ねる
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<大阪府岸和田市>
令和元(2019)年 岸和田だんじり祭り
【岸和田市公式サイト】 岸和田だんじり祭り
主催:各町会
会期:9月祭礼は2019年9月14日(土)6:00-22:00、15日(日)9:00-22:00
10月祭礼は2019年10月13日(土)6:00-22:00、14日(日)7:00-22:00
会場:9月祭礼は岸和田/春木地区
10月祭礼は東岸和田/南掃守/八木/山直/山直南/山滝地区
※だんじりが曳航される道路上で自由に見物できます
※危険回避のため現場係員や警察官の指示に従ってください
※脚立・踏み台・傘・ドローンは使用禁止です
※会場周辺は全面禁煙です
※荒天中止の場合があります。
【岸和田市だんじり祭り公式サイト】 9月祭礼 岸和田地区マップ.pdf
【岸和田市だんじり祭り公式サイト】 9月祭礼 春木地区マップ.pdf
◆おすすめ交通機関◆
9月祭礼はそれぞれ駅前一帯が会場です。
岸和田地区:南海本線「岸和田」駅下車、岸和田駅混雑時は隣駅「和泉大宮」「蛸地蔵」で下車
春木地区:南海本線「春木」駅下車
JR大阪駅から一般的なルートを利用した「岸和田」駅までの平常時の所要時間の目安:50分
大阪駅(梅田駅)→大阪メトロ御堂筋線→なんば駅→南海本線→春木駅/岸和田駅
※会場一帯は広域に交通規制されます。クルマでの来場は非現実的です。
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