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一般質問を終えて②

2011-12-25 | 活発!な活動報告
 先日の一般質問の録画中継は既に県議会のHPにアップされてますが、議事録そのものは来年の2月議会の直前にならないと掲載されません。そこでお時間がある方にはぜひとも当日の私の最初の質問の原稿を読んで頂きたく、当日の写真と共に掲載します。




 民主党・ふじのくに県議団の鈴木智です。私は3つの重要課題につきまして質問致します。

 最初に、東海地震の地震予知体制の強化について、3点伺います。
 
 まず1点目は、「現在の東海地震の予知観測体制の総検証について」です。

 「読者諸氏は、日本では当然のことながら地震予知のための研究が行なわれている、と思っておられるであろう。しかし、実はそうではないのである。地震予知が重要課題であることは多言を要しまい。ひとたび大地震に見舞われれば、多大の損害が生じ多くの人命が失われる。構造物やインフラの耐震強化と地震予知は、地震災害軽減の二本柱だ」

 これは今年の中央公論4月号に掲載された上田誠也(うえだせいや)東京大学名誉教授の論文「どうする!日本の地震予知」の冒頭部分です。上田氏の主張は、地震予知の研究は、実は殆ど行われておらず、「唯一予知が可能」とされる東海地震についても、その観測網は基本的に地震発生後の現象を測定するのに適したものであり、本来行うべき「短期予知」には不向きであるというものです。この4月号が発売されたのは3月10日、つまり、大変皮肉にも東日本大震災の前日のことでした。

 10月、静岡市で日本地震学会の秋季大会が開かれました。大会では、今回の東日本大震災のようなマグニチュード9クラスの地震が東北沖で起きることを予見できなかったことは地震学の敗北であり、これまでの研究や予知のあり方について抜本的な見直しが必要であるという認識が専門家の間で共有されたと理解しますが、今回取り上げたいのは、東大のロバート・ゲラー教授の主張です。ゲラー氏は、M9クラスの地震はプレート沈み込み帯であればどこでも起こりうるものであり、東海地震説のような周期説は仮説の域を出ない、根拠に乏しい理論である、東日本大震災を予知できなかったように有効な事前予知はできないのだから、地震予知の予算は他の対策にまわすべきだと問題提起をされました。私は今こそ、このゲラー氏や上田氏の指摘について検証すべきと考えます。上田氏はしかるべき予知研究や観測を行なえば短期予知は十分可能であるというのに対し、ゲラー氏は「地震予知は人類にとって不可能な夢」という正反対の主張をしていますが、「現在の観測体制には問題あり」という点では一致しています。川勝知事は浜岡原発に関連して「県も中部電力の政策をチェックする能力を持つべき」と発言されていますが、津波対策や被害想定の見直しと同様に、東海地震の当事者として、そうした現在の予知体制への批判についても、県は、国に任せ切りにせず、早急に検証しながら予知体制を総点検すべきと考えますが、見解を伺います。

 2点目は、「地震予知のために地殻のひずみ以外の前兆現象の研究と観測を進めることの必要性について」です。

 東日本大震災でも明らかなように、M9の地震のエネルギーは莫大です。そのエネルギー量は、10万人以上の命を奪った広島型原爆の3万発分よりも更に大きいものです。私は専門家ではもちろんありませんが、地殻はガラスのように均一ではありませんから、莫大なエネルギーが地殻に蓄積され、臨界点に達し、そして放出されるまでには、様々な形で前兆現象が現れると考えるのが合理的だと素人ながら思います。ですから、私は、上田氏らが提唱する予知研究や観測を、県も総力を挙げて進めるべきと考えます。

 唯一予知が可能とされる東海地震ですら、必ず予知ができるわけではなく、また予知できる可能性についても「わからない」というのが気象庁の見解です。これまで、地殻のひずみを検知して予知したことも、ひずみを検知したが予知ははずれたことも、全くありません。そもそも、地殻のひずみが前兆現象として必ず現れるとは限らないのですから、「予知できるかどうかわからない」というのは全くその通りだと思います。加えて、地殻ひずみを捉えて予知する、つまり東海地震が近日中に発生すると判断し、内閣総理大臣が警戒宣言を出すというのは極めて難しい行為だと考えます。何故なら、予知が「外れた」際の経済的・政治的リスクは決して小さくないからです。県の第三次地震被害想定によれば、警戒宣言に伴う静岡県での生産減額は1日当たり約9百億円とされています。しかしこれは10年前の想定であり、しかも県内の生産減額に限っての数字です。警戒宣言が出れば、株価や為替相場等でもマイナスの影響が出ることは容易に想像できます。ましてや、東日本大震災の惨状を我々は見ているのですから、警戒宣言発令後に果たしてどこまで冷静に行動できるのでしょうか。そして「幸いに」外れたとしても、「外れて良かった」と冷静に受け止めることが可能でしょうか。更には、一度外れた後に再び警戒宣言が発令された場合、どれだけの方が真剣に避難をするのでしょうか。

 様々な意味で地震予知は難しいのですから、私は地殻ひずみ以外の様々な前兆現象についても研究や観測を進め、前兆ひずみが発生しなかった場合、あるいは発生していたが捉えられなかった場合でも他の現象の観測により予知できるようにすべきと考えます。具体的には、上田氏は、かつて科学技術庁が阪神淡路大震災後に立ち上げた5カ年の『地震総合フロンティア計画』に基づいて、現在、県の防災・原子力学術会議顧問を務める有馬朗人(ありまあきと)東大名誉教授が理化学研究所理事長当時に推進された地電流・地磁気等の観測を中心とした予知研究を改めて進めれば、短期予知の精度を上げることが可能だとしています。東海大学海洋学部地震予知研究センターの長尾年恭(ながおとしやす)教授によれば、既に収集されているがリアルタイムでは監視されていないデータを24時間体制で継続して監視・分析するだけでも予知精度を上げることが期待でき、それは年間5千万円程度の予算でも十分可能であるとのことです。国が取り組むべき課題と言うばかりでなく、こうした前兆現象の研究観測の推進や支援を、静岡県としても総力を挙げて行うべきと考えますが、県の見解を伺います。

 3点目は、「国内外の英知を結集しての地震予知研究と観測のメッカづくり」についてです。

 政府は、平成24年度の地震調査研究関連予算を本年度の132億円から3倍以上の464億円にまで増額する方針です。しかし、これまでの短期予知研究予算は、例えば、平成22年度ではわずか1700万円程度であり、来年度についても大幅な増額は期待できそうにないようです。

 M8、9クラスの地震予知は、日本どころか世界でも成功したことはありません。つまり、東海地震の予知に成功できれば、それは、多くの人命を救うだけでなく、人類史上、大変画期的な成果となります。それだけ重大な課題なのですから、国が消極的ならば、東海地震対策の最前線である静岡県が中心となって、産官学そして他の自治体との連携はもちろんのこと、世界中の英知を結集して予知に当たるべきだと提案致します。

 実は、関西では既にこうした取り組みが行われています。関西経済同友会等の経済4団体が産官学連携体として設立している関西サイエンスフォーラムは、阪神淡路大震災での経験をきっかけに、地震の前兆現象を研究する専門部会を設置し活動してきました。そして今年の9月から前兆現象情報を専門家や市民から収集して分析するためのサーバーシステムの運用を始めました。関西電力、NTT西日本、JR西日本等の大企業にも情報提供の協力を依頼しているとのことです。

 本来、こうした取り組みは、これから東海地震が発生するとされる静岡県でこそ、行われるべきではないでしょうか。かつては、県の地震防災センター内に置かれていた静岡県防災情報研究所が「東海地震でも宏観異常現象が出現する可能性が否定できない」として情報収集を行なっていました。現在、「しずおか防災コンソーシアム」がありますが、現時点では情報交換の場に留まっています。この防災コンソーシアムを発展させ、民間企業や県内外の自治体にも参加してもらうことで、関西サイエンスフォーラムと同様の、あるいはそれを越えるような取り組みを早急に推進すべきではないでしょうか。

 更には、予知の可能性を一層高めるためにも、国内だけでなく世界中の研究者に最前線である静岡県で研究や観測をしてもらうべきではないでしょうか。例えば、東海大学地震予知研究センターでは、JICA(国際協力機構)とJST(科学技術振興機構)が共同実施している「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム」を活用してフィリピンの専門家が研究に当たっています。県はJICAグローバル大学院の誘致を目指していますが、こうした海外の研究者を招聘する取り組みを県も全面的に支援すると共に、研究成果を各国で役立ててもらえば、正に地震対策先進県らしい国際貢献も同時にできると考えます。このような、国内外の英知を結集しての地震予知研究や観測のメッカづくりの必要性について、県の見解を伺います。



 次に、ニホンジカ等による被害対策としてのオオカミ再導入について伺います。

 ニホンジカ等による被害は今や全国的な問題ですが、管理に成功している例はありません。現在、国や自治体が講じている対策は基本的に対処療法に過ぎず、特に、世界文化遺産登録を目指す富士山周辺や3000メートル級の南アルプスのような地域では、自ずと無理や限界があります。やはり、ニホンジカ等が激増している根本的な要因、捕食動物つまりオオカミが日本では絶滅していることを解消しない限り、ニホンジカ等を適正な個体数にまで減らすことはもはや不可能に近いと考えます。

 そこで3点伺います。1点目は、「ニホンジカ等による被害が及ぼす影響について」です。

 このままでは、シカ被害が益々深刻化し、南アルプスのような地域では、貴重な高山植物だけでなく、高山植物を主食とするライチョウやその他の希少動物、昆虫等が絶滅し生物多様性が破壊される恐れがあると考えますが、県はどのように認識しているのか、根拠と共に具体的な見解を伺います。また、富士山周辺でシカ被害が更に拡大しても富士山の世界文化遺産登録の支障になる恐れは全くないのか、逆に言えば、これから作られる特定鳥獣保護管理計画には、被害が世界文化遺産登録の支障にならないようにすることも主要目標として具体的に設定されるのかどうか、併せて見解を伺います。

 2点目は、「ニホンジカの頭数適正化」についてです。

 本来あるべき生物多様性の維持に適正なニホンジカの個体数は1平方キロメートル当たり3頭程度と言われています。つまり、その数にまで減らさない限り、貴重な自然は失われ続け、その適正数になって漸く、失われた自然が本格的に回復し始めるということです。静岡県においては、いつまでに、そしてどのようにして適正数以下に減らすことを目指しているのか具体的に伺います。

 3点目は、「ニホンジカ等による被害対策としてのオオカミ再導入に関する調査研究について」です。

 以前、くらし・環境委員会で、わが会派の小長井由雄議員がオオカミ再導入について2回質問しています。現在の対策が十分な効果を上げていない以上、罠等の捕獲技術の研究と同様に、シカ被害対策の一つとして、日本オオカミ協会が提唱するオオカミ再導入の可能性について調査研究を行うべきであると提案致します。

 既に国会議員の間でも、オオカミがいるフィンランド出身のツルネンマルテイ参議院議員や元環境大臣の川口順子参議院議員らによる超党派の勉強会ができており、私が以前仕えていた津川祥吾衆議院議員も参加しています。また、大分県豊後大野市等の自治体や長野県議会等の地方議会でもオオカミ再導入が議論されています。この12月3日に、静岡市や川根本町も参加する南アルプス世界自然遺産登録推進協議会が開催したフォーラムでは、参加者だけでなくパネリストからもオオカミ再導入への言及がありました。加えて、日本高山植物保護協会の会長であり山岳写真家の白籏史朗(しらはたしろう)氏、あるいはモンゴル出身の横綱白鵬関のような著名人の中にも賛同する方が出てきています。ちなみに、モンゴルの代表的な歴史書『元朝秘史』の冒頭に「チンギス=ハンの根源(おおもと)は、上(かみ)なる天神よりの命運(さだめ)を以って生まれた蒼い狼であった」とありますように、モンゴルは、オオカミを、幸運をもたらす聖なる動物として敬っている国です。ですから、オオカミ再導入の研究は、副次効果として、モンゴル文化の理解そしてモンゴルとの関係促進にもつながると考えます。

 環境省はオオカミ再導入について否定的のようですが、今の細野豪志・環境大臣は、シカ被害に苦しむ伊豆地域をかつては選挙区としていました。ですから、県が本気になれば、国を動かすことも十分可能だと考えます。地方主権時代の今、国の対応を待つのではなく、手遅れになる前に、近隣の自治体と連携して、先ずは地方独自にでもオオカミ再導入に関する調査研究を行うべきと考えますが、県の見解を伺います。



 最後に、富士山静岡空港の国際便増加に向けた取組とシンガポールとの関係促進について伺います。

 大都市圏である東京・名古屋・大阪まで新幹線や高速道路利用で十分に早く行ける位置に静岡県がある以上、静岡空港における国内便の増加はほとんど期待できず、生き残りのためには国際便の増加に賭けるしかありません。しかし、その国際便においても、羽田空港が国際化し、また成田空港や関西空港等でも格安航空会社の国際便を導入するなど空港間競争が激化しており、静岡空港に残された時間はあまりないと考えます。

 そこで、2点について伺います。1点目は、「格安航空会社(LCC)の誘致について」です。

 ドル箱路線といわれる国際便は主要空港から既に多数飛んでいる以上、LCCによる国際便就航を目指すのが静岡空港にとっては現実的であると考えます。県はこれまでに本会議等でLCCについて研究中と答えていますが、静岡空港に時間はあまり残されていない以上、早急に結論と結果を出すことが不可欠です。そこで、現在、どのような、あるいはどのLCCについて研究調査を行い、いつまでに結論や結果を出すべきと考えているのか具体的に伺います。

 2点目は、「シンガポールとの関係促進と定期便の就航の重要性について」です。

 現在、県は台湾や釜山との定期便の就航を目指していると理解しますが、既に就航している韓国、中国との便を含めても英語圏との定期便がないことになります。そこで、シンガポール便の就航を目指すべきであると提案致します。

 英語圏であるシンガポールは、中国系、マレーシア系、インド系等の多民族が住み、太平洋戦争時には日本の占領下に置かれたにもかかわらず大変な親日国です。また、現在、議論されているTPPに最初から参加する4カ国の一つであると同時に、TPPに対抗する動きが出てきているASEANの中心国でもあります。加えて、国籍や永住権を持つ人口が約380万人と、静岡県とほぼ同数の小国ながら、年間に訪れる外国人の数が1千万人以上というように、人の行き来が極めて激しく、故にシンガポールのチャンギ空港は、世界有数の国際ハブ空港となっており、LCC専用のターミナルビルもあります。そのシンガポールとの間に国際便を飛ばすことは、シンガポールや周辺国からのインバウンドの外国人観光客の獲得だけでなく(ちなみに本日は6名のシンガポール人観光客が傍聴に来ておりますが)、TPP等に関する独自の情報網の確保等、様々な意味で静岡県に大きな利益をもたらすと考えます。ましてや、県の東南アジア事務所はシンガポールにあるのですから、1名の職員しかいない東南アジア事務所の体制を強化して、シンガポールとの関係促進と国際便の就航を目指すべきと考えますが、県の見解を伺います。

 以上で最初の質問を終わります。具体的なご答弁をお願い致します。



 これで約6500文字です。持ち時間の25分中、約19分を費やしました。敢えて時間を残したのは、本会議での質疑を「面白く」するには、それなりに再質問、再々質問にも時間を使うことが必要だと考えたからです。この質問原稿と殆ど中身が変わらないものは事前に当局側に渡してありますので、1回の質問だけでは、なかなか良い答弁は引き出せないと思います。実際には約6分の時間でも短かったのですが、再々質問まで行なったおかげで、前向きの答弁を引き出すことが出来たと考えています。

 質問に対するそれぞれの答弁の検証については次回行ないたいと思います。

 お読み下さり、ありがとうございます。


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