テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ミュンヘン

2022-09-09 | サスペンス・ミステリー
(2005/スティーヴン・スピルバーグ監督/エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ハンス・ジシュラー、ジェフリー・ラッシュ、アイェレット・ゾラー、ギラ・アルマゴール、ミシェル・ロンズデール/164分)


 1972年、今から50年前に西ドイツで開催されたミュンヘン・オリンピック。あまりに昔の事なので覚えているのは日本男子バレーボールが逆転で金メダルを獲った事とパレスチナ・ゲリラによるテロ事件が起きた事くらいかな。
 映画「ミュンヘン」は、そのテロ事件を扱ったものだけど、事件そのものはプロローグ的な扱いで、本筋は事件後のイスラエルによる報復事件を追っている。オリンピックで犠牲になったイスラエル選手団員は11人。報復対象は事件に直接関わった者だけじゃなく、指示をしたと思われる者を含めて11人となった。
 主人公はイスラエルのスパイ組織モサドの若者アヴナー。父親もモサドの英雄と云われる人物だけど、家庭を顧みなかった為か奥さんは育児放棄してしまい、アヴナーは養護施設で育った。いわば国に育てられたようなものなのだ。
 事件後にイスラエル側では首相を交えた首脳会議で報復作戦が発案され、アヴナーにチームリーダーとして白羽の矢が刺さった。
 国に育てられたアヴナーには断る理由が思いつかなかった。
 仲間には4種類のスペシャリストが揃えられた。爆弾の製造と処理、車の運転、文書偽造、そして証拠を残さない為の事件の後始末の各専門家だ。

 「ミッション・インポッシブル」みたいにアヴナーに指示をする男も出てくるが、基本的にアヴナーたちはイスラエルとは無関係な人間として活動するので連絡はほぼ取り合わない。唯一といっていい連絡方法はスイスの貸金庫。最初に与えられた情報も殺害対象のパレスチナ人の名前と写真だけだった。居場所などはアヴナー達が調べる事になる。
 この時に出てくるのがフランス人の情報屋だ。
 この情報屋もうさん臭くてねぇ。対象人物の居場所だけでなく、アヴナー達のホテルをとってくれたり爆弾を調達してくれたりもするんだけど、映画の中盤にはアヴナー達とあるアラブ人組織が一つの部屋を共用せざるをえなかったりする。アヴナー達が上手くごまかして事なきを得るが、一発即発のシーンもありハラハラした。

 全体的にスピルバーグらしいハラハラドキドキシーン満載で、心臓の音を思わせるようなBGMも効果的だし、殺害対象の男を爆死させようとして間違ってその男の娘を殺しそうになるシーンではカットバックがバッチリの出来だった。
 題材からドキュメンタリータッチかと予想していたが、しっかりとスピルバーグタッチだったな。

 暗殺対象者を追ってアラブ諸国に入るのは危険なので、あくまでもヨーロッパに滞在する人間を殺す。爆弾によるものがメインだが、最初のはピストルによるものだった。
 民間人の巻き添えなどは出さないのがルールだが、ホテルのマットレスに仕掛けた爆弾は強力過ぎて隣の新婚さんにも大怪我をさせてしまう事もあった。

 やがてパレスチナ側にもアヴナ―達の動きが察知され、一人二人と仲間の命も狙われるようになり、中には神経的に参ってしまう人間も出てきたりする。

 アルジェリア独立紛争を元にした「アルジェの戦い (1965)」ではテロ組織側の視点で描かれていたが、「ミュンヘン」ではイスラエル側が主人公ながらパレスチナ側の考え方も表現されていて観る価値は一枚うわてだと思う。





・お薦め度【★★★★=サスペンスファンの、友達にも薦めて】 

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2 コメント

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16年前・・・ (vivajiji)
2022-09-13 10:32:20
十瑠さんはお薦め・・・なのね。
私はイマイチでございました。(^^);
力作は力作ですけど。
拙記事URLに入れました。

♪ボクサーは大好きな曲。
ただ〜
ライララ〜イ・・が長すぎて
歌ってると飽きてくる〜
返信する
★三つ半 (十瑠)
2022-09-13 12:34:30
くらいの気分ですが、「一見の価値あり」とするには勿体ないので「サスペンスファン」という縛りをかけて★四つにしました。

>♪ボクサーは大好きな曲。

ギターで良く練習してましたねぇ。
LP「明日に架ける橋」も擦り切れない程度によく聴いてました。好きな曲だらけ
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