(1940/エルンスト・ルビッチ製作・監督/ジェームズ・スチュワート、マーガレット・サラヴァン、フランク・モーガン、ジョセフ・シルドクラウト、フェリックス・ブレサート、ウィリアム・トレイシー/97分)
たとえ作品は観てなくとも古い欧米の映画監督の名前は大概知っているはずだったのに、何故かこの人の名前は記憶にありませんでした。ブログを始めた後、他の方を訪ねた折りに知り、しかもワイルダーのお師匠さんとの事で、あわてて双葉先生の本を読み返しましたら確かに何作か名作として挙げてありました。忘れたのか見落としていたのか、今もって謎です。
さて、1998年にトム・ハンクス、メグ・ライアンでリメイクされた「ユー・ガット・メール」の元ネタであります。
原題は【The Shop around the corner】。購入した500円DVDのタイトルは「街角/桃色の店」となっておりました。何故、“ピンク”の店なのか・・・分かりません。
舞台はハンガリーの首都ブタペスト。チェコの作家ニコラウス・ラズロという人の戯曲が原作とのことで、倣ったのでしょうが、セリフは全て英語だしジミーの主演だし、ハンガリー色は殆どありません。アメリカの話と言っても分からないでしょう。唯一、通貨の単位にはペンゴというのを使ってましたがね。
街角に立つこ洒落た雑貨店の話。世は不況だが、個人経営のこの店にはクラリク(スチュワート)をはじめ5、6人の店員が勤めている。冒頭、朝の店頭で店主の到着を待っている彼らの会話で、店主マトチェック(モーガン)が専制的な人間であることが分かる。
見習いから店員になり、今はマトチェックの片腕的な立場にもなっているクラリクは、そろそろ結婚を考えてイイ年頃。実は彼には文通を交わしている女性がおり、どうやら未だ見ぬ彼女に恋をしているらしい。
と、この店に職を求めてクララ(サラヴァン)という女性がやって来る。マトチェックの性格を熟知しているクラリクは諦めるように言うが、クララは半ば強引にマトチェックに雇ってもらうのに成功。しかしながら、クラリクとは馬が合わずその後は何かとケンカが続いてしまう。
クララにも文通相手がおり、ある日お相手の彼とレストランで会うことになる。勿論お相手は(観客の予想通り)クラリク。ところが、直前にクラリクはマトチェックと待遇の話で揉めてしまい職を失ってしまう。無職のまま逢うことは出来ないと、そっと待ち合わせ場所のレストランの外から覗いたクラリクは、初めて恋する相手が日頃ケンカばかりしているクララだと知る事になるのだが・・・。
人間の善意を基調にしているロマンチック・コメディで、主演はジミーだし、キャプラみたいだなあと思って観てました。好きですね、こういう映画。
舞台劇らしく会話が多く、冒頭の店頭のシーンは屋外にもかかわらずバストショットの連続で一体どうなることかと心配してしまいましたが、その後は店内のシーンとなり、段々とルビッチさんのユーモアを交えた語り口に乗せられてしまいました。
ベテランだが押しの弱いクラリクの同僚の年輩店員が店主から意見を求められそうになると姿を隠そうとしたり、使いっ走りだったぺぺという若者が正規の店員に格上げになった途端にスーツを仕立てて出社するなど、脇の登場人物の描き方も個性的でユーモアに溢れています。
イイ映画というのは、ストーリーを追わずに人物を追っているから面白いんですな。
▼(ネタバレ注意)
クラリクとマトチェックの揉め事の原因は、マトチェックの奥方の浮気。
急に金遣いが荒くなった奥方がクラリクとただならぬ関係にあるのではないかとマトチェックが邪推したのが始まりだが、映画は品よく控えめに描き、観客の興味をそれとなく惹いているのがイイ。
マトチェックは探偵まで雇って調査をし、相手はクラリクではなかったが、妻の不倫の事実にショックを受け自殺騒ぎを起こしてしまう。入院したマトチェックに呼ばれたクラリクは誤解も解け、マネージャーとして復職することになる。
終盤はクリスマス・イブの夜。大盛況で終わった店内では、一時的に退院したマトチェックが皆に礼を言い、ボーナスを渡す。一人帰り、二人帰り、見送るだけのマトチェック。一人の寂しいクリスマスだったはずが、新人の少年に解消されるシーンが嬉しかったですな。
他の人々が帰った後のクラリクとクララの店内でのやりとりが圧巻。真実を知っているのはクラリクだけなんだが、それをいつ告白するのか。どう話すのか。
クララはクラリクに恋人がいることを知り、『実は、貴男に恋していたのよ』と告白。それを聞いたクラリクは、クララの文通相手=私書箱237号の彼への想いを壊そうとするが、ついに・・・。
クリスマスに観たい映画の一つになりました。
▲(解除)
さてさて、「ユー・ガット・メール」は文通をEメールに置き換えたリメイクでしたが、もう一度リメイクするなら、ブログでやりとりしていた男女が実はオフラインの知り合いだったなんてのは如何ですかな?えっ、それくらい誰でも考える?あぁ、そうですよね。
女性(クララ)の帽子が頭の割には小さ過ぎるのと、男性(クラリク)がふくらはぎの上にガーターをしていたのがトリビア的発見でした。
主演のサラヴァンはウィリアム・ワイラー監督の奥さんだった人だそうです。初めて見ました。ビックリするような美人じゃないし、終盤近くまでのクララが(想像の彼への入れ込み方が)韓流スターに熱を上げるお姉ちゃんみたいで親近感が湧かなかったんですが、ラストで一気に逆転させられました。この辺のロマンチックに描きおおせるところは昔の映画の良いところですなあ。
[2009.03.17 追記]
トレーラーを見つけたのでアップします。
たとえ作品は観てなくとも古い欧米の映画監督の名前は大概知っているはずだったのに、何故かこの人の名前は記憶にありませんでした。ブログを始めた後、他の方を訪ねた折りに知り、しかもワイルダーのお師匠さんとの事で、あわてて双葉先生の本を読み返しましたら確かに何作か名作として挙げてありました。忘れたのか見落としていたのか、今もって謎です。
さて、1998年にトム・ハンクス、メグ・ライアンでリメイクされた「ユー・ガット・メール」の元ネタであります。
原題は【The Shop around the corner】。購入した500円DVDのタイトルは「街角/桃色の店」となっておりました。何故、“ピンク”の店なのか・・・分かりません。
舞台はハンガリーの首都ブタペスト。チェコの作家ニコラウス・ラズロという人の戯曲が原作とのことで、倣ったのでしょうが、セリフは全て英語だしジミーの主演だし、ハンガリー色は殆どありません。アメリカの話と言っても分からないでしょう。唯一、通貨の単位にはペンゴというのを使ってましたがね。
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街角に立つこ洒落た雑貨店の話。世は不況だが、個人経営のこの店にはクラリク(スチュワート)をはじめ5、6人の店員が勤めている。冒頭、朝の店頭で店主の到着を待っている彼らの会話で、店主マトチェック(モーガン)が専制的な人間であることが分かる。
見習いから店員になり、今はマトチェックの片腕的な立場にもなっているクラリクは、そろそろ結婚を考えてイイ年頃。実は彼には文通を交わしている女性がおり、どうやら未だ見ぬ彼女に恋をしているらしい。
と、この店に職を求めてクララ(サラヴァン)という女性がやって来る。マトチェックの性格を熟知しているクラリクは諦めるように言うが、クララは半ば強引にマトチェックに雇ってもらうのに成功。しかしながら、クラリクとは馬が合わずその後は何かとケンカが続いてしまう。
クララにも文通相手がおり、ある日お相手の彼とレストランで会うことになる。勿論お相手は(観客の予想通り)クラリク。ところが、直前にクラリクはマトチェックと待遇の話で揉めてしまい職を失ってしまう。無職のまま逢うことは出来ないと、そっと待ち合わせ場所のレストランの外から覗いたクラリクは、初めて恋する相手が日頃ケンカばかりしているクララだと知る事になるのだが・・・。
人間の善意を基調にしているロマンチック・コメディで、主演はジミーだし、キャプラみたいだなあと思って観てました。好きですね、こういう映画。
舞台劇らしく会話が多く、冒頭の店頭のシーンは屋外にもかかわらずバストショットの連続で一体どうなることかと心配してしまいましたが、その後は店内のシーンとなり、段々とルビッチさんのユーモアを交えた語り口に乗せられてしまいました。
ベテランだが押しの弱いクラリクの同僚の年輩店員が店主から意見を求められそうになると姿を隠そうとしたり、使いっ走りだったぺぺという若者が正規の店員に格上げになった途端にスーツを仕立てて出社するなど、脇の登場人物の描き方も個性的でユーモアに溢れています。
イイ映画というのは、ストーリーを追わずに人物を追っているから面白いんですな。
▼(ネタバレ注意)
クラリクとマトチェックの揉め事の原因は、マトチェックの奥方の浮気。
急に金遣いが荒くなった奥方がクラリクとただならぬ関係にあるのではないかとマトチェックが邪推したのが始まりだが、映画は品よく控えめに描き、観客の興味をそれとなく惹いているのがイイ。
マトチェックは探偵まで雇って調査をし、相手はクラリクではなかったが、妻の不倫の事実にショックを受け自殺騒ぎを起こしてしまう。入院したマトチェックに呼ばれたクラリクは誤解も解け、マネージャーとして復職することになる。
終盤はクリスマス・イブの夜。大盛況で終わった店内では、一時的に退院したマトチェックが皆に礼を言い、ボーナスを渡す。一人帰り、二人帰り、見送るだけのマトチェック。一人の寂しいクリスマスだったはずが、新人の少年に解消されるシーンが嬉しかったですな。
他の人々が帰った後のクラリクとクララの店内でのやりとりが圧巻。真実を知っているのはクラリクだけなんだが、それをいつ告白するのか。どう話すのか。
クララはクラリクに恋人がいることを知り、『実は、貴男に恋していたのよ』と告白。それを聞いたクラリクは、クララの文通相手=私書箱237号の彼への想いを壊そうとするが、ついに・・・。
クリスマスに観たい映画の一つになりました。
▲(解除)
*
さてさて、「ユー・ガット・メール」は文通をEメールに置き換えたリメイクでしたが、もう一度リメイクするなら、ブログでやりとりしていた男女が実はオフラインの知り合いだったなんてのは如何ですかな?えっ、それくらい誰でも考える?あぁ、そうですよね。
女性(クララ)の帽子が頭の割には小さ過ぎるのと、男性(クラリク)がふくらはぎの上にガーターをしていたのがトリビア的発見でした。
主演のサラヴァンはウィリアム・ワイラー監督の奥さんだった人だそうです。初めて見ました。ビックリするような美人じゃないし、終盤近くまでのクララが(想像の彼への入れ込み方が)韓流スターに熱を上げるお姉ちゃんみたいで親近感が湧かなかったんですが、ラストで一気に逆転させられました。この辺のロマンチックに描きおおせるところは昔の映画の良いところですなあ。
[2009.03.17 追記]
トレーラーを見つけたのでアップします。
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
この作品は、一番最初に観たルビッチ作品なので強く印象に残っています。
マトチェックとルディとのやりとりはほんとにお気に入りです。
記事中にありました、「人間の善意を基調にしている」、そこがキャプラとの共通点でしょうね。
あと、「ニノチカ」も買いましたので、その時は又お邪魔します。
キャプラ映画もまだまだ観たいもの、観直したいものもあります。ハッピー・エンドがいいですねぇ♪
十瑠さん、私の鑑賞予定メモ、もしかして「透視」してない?
十瑠さんて、「超能力者」?(笑)
いいのよね~、こういう雰囲気の映画って。
安心して流れについていける。
この女優さん、ワイラーの奥さんだったの~!
知らなかったわ~。
そうなの、私の持ってるビデオも「街角/桃色の店」よ~。
ピンクとつければホレ、ヘンな輩でも手に取ると思って、ほんと考えることがローアングルで困るわ。(笑)
全てお見通しですよ・・・vivajijiさん
って、そんなわけないじゃないですか。
ほんと考えることがローアングルで困るわ。(笑)
ルビッチ初体験でした。
庶民を描くのは珍しいらしいですが、セレブな人々のドラマも楽しみですな。
もうすぐ、クリスマス。姐さんの記事も読みたい!
私もこの作品はこの間観たばかりなのですが、ルビッチというより、キャプラに近いな~と思って観てました。
ルビッチ作品は「青髭八人目の妻」や製作で関わってる「真珠の首飾り」等、ゲイリー・クーパーが主演のものは観たことあったのですが、この作品はそれらに比べてソフトにまとめてあって好きです。
キャプラ・チックでしたね。
「青髭八人目の妻」とか「生きるべきか死ぬべきか」とかいかにも古めかしいタイトルが多いんですが、中身はコメディが多いとか。なかなかお目にかかれないのが残念ですね。
お邪魔してみてびっくりしたんですが、トラックバックじゃなくても前の記事に行ける(っていうか、前の記事から相手のブログへコメントできる)んですね。
双葉十三郎さん、懐かしいお名前ですね。まだご健在なんですよね。子供の頃、映画雑誌の双葉さんの軽妙な評論を
楽しみに読んでいたことを思い出しました。
十瑠さんの記事を読んだら、ますますこの映画を観たくなりました。アマゾンでも購入できるのかなぁ。チェックしてみよっと。
>ますますこの映画を観たくなりました。
ホントはクリスマス時期が宜しいかと思いますが、一度観るだけでは収まらないでしょうから、とりあえず・・如何でしょうか。
>イイ映画というのは、ストーリーを追わずに人物を追っているから面白いんですな。
一度筋書きを知ってからニ度、三度観なおしたくなるのは、やはり演技者に魅力があるからだと思います。
>クリスマスに観たい映画の一つになりました。
クリスマスで善意を描いた感動の名作といえば、キャプラ監督でスチュワート主演の「素晴らしき哉、人生」ですよね。
白黒映画は映像の鮮やかさがない分、役者の個性で映画の生き死にが変わるんじゃないでしょうか。
白黒映像は俳優の演技力を上げる効果があると言った監督がいました。つまり、うまく見せるということです。それは監督の演出力も上げてくれるということなんですけどね。^^