(2013/アレクサンダー・ペイン監督/ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ、ボブ・オデンカーク/115分)
しばらく旧い作品が続いたのでレンタルショップで比較的新しい映画を借りてきました。4年前のどこが新しいんだと言われる方もおられるでしょうが、テアトル十瑠としては新作の範疇でありますぞ。
「サイドウェイ」で名前を覚えたアレクサンダー・ペインの作品ですね。「サイドウェイ」と同じくロード・ムーヴィーで、それもずっと旅を追っていくのではなく旅先でのアレコレが主な話と言うのも似ております。
2013年のアカデミー賞で作品賞他5部門にノミネートされた作品で、なんとモノクロ画面。地平線が印象的なアメリカ中西部を旅するロード・ムーヴィーでモノクロ作品、といえば僕らの世代では「ペーパー・ムーン」を思い出しますが、あちらがレトロな雰囲気を醸し出すスタンダードサイズだったのに対して、こちらは大地の広さを感じさせるワイドサイズで撮られておりました。
ジョン・フォードの西部劇を彷彿とするような抜けるような青空(モノクロなのにそんな感じ)と白い雲と、とにかく風景が美しい。撮影はフェドン・パパマイケル。「サイドウェイ」も撮ったパパマイケルさんはこの作品でオスカーにノミネートされたようです。
モンタナ州に住む老人ウディ・グラント。元々口数が少ないのに、口うるさい妻のケイトの前では余計に会話も無くなり、ケイトからはボケ老人の様に見られ始めている。
突然届いた100万ドルの1等宝くじに当選したというダイレクトメールを信用した彼は、当選金を受け取るべくネブラスカ州リンカーンに向かおうとするが、高齢の為に運転免許証を返納しており、歩いて高速道路にまで入っていくのでパトカーに捕まってしまう。
何度目かの警察沙汰に根負けした次男デイビッドは、仕事を休んで父親に付き合う事にした。老い先短い父親の気のすむようにしてやろうと思ったのだ。ネブラスカ州まではモンタナからワイオミング、サウスダコタを越えて千キロ以上の長旅。途中の宿泊先で酒を飲んで転んで頭にケガをしたウディは一時入院することになり、週内にはリンカーンに行けなくなってしまう。
リンカーンの手前の町ホーソーンは実はウディの生まれ故郷。土日を兄レイの家に滞在することになったウディは酒場で昔なじみに会う事になるが、彼がふと漏らした宝くじ当選の噂は一晩にして小さな町中に知れ渡ってしまう・・・。
主役はボケ老人のウディになっていますが、ドラマの軸は次男のデイビッドといっていいですね。タイトルの「ふたつの心」とは当然この親子の事であります。
父親の故郷で初めて知る父親の過去。重い話ではないですが、大酒呑みで家族を顧みなかった父親が昔なじみにどう思われているかを知ることによって、父親の人生に思いをはせる息子を描いた映画と思いました。
日曜日にはケイトや長男のロスもホーソーンにやってきて何十年ぶりかの親族の再会パーティーが開かれるが、親族にも宝くじの件はばれており、いくらケイト達がウディの勘違いだと否定しても却って隠そうとしていると誤解されるのが可笑しいやら怖いやら。急に有名人になった人々に親戚が増えるのと似ていて、コチラはにわか長者に対してホントか嘘かもわからない過去の借金の返済を迫る人々が出てくるって事。小言ばかりの婆さんだと思われたケイトが、ピシッと言いがかりを撥ね付けるのが気持ちよかったです。
偽の宝くじ当選話の決着は如何に?
ラストシーンは親孝行の良い話になって嬉しい気持ちになりますが、似たようなBGMで思い出した「ストレイト・ストーリー」の感慨深さには及びませんでした。
ウディを演じたのはローラ・ダーンの父親ブルース。「華麗なるギャツビー (1974)」、「ファミリー・プロット (1976)」の頃しか覚えてないので、事前情報がなければ彼とウディは結びつかないでしょうね。ウディのよたよた歩き、お見事です。
そして、オープニング・クレジットで気づいたステイシー・キーチ。役はウディのかつての仕事仲間エド・ピグラム。
知り合いが大金持ちになりそうだと知った人間がどう変化するか。歳をとってもやっぱり憎たらしい男がお似合いですな。
アカデミー賞以外にも、ゴールデン・グローブ、英国アカデミー賞、カンヌ国際映画祭、LA批評家協会賞などで複数の部門でノミネートされた佳作です。
僕のお薦め度は★三つ半。★四つにするだけのおまけが見つかりませんでした。
※ネタバレ備忘録はコチラです。
しばらく旧い作品が続いたのでレンタルショップで比較的新しい映画を借りてきました。4年前のどこが新しいんだと言われる方もおられるでしょうが、テアトル十瑠としては新作の範疇でありますぞ。
「サイドウェイ」で名前を覚えたアレクサンダー・ペインの作品ですね。「サイドウェイ」と同じくロード・ムーヴィーで、それもずっと旅を追っていくのではなく旅先でのアレコレが主な話と言うのも似ております。
2013年のアカデミー賞で作品賞他5部門にノミネートされた作品で、なんとモノクロ画面。地平線が印象的なアメリカ中西部を旅するロード・ムーヴィーでモノクロ作品、といえば僕らの世代では「ペーパー・ムーン」を思い出しますが、あちらがレトロな雰囲気を醸し出すスタンダードサイズだったのに対して、こちらは大地の広さを感じさせるワイドサイズで撮られておりました。
ジョン・フォードの西部劇を彷彿とするような抜けるような青空(モノクロなのにそんな感じ)と白い雲と、とにかく風景が美しい。撮影はフェドン・パパマイケル。「サイドウェイ」も撮ったパパマイケルさんはこの作品でオスカーにノミネートされたようです。
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モンタナ州に住む老人ウディ・グラント。元々口数が少ないのに、口うるさい妻のケイトの前では余計に会話も無くなり、ケイトからはボケ老人の様に見られ始めている。
突然届いた100万ドルの1等宝くじに当選したというダイレクトメールを信用した彼は、当選金を受け取るべくネブラスカ州リンカーンに向かおうとするが、高齢の為に運転免許証を返納しており、歩いて高速道路にまで入っていくのでパトカーに捕まってしまう。
何度目かの警察沙汰に根負けした次男デイビッドは、仕事を休んで父親に付き合う事にした。老い先短い父親の気のすむようにしてやろうと思ったのだ。ネブラスカ州まではモンタナからワイオミング、サウスダコタを越えて千キロ以上の長旅。途中の宿泊先で酒を飲んで転んで頭にケガをしたウディは一時入院することになり、週内にはリンカーンに行けなくなってしまう。
リンカーンの手前の町ホーソーンは実はウディの生まれ故郷。土日を兄レイの家に滞在することになったウディは酒場で昔なじみに会う事になるが、彼がふと漏らした宝くじ当選の噂は一晩にして小さな町中に知れ渡ってしまう・・・。
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主役はボケ老人のウディになっていますが、ドラマの軸は次男のデイビッドといっていいですね。タイトルの「ふたつの心」とは当然この親子の事であります。
父親の故郷で初めて知る父親の過去。重い話ではないですが、大酒呑みで家族を顧みなかった父親が昔なじみにどう思われているかを知ることによって、父親の人生に思いをはせる息子を描いた映画と思いました。
日曜日にはケイトや長男のロスもホーソーンにやってきて何十年ぶりかの親族の再会パーティーが開かれるが、親族にも宝くじの件はばれており、いくらケイト達がウディの勘違いだと否定しても却って隠そうとしていると誤解されるのが可笑しいやら怖いやら。急に有名人になった人々に親戚が増えるのと似ていて、コチラはにわか長者に対してホントか嘘かもわからない過去の借金の返済を迫る人々が出てくるって事。小言ばかりの婆さんだと思われたケイトが、ピシッと言いがかりを撥ね付けるのが気持ちよかったです。
偽の宝くじ当選話の決着は如何に?
ラストシーンは親孝行の良い話になって嬉しい気持ちになりますが、似たようなBGMで思い出した「ストレイト・ストーリー」の感慨深さには及びませんでした。
ウディを演じたのはローラ・ダーンの父親ブルース。「華麗なるギャツビー (1974)」、「ファミリー・プロット (1976)」の頃しか覚えてないので、事前情報がなければ彼とウディは結びつかないでしょうね。ウディのよたよた歩き、お見事です。
そして、オープニング・クレジットで気づいたステイシー・キーチ。役はウディのかつての仕事仲間エド・ピグラム。
知り合いが大金持ちになりそうだと知った人間がどう変化するか。歳をとってもやっぱり憎たらしい男がお似合いですな。
アカデミー賞以外にも、ゴールデン・グローブ、英国アカデミー賞、カンヌ国際映画祭、LA批評家協会賞などで複数の部門でノミネートされた佳作です。
僕のお薦め度は★三つ半。★四つにするだけのおまけが見つかりませんでした。
※ネタバレ備忘録はコチラです。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】
「ストレイト・ストーリー」に敵わないのは、ここら辺の悪印象を覆せるほどの感動がないからかな?
ほっこりできるシーンはいくつかあるんですけどね~。
話題と言えば車の事ばっかしだったし。(笑)
>ほっこりできるシーンはいくつかあるんですけどね~。
じっちゃんの目的とか、最後の親孝行とか、ですよね~。