(2006/リチャード・エアー監督/ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、アンドリュー・シンプソン/92分)
今年最初の紹介記事がR-15指定作品というのも何ですが・・・。
R-15といっても二大オスカー女優の共演ですから、エロティックな映像でNGではなく、題材がお子様にはNGという作品です。
女性教師と男子生徒との禁断の関係なんてちっとも珍しくないし、現に去年十月には佐賀県で、夫も三人の子供もいる中学の音楽教師が、彼女の教え子で同校の卒業生である高校一年生の少年と温泉旅行をして逮捕されるという事件が起きている。この映画も、10年ほど前にシアトルで実際に起きた事件を元に書かれたフィクションが原作なのだそうです。
但し、そのスキャンダラスな関係を描くのがテーマではなく、当事者の女性教師と同僚の女性教師との心理的な駆け引きを描いたサスペンスが面白いドラマです。
舞台はロンドン。労働者階級の子供たちが通う中学校で、新任の女性美術教師が15歳の男子生徒と関係をもってしまう。映画は美術教師の同僚で歴史担当のベテラン女性教師のモノローグにより、美術教師が登校した日から始まる。
歴史担当教師の名はバーバラ(デンチ)。定年間近で未婚のオールドミス。他の教師の前では行儀の悪い子供たちも彼女の前では大人しくなってしまうくらいの威厳があるが、その威厳がマイナスに作用してか校内で友達づきあいをしている教師はいない。勿論一人暮らしだ。
新任の美術教師の名はシーバ(ブランシェット)。年の離れた夫(ナイ)がいて、二人の子供の母親。バーバラの調べだと、シーバの父親は名のある学者だそうで、シーバもいわゆる上流階級のお嬢様である。
シーバの授業中に男子生徒が教室で喧嘩をして収拾がつかなくなっているところをバーバラが助けたことから、二人は少しずつ近付いていく。シーバに誘われ、バーバラは日曜日に彼女の家に遊びに行く。他人の家を訪ねるのは彼女の人生でも珍しい事であり、悟られないように精一杯おめかしをしたが、シーバの娘には『どこかにお出かけするの?』と聞かれるバーバラであった。
食後の夫婦揃ってのダンスに付き合わされるのには閉口したが、いかにも上流階級育ちらしい開放的な面があるシーバは、バーバラに自分や家族の事を色々と屈託なく話してくれた。何の苦労もなさそうな女性だと思っていたのに、下の息子はダウン症だった。
ある日、集会になかなか出てこないシーバを心配して教室を覗いたバーバラは、そこに見てはならないものを見てしまう。教え子と先生との情事。本来なら注意をするか校長に告発すべき問題であるのだが、バーバラは黙っていることにした。そして、後日シーバにだけ話すことにした。そこには、彼女のある思いがあったのである・・・。
バーバラによる語りとなっているので彼女が狂言廻しかと思いきや、アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」のごとく当事者になっていくのが実にサスペンスフル。女性二人の騙し合いのような筋書きは、昔だったら「何がジェーンに起ったか?(1962)」のロバート・アルドリッチが作りそうだなと思いました。
中盤から終盤にかけて、シーバに好意を持っている男性教師の登場など唐突でラフな部分もみられるが、アカデミー作曲賞にノミネートされたフィリップ・グラスのミステリアスな雰囲気充分のBGMにも助けられて、女性二人に絞った展開をぐいぐいと押していく感じ。
お互いについているウソがばれそうになる所、そしてばれる所など、二人の女優の名演技による心理サスペンスがお見事でした。
ブランシェットの白い肌と柔らかな金髪、赤くて厚い唇が、抑えきれない情念に翻弄される三十路女性の揺れる気持ちを表現。撮影時17歳だったアンドリュー・シンプソンの、“恐るべき子供”ぶりも面白いです。
ご贔屓ブログ「映画と暮らす、日々に暮らす。」のviva jijiさんも書かれていましたが、ラストシーンはワイラーの「コレクター(1965)」を彷彿とさせる不気味なものでした。
2006年のアカデミー賞では、前出の作曲賞以外にも、主演女優賞(デンチ)、助演女優賞(ブランシェット)、脚色賞(パトリック・マーバー)にノミネート。ゴールデン・グローブ賞でも女優賞(ドラマ)、助演女優賞、脚本賞にノミネートされたようですが全て無冠に終わったとのことでした。
今年最初の紹介記事がR-15指定作品というのも何ですが・・・。
R-15といっても二大オスカー女優の共演ですから、エロティックな映像でNGではなく、題材がお子様にはNGという作品です。
女性教師と男子生徒との禁断の関係なんてちっとも珍しくないし、現に去年十月には佐賀県で、夫も三人の子供もいる中学の音楽教師が、彼女の教え子で同校の卒業生である高校一年生の少年と温泉旅行をして逮捕されるという事件が起きている。この映画も、10年ほど前にシアトルで実際に起きた事件を元に書かれたフィクションが原作なのだそうです。
但し、そのスキャンダラスな関係を描くのがテーマではなく、当事者の女性教師と同僚の女性教師との心理的な駆け引きを描いたサスペンスが面白いドラマです。
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舞台はロンドン。労働者階級の子供たちが通う中学校で、新任の女性美術教師が15歳の男子生徒と関係をもってしまう。映画は美術教師の同僚で歴史担当のベテラン女性教師のモノローグにより、美術教師が登校した日から始まる。
歴史担当教師の名はバーバラ(デンチ)。定年間近で未婚のオールドミス。他の教師の前では行儀の悪い子供たちも彼女の前では大人しくなってしまうくらいの威厳があるが、その威厳がマイナスに作用してか校内で友達づきあいをしている教師はいない。勿論一人暮らしだ。
新任の美術教師の名はシーバ(ブランシェット)。年の離れた夫(ナイ)がいて、二人の子供の母親。バーバラの調べだと、シーバの父親は名のある学者だそうで、シーバもいわゆる上流階級のお嬢様である。
シーバの授業中に男子生徒が教室で喧嘩をして収拾がつかなくなっているところをバーバラが助けたことから、二人は少しずつ近付いていく。シーバに誘われ、バーバラは日曜日に彼女の家に遊びに行く。他人の家を訪ねるのは彼女の人生でも珍しい事であり、悟られないように精一杯おめかしをしたが、シーバの娘には『どこかにお出かけするの?』と聞かれるバーバラであった。
食後の夫婦揃ってのダンスに付き合わされるのには閉口したが、いかにも上流階級育ちらしい開放的な面があるシーバは、バーバラに自分や家族の事を色々と屈託なく話してくれた。何の苦労もなさそうな女性だと思っていたのに、下の息子はダウン症だった。
ある日、集会になかなか出てこないシーバを心配して教室を覗いたバーバラは、そこに見てはならないものを見てしまう。教え子と先生との情事。本来なら注意をするか校長に告発すべき問題であるのだが、バーバラは黙っていることにした。そして、後日シーバにだけ話すことにした。そこには、彼女のある思いがあったのである・・・。
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バーバラによる語りとなっているので彼女が狂言廻しかと思いきや、アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」のごとく当事者になっていくのが実にサスペンスフル。女性二人の騙し合いのような筋書きは、昔だったら「何がジェーンに起ったか?(1962)」のロバート・アルドリッチが作りそうだなと思いました。
中盤から終盤にかけて、シーバに好意を持っている男性教師の登場など唐突でラフな部分もみられるが、アカデミー作曲賞にノミネートされたフィリップ・グラスのミステリアスな雰囲気充分のBGMにも助けられて、女性二人に絞った展開をぐいぐいと押していく感じ。
お互いについているウソがばれそうになる所、そしてばれる所など、二人の女優の名演技による心理サスペンスがお見事でした。
ブランシェットの白い肌と柔らかな金髪、赤くて厚い唇が、抑えきれない情念に翻弄される三十路女性の揺れる気持ちを表現。撮影時17歳だったアンドリュー・シンプソンの、“恐るべき子供”ぶりも面白いです。
ご贔屓ブログ「映画と暮らす、日々に暮らす。」のviva jijiさんも書かれていましたが、ラストシーンはワイラーの「コレクター(1965)」を彷彿とさせる不気味なものでした。
2006年のアカデミー賞では、前出の作曲賞以外にも、主演女優賞(デンチ)、助演女優賞(ブランシェット)、脚色賞(パトリック・マーバー)にノミネート。ゴールデン・グローブ賞でも女優賞(ドラマ)、助演女優賞、脚本賞にノミネートされたようですが全て無冠に終わったとのことでした。
・お薦め度【★★★★=サスペンスファンの、友達にも薦めて】
拝読させていただきましたら、あんれ、私の拙ブログ名が・・・・^^
ああ~~お正月から、わたくし、穴があったら・・・じゃなくぅ~^^ 未見の方がいらしたら
穴が開くほど、ぜひ、本作、観てくださ~~い!
実に怖い映画ざますね~。
愛だの恋だの、友情って、何でもそうですけれど兼ね合いって難しいですわ。
おっと、新情報、17歳の撮影クンでしたか~!
うんうん、将来、これは楽しみですわね
さてと、ポートレート・クイズへと。
あんら。
・・・遅れをとったみたい。(--)
女性陣にはBGMが不評のようでしたが、ブノア。さんと同じく私も気になりませんでした。というか、むしろ貢献していると感じましたネ。
異常者か、一歩手前かというデンチさんの演技も恐かったですネェ。
今年も昨年同様、よろしくお付き合いを願いますです。ご挨拶がとんと遅れてしまいました…。
さて。
わたくし、この映画を見ていて、なぜか「アデルの恋の物語」などを思い出してしまいました。“思いの通じない相手への妄執”のせいでしょうかねえ。
ご指摘のように、シーバとバーバラの駆け引きがすごくて心臓に悪いです(笑)。私自身は、バーバラの抱えているであろう深い深い哀しみに、鬱々としてしまいました。
この映画も「アデル~」同様、もう一度観るのに気力が必要ですけど、またいつか観返してみたいですね。
アジャーニさんのような美女には目がないのに、タイミングが合わずに今もって逢えません。
>もう一度観るのに気力が必要
割とエンターテインメントとして観ましたので、面白さの方を強く感じたので、必ずもう一度観ようと思っています。男だから人ごとなんですかね(笑)
お疲れ気味だった里帰りから、すっかり回復されたようで・・。
今年も、じっくりと読ませていただきま~す