(1961/ロバート・ロッセン監督・製作・共同脚本/ポール・ニューマン、パイパー・ローリー、ジョージ・C・スコット、ジャッキー・グリーソン、マーレイ・ハミルトン、マイロン・マコーミック/135分)
とある町。ガソリンスタンドに給油に寄った一台の車。降りてきた二人の男は、ブレーキとオイルのチェックも頼んで向かいのバーに入る。
年輩の男と若者。マスターに聞かれ、二人は薬の営業マンでありピッツバーグに行く途中だと答える。若い方はやり手で『先月も1万ドル以上も売上げ、会社から表彰されたんだ。』と先輩格のチャーリーが言う。マスターは、『ピッツバーグなら3時間もあれば着く。暑い昼間は避けて、夜走ったらどうだ。』と酒をすすめる。それもいいな。店の奥に玉突き台を見つけた若者はチャーリーに、『いっちょやるか』。
二人で小銭を賭けながら遊んでいると店に入ってきた近所の男共も面白がって見ている。若者は酒の飲み過ぎで大分歩が悪い。が、難しい局面で鮮やかなショットを見せてゲームを取り返す。チャーリーはマグレだと言う。若者は“マグレ”にカチンときて、もう一度見せてやるから賭けるか? と聞く。先程と同じように玉を置き、突く。今度は失敗だ。
チャーリーは、もう止めようと言う。が、若者はもう一度やるから賭けろと言う。チャーリーが渋っていると、一部始終を見ていたバーのマスターが、自分が賭けようと声をかける。
『ハハーん。ここで小遣い稼ぎをしようってか? じゃぁ、俺の一週間分の小遣い100ドル全部賭けようじゃないか!』
『俺は車で待ってるぞ。』と店を出ていくチャーリー。
マスターは店の奥から100ドル札を持ってきて、さっきと同じように玉を置く。グイッとグラスの酒を喉に送った若者の目が一瞬にして変わる・・・。
サックスとパーカッションの軽快なジャズ(音楽:ケニヨン・ホプキンス)をバックに、ストップ・モーション(静止画像ではありません)で繋げたオープニング・ロール。ヘェーッ、「ハスラー」ってこんなにカッコよかったっけ?
しかも、その前に上に紹介したエピソードがある。タイトルロールの前に一シーンあるなんて、最近じゃTVでも珍しくないけど、こんな旧作にもあったんですなぁ。1961年度アカデミー賞の作品賞、監督賞ノミネート作品であります。
子供の頃にTVの吹き替え版で見たのが最初。NHK-BS放送で久しぶりに(何十年ぶりでしょう)再会しました。
賭けビリヤードの話であること、ポール・ニューマンが途中で手の指を折られること、そして恋人の不幸な最後が記憶にありましたが、印象としては非情な男の世界の話。
今回は、他人との繋がりが稀薄な孤独な男女がビビビッと惹かれ、しっとりと寄り添いあうシーンが印象に残りました。特にパイパー・ローリー(「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」)の存在感が圧巻! 不幸な生い立ちを持ち両親と別れて生きる女性が、同じように孤独に生きている男と束の間の幸せを掴む。ニューマンと同じく彼女も主演女優賞にノミネートされたそうです。
「熱いトタン屋根の猫(1958)」に続く2度目の主演男優賞にノミネートされたポール・ニューマン。ポールさん、賭博師の役がハマリますなぁ。今回は賭けそのものよりも、男対男の“気骨”のぶつかり合いが見物でしたがネ。
ハスラーの元締めバートを演じたジョージ・C・スコットの演技も素晴らしい。彼は“俳優達を競争させるのは堕落だ”と、ノミネートさえも拒否したらしいが、ベテランのハスラー“ミネソタ・ファッツ”を演じたジャッキー・グリーソンも同じく助演男優賞にノミネートされた。
タイトルロールの後、ニューマン演じるエディの念願のファッツとの対決が延々と続くシークエンスがあり、70年代以降によくみかける前半で登場人物を小出しに紹介していく映画とは一線を画しております。
構成的にどうなの? と最初は思いましたが、終盤の2回目の対決と対になっており、最初にハスラーの世界を紹介したことで全体が締まっていたようです。その後のエディにはファッツとの再対決が常に念頭にあり、ストーリーの軸となっています。
▼(ネタバレ注意)
16歳から父親代わりの詐欺師と暮らしてきたエディと、小児マヒが原因で足が悪く、母親と別れた父親からの仕送りで独り暮らすサラ。
ファッツとの対決に破れ、チャーリーとも別れようと独りでバス・ステーションにやって来たエディが、コーヒーを飲んでいるサラを見つけ、声をかけるのが最初の出逢い。
一度は『あなた、飢えすぎてるわ!』とエディのキスを拒んだサラが、翌日何かに惹かれるようにステーションにやってきて、同じようにソコにいたエディを見つける。何も言わずに見つめ合い、スッと立ち上がったエディがサラの肩を抱く。目で演技するとはこのシーンのことですな。
目の演技といえば、主演の4人には目して語らず(十瑠注:“黙して語らず”では無い)のシーンが沢山ありました。
そんな中、サラはエディに何度か『愛してる』と声をかけます。エディとサラが郊外にピクニックに行くシーンで、そんなサラにエディが『言葉は必要か?』と聞く。『必要よ。だって、言葉にすると取り消せないもの。』
ファッツとの二度目の対決に必要な資金を稼ぐために、バートと共に競馬場のある大きな町へ出かけるエディとサラ。その町の名士で賭けビリヤードの好きなジェームズ(ハミルトン)をカモる事が目的だったが、サラはバートに利用されているエディのことが心配だった。
ジェームズに勝った後、歩いて帰るというエディを、途中で娼婦でも買うんだろうと誤解したバートは、先にタクシーで帰ってサラに言い寄る。エディに振られたと思ったサラは、投げやりになりバートに身を任せて・・・。
(って、こういう事だったんだろうか、サラの気持ちは? ここ、いまいち掴めてません。)
▲(解除)
原題の【THE HUSTLER】とは、賭けビリヤードの詐欺師、賭博師のこと。ウォルター・テヴィスの原作は翻訳されているようなので、読みたくなりました。
ロッセンと一緒に脚色賞にノミネートされたのは、「テキサスの五人の仲間」のシドニー・キャロル。
ドイツ出身のユージン・シャフタンはこの映画でアカデミー撮影賞(白黒)を獲ったそうです。
資金稼ぎのために競馬場のある町で名士とやったゲームを映画では“ビリヤード”と呼んでいました。アメリカでは“四つ玉”の事をビリヤードと呼んでいて、ファッツとやったポケット・ビリヤードは、単に“ポケット”と言うらしいです。
尚、あの“ビリヤード”好きの名士を演じていたのは、「卒業」、「ジョーズ」のマーレイ・ハミルトンでした。
“お薦め度”は、単にお好みの問題で★一つマイナスです。
(“観る程に 味わい深し 「ハスラー」かな”/03.17 “お薦め度”修正です)
とある町。ガソリンスタンドに給油に寄った一台の車。降りてきた二人の男は、ブレーキとオイルのチェックも頼んで向かいのバーに入る。
年輩の男と若者。マスターに聞かれ、二人は薬の営業マンでありピッツバーグに行く途中だと答える。若い方はやり手で『先月も1万ドル以上も売上げ、会社から表彰されたんだ。』と先輩格のチャーリーが言う。マスターは、『ピッツバーグなら3時間もあれば着く。暑い昼間は避けて、夜走ったらどうだ。』と酒をすすめる。それもいいな。店の奥に玉突き台を見つけた若者はチャーリーに、『いっちょやるか』。
二人で小銭を賭けながら遊んでいると店に入ってきた近所の男共も面白がって見ている。若者は酒の飲み過ぎで大分歩が悪い。が、難しい局面で鮮やかなショットを見せてゲームを取り返す。チャーリーはマグレだと言う。若者は“マグレ”にカチンときて、もう一度見せてやるから賭けるか? と聞く。先程と同じように玉を置き、突く。今度は失敗だ。
チャーリーは、もう止めようと言う。が、若者はもう一度やるから賭けろと言う。チャーリーが渋っていると、一部始終を見ていたバーのマスターが、自分が賭けようと声をかける。
『ハハーん。ここで小遣い稼ぎをしようってか? じゃぁ、俺の一週間分の小遣い100ドル全部賭けようじゃないか!』
『俺は車で待ってるぞ。』と店を出ていくチャーリー。
マスターは店の奥から100ドル札を持ってきて、さっきと同じように玉を置く。グイッとグラスの酒を喉に送った若者の目が一瞬にして変わる・・・。
サックスとパーカッションの軽快なジャズ(音楽:ケニヨン・ホプキンス)をバックに、ストップ・モーション(静止画像ではありません)で繋げたオープニング・ロール。ヘェーッ、「ハスラー」ってこんなにカッコよかったっけ?
しかも、その前に上に紹介したエピソードがある。タイトルロールの前に一シーンあるなんて、最近じゃTVでも珍しくないけど、こんな旧作にもあったんですなぁ。1961年度アカデミー賞の作品賞、監督賞ノミネート作品であります。
子供の頃にTVの吹き替え版で見たのが最初。NHK-BS放送で久しぶりに(何十年ぶりでしょう)再会しました。
賭けビリヤードの話であること、ポール・ニューマンが途中で手の指を折られること、そして恋人の不幸な最後が記憶にありましたが、印象としては非情な男の世界の話。
今回は、他人との繋がりが稀薄な孤独な男女がビビビッと惹かれ、しっとりと寄り添いあうシーンが印象に残りました。特にパイパー・ローリー(「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」)の存在感が圧巻! 不幸な生い立ちを持ち両親と別れて生きる女性が、同じように孤独に生きている男と束の間の幸せを掴む。ニューマンと同じく彼女も主演女優賞にノミネートされたそうです。
「熱いトタン屋根の猫(1958)」に続く2度目の主演男優賞にノミネートされたポール・ニューマン。ポールさん、賭博師の役がハマリますなぁ。今回は賭けそのものよりも、男対男の“気骨”のぶつかり合いが見物でしたがネ。
ハスラーの元締めバートを演じたジョージ・C・スコットの演技も素晴らしい。彼は“俳優達を競争させるのは堕落だ”と、ノミネートさえも拒否したらしいが、ベテランのハスラー“ミネソタ・ファッツ”を演じたジャッキー・グリーソンも同じく助演男優賞にノミネートされた。
タイトルロールの後、ニューマン演じるエディの念願のファッツとの対決が延々と続くシークエンスがあり、70年代以降によくみかける前半で登場人物を小出しに紹介していく映画とは一線を画しております。
構成的にどうなの? と最初は思いましたが、終盤の2回目の対決と対になっており、最初にハスラーの世界を紹介したことで全体が締まっていたようです。その後のエディにはファッツとの再対決が常に念頭にあり、ストーリーの軸となっています。
▼(ネタバレ注意)
16歳から父親代わりの詐欺師と暮らしてきたエディと、小児マヒが原因で足が悪く、母親と別れた父親からの仕送りで独り暮らすサラ。
ファッツとの対決に破れ、チャーリーとも別れようと独りでバス・ステーションにやって来たエディが、コーヒーを飲んでいるサラを見つけ、声をかけるのが最初の出逢い。
一度は『あなた、飢えすぎてるわ!』とエディのキスを拒んだサラが、翌日何かに惹かれるようにステーションにやってきて、同じようにソコにいたエディを見つける。何も言わずに見つめ合い、スッと立ち上がったエディがサラの肩を抱く。目で演技するとはこのシーンのことですな。
目の演技といえば、主演の4人には目して語らず(十瑠注:“黙して語らず”では無い)のシーンが沢山ありました。
そんな中、サラはエディに何度か『愛してる』と声をかけます。エディとサラが郊外にピクニックに行くシーンで、そんなサラにエディが『言葉は必要か?』と聞く。『必要よ。だって、言葉にすると取り消せないもの。』
ファッツとの二度目の対決に必要な資金を稼ぐために、バートと共に競馬場のある大きな町へ出かけるエディとサラ。その町の名士で賭けビリヤードの好きなジェームズ(ハミルトン)をカモる事が目的だったが、サラはバートに利用されているエディのことが心配だった。
ジェームズに勝った後、歩いて帰るというエディを、途中で娼婦でも買うんだろうと誤解したバートは、先にタクシーで帰ってサラに言い寄る。エディに振られたと思ったサラは、投げやりになりバートに身を任せて・・・。
(って、こういう事だったんだろうか、サラの気持ちは? ここ、いまいち掴めてません。)
▲(解除)
原題の【THE HUSTLER】とは、賭けビリヤードの詐欺師、賭博師のこと。ウォルター・テヴィスの原作は翻訳されているようなので、読みたくなりました。
ロッセンと一緒に脚色賞にノミネートされたのは、「テキサスの五人の仲間」のシドニー・キャロル。
ドイツ出身のユージン・シャフタンはこの映画でアカデミー撮影賞(白黒)を獲ったそうです。
資金稼ぎのために競馬場のある町で名士とやったゲームを映画では“ビリヤード”と呼んでいました。アメリカでは“四つ玉”の事をビリヤードと呼んでいて、ファッツとやったポケット・ビリヤードは、単に“ポケット”と言うらしいです。
尚、あの“ビリヤード”好きの名士を演じていたのは、「卒業」、「ジョーズ」のマーレイ・ハミルトンでした。
(“観る程に 味わい深し 「ハスラー」かな”/03.17 “お薦め度”修正です)
・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】
私もちょうどNHKにて、本作を久しぶりに観ておりました!
いや~痺れました!
序盤シーンでのプールでの駆け引き、ジョージ・C・スコットが語る勝負のアヤ・・・これぞギャンブル映画の金字塔! と思わせる見事な脚本。(映画的に言えば、決して上出来な部類ではないのですが)
それに何といっても本作の魅力は、ミネソタ・ファッツのカッコよさに尽きます!
さしずめファッツは、私が知る映画ブログではあまり評判が芳しくない 『麻雀放浪記』 の ”出目徳”。ジャッキー・グリーソンは高品格なのであります(笑)
私が大学生だった当事、『ハスラー2』 の公開によって、大学近辺にはビリヤード場が乱立いたしました。そして私も例外なく、ビリヤードにのめりこんだのでした。
雀荘にいるかプールにいるか飲み屋にいるか・・・そんな学生時代を思い返すと、「無為な青春だった」といくらかおセンチな苦笑いが浮かんでしまいます(笑)
なお、サラの死はエディの純粋さを守るためのロマンティックなサクリファイスだと解釈しております。これを自暴自棄と読むと、あまりにも哀しいです。
私のブログにて十瑠様の「::: SCREEN :::」をリンクさせていただいてよろしいでしょうか?
>ロマンティックなサクリファイスだと解釈しております。
それも考えましたが、哀しいけれど“二重の誤解が生んだ悲劇”の方が非情なムードにあってるかな、と・・。
リンク、大歓迎です
まさにおっしゃられる通りですよね。
酒に溺れる書けない作家・サラを演じるパイパー・ローリーは実に魅力的でした。
自堕落な生活を物語るアパートの様子が、とても切なく描写されておりました。
リンクさせていただきました!
これからもよろしくお願いいたします^^
そうです。
若い頃は可愛いお嬢さん女優だったらしいですが、「ハスラー」では、すねているような甘えているような、そしてお色気も感じさせるくせのある女を演じていましたね。