テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ネタバレ備忘録 ~「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」②

2013-04-16 | ドラマ
 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のネタバレ備忘録②です。
 例によって、未見の方には“ネタバレ注意”です。





 「ブラック」さん探しの結末は最初から結果が気になる所で、意外な種明かしでもないですが、一応書いておきましょう。
 このブラックさんは父親の特別な知り合いではなく、生前の父親がたまたま遺品セールの店で逢った店主のブラックさんでした。オスカーがアルファベット順に訪ねて回った最初の「ブラック」さん、アビー・ブラックの夫ウィリアムが件の鍵の経緯を知る人物でした。

 9.11の少し前に亡くなった父親の遺品を整理するためにウィリアムは遺品セールの店を開く。たまたまやってきたオスカーの父トーマスは青い花瓶が気に入って買うが、その花瓶の中に売り手も買い手も知らない鍵が入っていたのだ。
 後になって、ウィリアムのところに生前に出されたであろう父親からの手紙が届き、青い花瓶の中に遺書などを入れた貸し金庫の鍵が入っていると書かれていた。既に花瓶はトーマスが買った後。ウィリアムは街角に「青い花瓶を買った人」と“尋ね人”の張り紙をしようかとも考えたが、不幸なことにNYは街中が「9.11」の尋ね人のチラシで一杯だったのだ。

 お祖父ちゃんも居なくなって、「ブラック」さん探しが迷宮入りになりそうな頃、オスカーは父の残した新聞の切り取りの裏側に赤丸をつけた電話番号を見つける。ひょっとしてとかけた先が、最初に訪ねたアビー・「ブラック」だった。
 アビーとウィリアムは離婚していたが、アビーはウィリアムの会社に連れて行ってくれた。オスカーには(彼と父親にとっての特別な鍵ではなかったので)残念な結果だったが、鍵の真相が分かったし、ウィリアムにとっては1年以上も探していた鍵だったので、自分の鍵穴探しが無駄ではなくて良かったとオスカーは言った。
 「9.11」の遺族だと知ってウィリアムもオスカーに慰めの言葉をかけた。すると、オスカーは自分の秘密を聞いてくれるかと断った上で、今まで母親は勿論、お祖父ちゃんにも黙っていた“あの最悪の日”の出来事を話すのだ。

 さて、このオスカーの秘密が実はこの映画で一番重要な鍵でありました。

 “あの最悪の日”、受話器には6つの留守番電話が録音されていたのですが、最後の留守電は実はオスカーが家に居る時にかかっていたのです。死を覚悟した大好きなパパが、崩れそうなビルの上からかけてきた電話だったのです。
 『Are you there?』
 トーマスは、オスカーがそこにいることを確信していたかのように、繰り返しました。
 『Are you there?・・・Are you there?・・・』
 しかし、オスカーは怖くて受話器が取れなかったのです。なんて声を掛けて良いのか分からない。どうしたらいいの?
 そして、電話の向こうに恐ろしい雑音が入り出し、ハッと思ってテレビを点けると、まさにWTCビルが崩壊していくところでした。

 自傷行為をするまでにオスカーを追い込んでいたのは、この最後の電話に出られなかった事にあったのですね。
 アスペルガーではなくても、同じ状況で電話に出られない子供はいるかも知れません。鍵穴探しが父親からのメッセージだと解釈するなんて馬鹿げた妄想にしか見えないのに、このシーンで少年の気持ちが分かってオジサンも切なくなってしまったのでした。


(更にネタバレは続く・・・)
 

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