「ポケモンおじさんが……」
というわけで、観ましたよ。パトレイバー。
やっと観ました。これが正しい連休の過ごし方ってヤツやね。
んで、本作品なんだけど。
原作(原作も読みました!)でいうところの、廃棄物13号編にあたる。
とはいえ、背景だけが同一で中身は全く別物。
なにせ、劇場公開用のCMでは「レイバー襲撃事件を追う二人の刑事」……って、特車二課の皆さんは!? シャフトの内海課長は? 南雲隊長は?
出ません……特車二課の面々はチョイ役で出ている。
劇場版の常(?)なのか、シャフト社の陰謀も当然絡んでこない。
そして、南雲隊長は影も形もありません(そんなぁ……)。
今回は劇場版は、「パトレイバー」と銘打っていても、実状は「刑事二人のドラマ」なのである。
「あ~あ、じゃあつまんねぇじゃねえかよ」って、思う事なかれ。
確かに、ここまで原作から離れてしまうと「パトレイバー」であることの必然性は感じられない。
実際、原作では、どちらかというと怪獣映画へのオマージュとして? ギャグっぽく描かれていたのに(シニカルなギャグという意味ではストーリー全般に通じるけど)、本作は非常に人間ドラマとして厚みを持っている。
その最大の理由は西脇冴子の存在だろうか。
原作では中途半端にしか描かれていなかった、廃棄物13号の産みの親、西脇冴子(本作では岬冴子と姓を変えているが)の恩讐と愛情が入り交じった複雑な感情が前面に出たため、強烈な存在感を持つようになった。
ネタバレ防止のため詳細は避けるが。
原作では、廃棄物13号は西脇冴子の父が発見した「ニシワキセル」に、ヒトのガン細胞を融合させて化け物化。
それを軍事目的で使用、西脇冴子はそれに反対する……ということだったが。
本作では「ニシワキセル」に、融合されるガン細胞の提供者が……
原作を知っている人なら、素通りしてしまいそうな部分。
だけど、ここの設定がクローズアップされることによって、西脇冴子、そして作品そのものに厚みと重みを持たせる。
(それが明示されるシーンもきちんと描かれている)
たった一つ、スパイスを加えるだけで、これほどまでにストーリーというものは変わってしまうものなのか、と改めて驚愕。
で、彼女に対して刑事の秦が特別な感情を抱くため、捜査と感情が交錯し、相棒の老刑事とも確執が。
ありがちといえばありがちだけど、ここにも葛藤のドラマが産まれる。
そして、ラスト。
ラストは、ほぼ原作通り特車二課(やっと、ここで全員登場。一課は出ないけど)によって、廃棄物13号が退治されるのだけど……
廃棄物13号を現場までおびき寄せるシーンから、ラストまで。
粗筋は原作通りなのだけど、前振りとなっていた西脇冴子の存在感のため、全く違った映像作品となっている。
誘き出し作戦に使われた音波のテープ、そして自ら「産んだ」廃棄物13号の最期を看取る西脇冴子。
ストーリー全般を通して語られた伏線が、ここに結実して、観る者に切ないが故の感動を与える。
特に、廃棄物13号がレイバーの筐体を着込んでいたシーン。
原作では、さほど深い理由もなかったような気がするのだけど……
本作では……レイバーの筐体が破壊されるとき、思わず涙を禁じ得ない。
と、これだけウェットなストーリーなのに、制作者の視点はドライ。
これはストーリー全般にもいえることなのだが。淡々と進行していく。
これが良いのか悪いのか……パトレイバー的には、もっと起伏のある描写の方が良いのかもしれないけど。
でも、「パトレイバー」とは別の作品として観れば、この淡々とした描写が、むしろウェットな感傷に浸れるような気がした。
というわけで結論。
「パトレイバーが好きだーッ! 死ぬほど好きで、パトレイバーがなけりゃ死んじまう!」
というコアなファンにはお勧めできない。
特車二課は脇役扱いだし、南雲隊長は出ないし(結局、そこかよ)。
でも、「パトレイバー」を題材とした、良い映画を観たいという人には、ぜひともお勧めしたい。
アニメと侮るなかれ。
良い映画は、表現方法に拠らずとも良い映画なのだ。
『パトレイバー The Movie 3』(DVD)
原作:ヘッドギア
総監督:高山文彦
出演:綿引勝彦、平田広明、田中敦子、特車二課の面々、他
私評価:8点(パトレイバーであるということを配慮しない)
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