音信

小池純代の手帖から

うたつらね 2

2019-02-11 | 日記
※寒山の詩を再掲。

 欲識生死譬 
 且将氷水比 
 水結即成氷   
 氷消返成水 
 已死必応生 
 出生還復死
 氷水不相傷
 生死還双美

※その書き下し文がこちら。

 生死の譬えを識らんと欲せば    せいしのたとえをしらんとほっせば
 且らく氷水を将って比えん     しばらくひょうすいをもってたとえん
 水結ぼるれば即わち氷と成り    みずむすぼるればすなわちこおりとなり
 氷消くれば返って水と成る     こおりとくればかえってみずとなる
 已に死すれば必らず応に生るべく  すでにしすればかならずまさにうまるべく
 出生すれば還って復た死す     しゅっせいすればかえってまたしす
 氷と水と相い傷なわず       こおりとみずとあいそこなわず
 生と死と還た双ながら美し     せいとしとまたふたつながらよし
         (入矢義高・注『寒山』中國詩人選集5 より)

※総ルビにつきすべてひらがな表記でルビに代えた。

 白文の対も書き下し文の対も二つながら美し。
 どちらが水、どちらが氷。

 凍結は水の端より 生別は会はむこころをうしなひてより    
       小原奈実(「声と氷」『本郷短歌』第二号)

※この対も美し。水の端から始まる氷。心の端から始まる別れ。
※もうじき二十四節気の「雨水(うすい)」。
 雪が雨に、氷が水になる時期。春の季語。




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