音信

小池純代の手帖から

十喩詩 9 そらのはな

2020-04-30 | 日記
空海「十喩詩」より

   九 詠虚空花喩

  空花灼灼有何實 無色無形但有名
  染浄元来不能動 雲霧■晴名濁清  ■:日+壹
  實相如如一味法 迷人妄見三界城
  四魔三毒空之幻 莫怖莫驚除六情



翻案四首

  そらのはな

空に咲く花の香りと花のいろ散らず実らずうつろひやまず

蒼穹はうごきなくしてきよらけし雲はかそけく濁りを残す

なにもなきそらを栖に生きたきを城に迷ひてたちまち牢  *栖:すみか 牢:ひとや

毒も魔もまぼろしなれば怖るるなsensorの角折りてやすらへ *角:つの




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十喩詩 8 みづのあわ

2020-04-25 | 日記
空海「十喩詩」より

   八 詠如泡喩

  天雨濛濛天上来 水泡種種水中開
  乍生乍滅不離水 求自求他自業裁
  即心變化不思議 心佛作之莫恠猜
  萬法自心本一體 不知此義尤可哀



翻案四首

  みづのあわ

ふる雨はこれ泡の種子水の面の浮き世に咲いて散りゆくならひ

かつ結びかつ消え泡はきりもなく水の子どものいたづらをする

ここに消えかしこにむすぶまぼろしをかかげて運ぶ水の泡粒

天涯は果てなし底なし憂ひなしきみも宇宙われも宇宙   *宇宙:コスモス




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十喩詩 7 みづのつき

2020-04-11 | 日記
空海「十喩詩」より

   七 詠水月喩

  桂影團團寥廓飛 千河萬器各分暉
  法身寂寂大空住 諸趣衆生互入帰
  水中圓鏡是偽物 身上吾我亦復非
  如如不動為人説 兼著如来大悲衣



翻案四首

  みづのつき


月が飛ぶ星の数ほど月が飛ぶ人の数だけ光がこぼる

月来たりこころの器満たすまでひとつひとつに光を注ぐ

掬へずよ水面に映る月影もわが身に宿るわれなるものも

おほぞらに包まれてをり大いなるこころの衣もて抱かれをり



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十喩詩 6 ひびき

2020-04-05 | 日記
空海「十喩詩」より

   六 詠響喩

  口中峡谷空堂裏 風氣相撃聲響起
  若愚若智聴不同 或嗔或喜匪相似
  因縁尋覓曾無性 不生不滅無終始
  安住一心無分別 内風外風誑吾耳


翻案四首

  ひびき


うつろより声こそ生るれうつろとは風と風とがあひあふところ *生:あ

悲のやうな喜のやうな哀のやうなり風にもとより色はなけれど

はじまりも終はりもなくて突き抜けてゆく風突き抜けてゐる響き

うちそとを風はうそぶきたゆたへど耳を翼にして飛ぶなかれ



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