音信

小池純代の手帖から

日々の微々 231128

2023-11-28 | 歌帖
  231128



  ・立春三首・

     東風解凍*はるかぜこほりをとく

  いいことがやがて来ますと風は告ぐここでしばらく待たうとおもふ


     黄鶯睍睆*うぐひすなく

  梅の花うぐひすのこゑゆるい風なんのちからももたない同士


     魚上氷*うをこほりをいづる

  うすごほり浮き名うたかた魚の影なつかしびとの噂幾許
                             幾許:いくばく












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日々の微々 231122

2023-11-22 | 歌帖
  231122



  ・大寒三首・

     款冬華*ふきのはなさく

  うす雪の衣さむざむとフキノトウ疾く摘まれませほろにがの皇子
       衣:きぬ         疾:と           皇子:みこ



     水沢腹堅*さはみづこほりつめる

  とどろきのとどまりがたき沢の水凝れば永久と見紛ふばかり
                    凝:こご  永久:とは



     鶏始乳*にはとりはじめてとやにつく

  鳥屋へ鳥屋へかつてわたしが棄てた鳥屋それはわたしを棄て去つた鳥屋
   鳥屋:とや









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日々の微々 231119

2023-11-19 | 歌帖
  231119



  ・小寒三首・

     芹乃栄*せりすなはちさかふ

  しんそこにつめたき水の束の群れうすらひの束沢芹の束


     水泉動*しみづあたたかをふくむ

  ややややにやうやく動く水のふちあたたかなものもしやいきもの


     雉始雊*きじはじめてなく

  またえらく派手なしだり尾雄の雉子恋に啼き死ぬはじめの一羽
                 雄:を 雉子:きぎす
    


                       






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日々の微々 231107

2023-11-07 | 歌帖
  231107


二十四節気から気随気儘に名前を借りて

  *小雪*に寄す

  なつかしい家でわたしの死がねむるさめやらぬゆめふりやまぬゆき


  たちのぼるけむりゆるゆる流文字雪より小さき王国の文字
                 流文字:ながれもじ
 

  香煙は霊のたべものとふ伝のどこからほんとどこまでほんと
   香煙:かうえん      伝:でん
    


                       






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日々の微々 231104

2023-11-04 | 歌帖
  231104



  ・冬至三首・

     乃東生*なつかれくさしやうず

  夏に枯れ冬に生まるる靫草たくらみ巧きつはものの裔


     麋角解*おほしかのつのおつる

  まぼろしのおほしかの角まぼろしのゆきはらにつと刺さりうづもる


     雪下出麦*ゆきわたりてむぎいづる

  雪のはらなにを匿ふ雪のはら麦のほさきの青を匿ふ



                       






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