読書の森

哀しきバレンタインデー その3



紗南ははっきりとした説明をしなかった。
そこで「実沢大という男が紗南を苦しめてこんなにした」という形で靖は理解した。
元気で綺麗だった紗南と並んでる実沢の写真も見た。

その瞬間、靖にとって、手の届かない大人のイケメンの顏を滅茶滅茶に崩してやりたい衝動に駆られたのである。
紗南の通う大学は有名校である。
靖はエリートの学生が憎かった。
連絡がない彼女を誰も心配しないのかと一人憤った。

怒りながらも靖は紗南の事が案じられてならない。
「お姉さん病院へ行った?」
と聞く。
「一度行ったけど、薬が合わなくて。眠剤呑むと気持ち悪い」
紗南は面倒くさそうに言って、そのまま横になった。
横になったまま口を利かない。
目は虚空に向けられていた。

靖が以前見た紗南の部屋は清潔感のある娘らしい部屋だった。
すっかり荒んでしまった部屋に切ない気持ちの靖はいた。
口を利かない紗南に心を残し、手持ちのキャラメルを部屋に置いて、靖は紗南の部屋を出た。
そしてそれが紗南との別れとなった。

程なくして、連絡しても返事のない娘を心配した両親と一緒に、紗南は実家に帰った。
そして、その夏の夜に川に飛び込んで自死したのである。



紗南の死を知った時、靖は怒りに燃えた。
幼い自分にとって女神の様な人をズタズタに壊され、しかも死に追いやった男が憎かった。

その怒りを勉強に向けたのである。
元々良かった成績はトップクラスになった。
何も知らない両親は喜んだ。
まだ子供の内に靖を一流校へ入れようと相談していた。
その方が将来彼にとって楽な道が開けると思ったのである。

決して親に紗南への想いを知られてはならない。
勉強をする事はある目的の為でもある。
彼には子供とは思えない周到な計画があった。

それが実沢大を殺す事だった。
子供が大人をそう容易く殺せるものではない。
しかし、彼の想いは意外な形で遂げられたのである。


^_^
同じ事ばかり言いますが、これは全てフィクションであります。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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