心ならずも、猛暑を避けて引きこもりの日々。
アメリカンチェリーをやけ食いしていた時に浮かんだ、涼しい思い出があります。
夏休みの信州学生村です。
クーラーもない1960年当時、「夏は涼しい信州でお勉強を」と地元で始めた安価な民宿です。
一泊三食付きで1000円したかしないかでした。
この広告を新聞で読んだ私が飛びついたのです。
1964年から三年間、私は島崎藤村の詩で有名な小諸の山奥の学生村にいつも二週間ほど滞在していました。
その宮坂さん(一帯に全て宮坂姓です)の家の縁側から見た夜空の星のように、キラキラした思い出でした。
小諸駅からおんぼろバスにガタゴト揺られて30分ほど、民宿のあった天池下はとても涼しい所でした。
クーラーも扇風機も無くても、天然自然の澄んだ空気がありました。
6畳位の部屋は襖でしきり、二人で勉強してました。
トイレは戸外にある和式、昔の汲み取りです。
お風呂は五右衛門風呂、男女共用だったんです。
民宿のお爺さんとお婆さんはとても優しく、食事など工夫して作ってくれましたが、買い物に不自由な山の中で滅多に肉や魚がそのまま出る事はありませんでした。
鳴門巻きと卵とグリンピースの入ったチャーハンをお婆さんは一つ一つ丸い型に抜いて、皆を喜ばせようとしていたのです。
涼しくて、頭も涼やかになる筈でしたが、学生村に全国各地から集った学生たちは、勉強よりも課外学習(?)に夢中でした。
宮坂家の畑のトマトをもいだり、林檎の木に登ったりと子供のようでした。
村で催す夏祭りは、タイムスリップしたような鄙びたものです。
とっぷり蒼い小諸の夜に、皆で星を観に出かけたこともあります。
写真は、林檎の木の下で記念撮影したものです。
ホントに懐かしい思い出ですが、大量の虫の出現にはギョッとしました。
せめて、夜勉強しようと電球のスイッチを入れると、喜んだこぶし大ほどの蛾が窓から飛び込んでくるのです。
お陰様で今でも虫にはとても強いです。
高校3年から大学2年まで、嘘みたいな自然に囲まれた夏の思い出です。
信州学生村は1990年に廃止されました。
時代の流れなのですが、寂しい気がします。