あれから、どれほどの年月がたったのか、悦子は考えたくない。
ただ、今明に会いたくて仕方ない。
東京の大学を卒業し、職場の同僚と結婚して、子どもが出来ないままに離婚した。
夫の存在がどこか上の空で共稼ぎを続け、「愛する人が出来たから離婚して
れ」と夫に言われた。
潔すぎるほどサッパリと別れた時、女一人で生きる困難さを知った。
生きるためにガムシャラに働いて、やっと今定年を迎えたのである。
どっと疲れが出たようだった。
体調が酷く悪くなり、医者にかかって癌と分かった。
青天の霹靂のような宣告に、悦子は人生の虚しさを感じた。
その時、突然明に会いたくなった。
子どものように待てしばしのない感情だった。
それから、悦子は自分が出来るあらゆる手を尽くして、明の消息を追った。
佐藤明なんて何処にでもある名前だった。探し疲れた悦子の耳にかっての新聞部の仲間から情報が入った。
明は故郷に戻っていると言う。
ご丁寧に住所まで教えてくれた。
悦子は、旅行カバン一つで故郷に帰る旅に出た。
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