小学校での朝の読み聞かせ時間は約10分。
子ども達が時間までに揃えば余裕もあるが、
大抵は10分には満たない。
なので、内容を丸々紹介できる本と言えば
その数は、かなり限られてくる。
私たちの朝のお話の会では、
それぞれが選んだ本を、
それぞれの方法で読み、
紹介している。
私が最近注目するブックトークは、
10分という時間では読み切れない本の紹介を
なんとかその時間内に出来る方法の一つである。
時間制限に間に合う本と言えば、
今まではほとんど絵本に限られていたような気がする。
絵本自体が好きで、
絵本そのものの文化を楽しんでいる人間だけど、
おはなし会に紹介する本には、
やっぱり違う視点が加わり、
絵本以外の児童書も是非子ども達に紹介したいと
常々思っている。
今回、図書館で選んできた2冊の本は、
高学年向けにブックトークの方法で部分的に読み、
紹介しようと思って見つけてきたのだけど、
意外に私自身がその内容にはまってしまった。
このうちの一冊は、
最近「だいじょうぶ3組」という映画も上映された、
乙武洋匡氏の『オトタケ先生の3つの授業』。
子ども達が「学びたい」と感じられる授業を目指して、
乙武氏が実際に行った3つの授業の記録なのだけど、
子どもにわかりやすい文章とリアルな子ども達の声が
3つの授業を本の中に鮮やかに再現している。
子ども達に、こういう内容を一緒に考えて行きたいと
私も強く共感した本だ。
もう一冊は『Two Trains』という、
小学校5、6年生の女の子の友達関係やその周辺を描いた短編集。
短編と言っても10分で読むのはムリだが、
内容を紹介していくことは出来そうな長さだ。
なにより、私はここに書かれてある
多感な時期の少女たちの心の擦れ違いと
それを乗り越えてつながっていく姿を伝えたいと思っている。
実はその姿は、私の周辺の大人の女性たちに
重なるところがあるからだ。
それぞれの願いや希望は同じ方向を向いているのに、
ちょっとした言葉の捉え方の違いや
それぞれの感性の違いから生まれる、心の擦れ違い。
日本人は兎角言葉をあいまいに使いがちだが、
気遣いという点では美しく見えるかもしれないが
オブラートで包み過ぎて見えない気持ちは誤解を生みやすい。
女性は特に感情豊かに表現し合うのだけれど、
その言葉の意味するところに共通のものがなければ、
つまり、会話において相互理解という観点が抜けていると、
言葉で傷つくことが多いのだ。
自分とは違うもの同士を理解し合うことがどれほど大変かは、
どれだけ歳を重ねてもつくづく感じることだ。
それほど、人間関係とは難しいものだし、
だからと言って生きていく上で避けては通れないもの。
大人の人間関係についてを伝えるつもりはさらさらないけれど、
子どもながらに人間関係に悩む思春期の子ども達へ、
少なからず知恵と力を与えてくれる本に出合ってほしいと切に思う。
本の中には決して正答があるわけでなく、
子ども達がそれと全く同じ経験をするとは限らないけれど、
壁にぶつかった時に、何とか自分の力で上を向けるきっかけを、
本を通じて心の中に持っていてほしいと願っている。
私は今回借りてきたこの2冊の本から、
今更ながらそういうものを得ることができたと思う。
人とのつがなりが希薄になりがちな時代だから、
大人の実用書の中にも人間関係云々をうたい文句にしたものは星の数ほどある。
それなのに、私にはこの子どもの生活が舞台になったいくつかの人間模様の方が、
ストンと胸に落ちて、ジワリとしみていったのだ。
だから、きっと、
子ども達の心にも何かを残してくれる
この2冊はそんな本なのだと思う。
さて、私はどんなふうにこれらの本を
子ども達にブックトークするのだろう。。。
それもまた楽しみだ。