僕が予備校時代にお世話になった先生は今でも気なるもので。といっても、基本的に富田一彦先生と西谷昇二先生の2人ですが。
英語に関しては、僕は富田先生からの影響が大きいのですが、人間として気になる存在なのは西谷先生なんですよね。
先生が10代の頃、「西谷は神童だ」と言われてのぼせていた自信たっぷりの天才発言と、「20代は定職に就かずダラダラと酒を飲み続けた」という、男の弱さ的な発言の双方を交えた雑談や、テキストに散りばめられたエピソードを読むにつけ、この人はひねくれている部分も正直にさらす素直な人だと、私は好感を持っていました。シカオちゃんの歌詞に共感していることと少し共通項があるかもしれません。
そんな先生は、僕が大学に入った後に参考書を初めて出版し、その後数年かけて増えていきましたが、僕は、勉強するしないにかかわらず買ってしまい、新しい本が出ているかどうかチェックしに、時々書店の参考書コーナーに行ったりもしていました。
ところが、ある時に先生の参考書が書店からパッタリ消えてしまったのです。
私の年下のいとこが受講した時のテキストを見せてもらったら、過去のテキストのレイアウトとは違う部分もあったので、内容を改善したりインターフェイスで変化をつけようとしているのかな? と思い、しばらく経てば新しい本が出ると思っていました。
でも、新しい本が出る気配はなく、気になってネットで検索したら、リアルタイムで受講している生徒さんの書き込みで、奥さんや息子さんに関する記述がほとんど無いことに違和感をおぼえました。先生の幸せな家庭環境に言及しているのは、90年代に代ゼミに通っていた人たちの回想ばかりです。
「もしかして・・・離婚されたのでは?」と思ったのがその時。というのも、出版していた参考書には、表紙や裏表紙で家族に関係する写真やイラストが使われていたし、当然中身でもエピソードを綴っていますから、部分的修正では済まされないくらいその部分は大きく、離婚となれば、そのまま売り続けるわけにいかないことは明らかです。
その後、先生が早稲田で講演会(2005年のはず)をするということになり、受講した方の書き込みに、「離婚した」という記述を見つけ、やはり・・・と。
今では参考書ではない本を出版して、その中で離婚について触れていますし、授業でも公にしているらしいので、知っている人は知っていますが、90年代に代ゼミに通っていた元受講生はびっくりするでしょうね。
西谷先生の話で一番よく覚えているのがこれ。
息子さんが幼稚園で友達に殴られたと聞いて、先生は「なんで殴り返さないんだ?」と疑問に思ったらしいですが、よくよく聞いてみると、息子さんはどうも「殴り返す」という術を知らなかったらしいのです。知らなかったというより、その気もなかったというのが正しいのかもしれませんが。
この話を聞いた時、キリスト教での「右の頬を殴られたら 左の頬も差し出しなさい」という言葉が浮かんできました。先生はICU卒ですから、何かしら影響でもあったのだろうか、なんて。
こんな、育ちの良さがにじみ出た息子さん。その後のことは分かりませんが、離婚にあたっては先生と元奥さんとの双方でいろんなことがあったのでしょう。ここはあまり詮索したくありません。
複雑な出自、後に明かされた2度の結婚と離婚、その人間模様は実に奇なり。西谷先生に憧れていたことは、今でも自分自身で肯定していますし、色々と言われようとカッコいい生き方をされていると思います。