「BILLIE JEAN」「THRILLER」「BAD」はVoが入っているので除外。間違いなく使えそうだったのは「MAN IN THE MIRROR」と「DIRTY DIANA」の2曲ということで、数日おきに何回か流してもらいました。初めて流した日は再生をストップすることを忘れて「ANOTHER PART OF ME」が流れてしまい、ド頭とキメのオーケストラヒットが派手だったせいか、担当の先生の基準を超えたらしく、職員室から放送室に「うるさい!」と駆け込みで怒鳴られたそうです。ごめんなさい。
いわゆる「 Big in Japan 」と呼ばれ、とりわけ日本で人気が出たアーティストって、ルックスだったり、時の悪戯だったり、様々な要素がある中でも、私は「声質」っていうことを重視しています。
Big in Japanのアーティストを書き連ねるだけではこのブログの価値はないので、カテゴリーから若干外れつつも、なかなか表現しにくい声の魅力を、できる限り比較対象を設定しながら書いてみたいと思います。時に怒られそうなフレーズも飛び出しますがご容赦を。
Big in Japanでイメージしやすいのは「Bon Jovi」。当時友達とは、その音楽性や見た目から「Europe」と比較して、「ジョーイ・テンペストの方が歌上手くないか?」なんて笑いながら言い合っていたこともありましたが、その実、ジョン・ボン・ジョヴィの声の魅力は当然ながら認識していて、カウントダウンライブを観に行くほどのファンでした。
私は過去に「Take it Easy」をコピーしたことがあり、曲も好きだし、歌詞も覚えたし、グレン・フライの歌唱も嫌いじゃないです。でもね、カントリーの影響が色濃いイーグルスが、アメリカのみならず世界的、もちろん日本でも人気があるということは、相当な割合でドン・ヘンリーの声質、その印象深さが人気に寄与していることは間違いないと思うんです。
で、Wikipediaに載っていたSmall in Japanで、ジェームス・ブラウンが挙げられていたのはちょっと驚きました。意外性というよりも、納得感も含んで。
James Brownは、僕はマイケルのファンであるからして、その源流となっているアーティストとしてそりゃ好きです。声質も強烈だし、カリスマ感が半端ではない。だから、Smallか…?という疑問がありつつも、展開の少ないワンコード、せいぜい2コードのファンクでは、日本でポピュラリティを獲得することはかなり困難だという事実も分かる。これは声質ではなく、あくまでも曲の展開面で日本では受け入れられなかったということに他ならないと思います。
インパクト絶大のメロディと声質。僕も大好きだし、世界的にも人気バンドでしたが、これまでの長い人生の中で、メンアットワークのことを他の人と話をした経験が一度もありません。つまり話題に上がらない。実際はアルバムがオリコン洋楽チャートを席巻したこともあるので、必ずしもSmall in Japanではないのかもしれないけど、たぶんその時だけだったんじゃないかな。
じゃあ、結局お前は誰の声が好きなんだ?と聞かれれば、ジョージ・マイケルと70年代のフレディ・マーキュリーなんです。どちらもゲイでしたが、それはさておき、Queenはもちろん「Big in Japan」。その人気はフレディの声質による部分も相当あったと思います。
QUEEN - In The Lap Of The Gods... Revisited
George Michael - Kissing a Fool
フレディは、70年代限定。80年代の野太く力強い声がどうしても苦手です。これは説明しにくいな~。
ジョージ・マイケルは、歌声に関しては晩年まで変わらず好きでした。特に「Kissing a Fool」と「Cowboys and Angels」のウィスパー系の歌声が大好き。ソロになってからはWham!時代のハイトーンが出せなくなり、Keyは下げずにフェイクで歌うことが増えましたが、それはライブの時にフレディがしていた手法と同じ。かなり参考にしていたんじゃないかと推測しています。
そもそもこの曲に限らず、アルバムの歌詞カードに間違いが多いことは洋楽ファンならとっくに承知していることですし、他の曲に関しては違いがあってもさほど気にしませんが、ACROSS THE UNIVERSEに関しては、その詩を「最高傑作」と称し、様々な訳を一生懸命考えている方がいるにもかかわらず、歌詞表記の違いに関しては、その箇所を単に紹介するだけだったり、明確に指摘せず曖昧に終わっていたり、納得のいく指摘が見当たらなかったので、だったら自分で検証してみようと思ったのがこのブログを書くきっかけでした。ある程度細かいのはこの知恵袋でしょうか。全部じゃないんですけど。
この曲に関しても同じように取り組みましたが、いきなり「They slither while they pass they slip away」でつまづきました。頭の中は「???」。いったん練習をやめて、手元にある歌詞カードと詩集、ネットの情報をかき集め、ヘッドフォンで「...NAKED」のVersionを繰り返し聞きながら、納得できる歌詞を見つけることにしました。そのたどり着いた結果を記します。
全ての歌詞を書くのは権利上問題がありそうですし、表記の違いが明らかな箇所を中心に書きますので、気になっている方の参考になれば幸いです。…これは、原曲に忠実に歌おうと思った結果から来た私的な指摘です。ご批判もお寄せいただけたら嬉しいです。なお、いくつかバージョンの違いはありますが、歌詞をきちんと聴き取れるよう、音源は「LET IT BE…NAKED」のバージョンにフォーカスしています。「LET IT BE」のバージョンは「…NAKED」の録音をアレンジしたものなので。この「LET IT BE」バージョン(青盤収録もそう)のテープスピードを落とすやり方が良くも悪くも影響したのか、歌詞は聞き取りにくいです。このアレンジが歌詞の謎を生んでしまったのかもしれないと思うと、フィル・スペクターは罪深い男かもしれません。
この記事を書くにあたり、手元に歌詞カード、詩集とバンドスコアを用意しました。CD付属の歌詞カードはThe Beatlesの「1967-1970(青盤)」と「LET IT BE…NAKED」、David Bowieの「YOUNG AMERICANS」。それとソニーミュージックパブリッシングとシンコーミュージックによる「ビートルズ全詩集(改訂版)」、更にヤマハミュージックメディアが日本語版を手掛けた「[完全版]ビートルズ全曲歌詞集」。バンドスコアはソニーとシンコーによる青盤(2002年初版物)。
結論を先に言います。ACROSS THE UNIVERSEは、「[完全版]ビートルズ全曲歌詞集」に掲載されている歌詞が正しいと思います。ネットに書いてある歌詞は数が多すぎるのでここでの紹介は割愛し、主に「ビートルズ全詩集(改訂版)」(以後「全詩集」)、「[完全版]ビートルズ全曲歌詞集」(以後「全曲歌詞集」)を対比して、時に他の歌詞カードを参考にしながら個別に見ていきます。
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「全詩集」 They slither while they pass they slip away(?)
先述しましたが、まず気になったのがここです。バンドスコアもこの表記。「while they」というのが聴こえている言葉とまず違う。さらに「they pass they slip~」と続くのは、文法の範疇では測れない歌詞の世界とはいえ、富田チルドレン(自称)としては看過できない強烈な違和感。意味としても、「全詩集」では「いつしか通り過ぎ」と「while they pass they slip away」をまとめてしまっていることに合点がいきません。Theyは冒頭のWordsを指しているでしょうし、紙コップに流れ込んだ言葉たちが溢れ出る様子を比喩として表現しているのであれば、slither とslip awayを使えば、passという動詞はこの場に必要ない。よく聴けば以下であると思います。
「全曲歌詞集」
They slither wildly as they slip away(!)
ちなみに、「wildly as」は青盤とヤングアメリカンズの歌詞カードもそう。しかしネイキッドとバンドスコアでは「while they pass」でした。一項目としては取り上げませんが、ネイキッドとバンドスコアは、その後にある「my opened mind」を「my open mind」と書いています。少し残念。聴けばopenedであることはすぐに気が付くと思うのですが。
単純に「ライフに聴こえる」で終わってしまいそうですが、その前に対比として「Sounds of laughter」があり、その二つをまとめて「are ringing~」と続きます。つまり「Sounds of laughter」と「shades of ウンボボ」は、意味は反対であっても比較可能な同種でないと成り立ちません。それが「笑い声」と「地球の影」では対象として薄い。人間社会での明るさを表す笑い声だったら、客観的、物理的事実ではなく主観的な暗さが来てほしい。なら「暮らしにおける(人生の)影」という意味が対比になって良いんじゃないでしょうか。この意味だと「LOVE」も捨てたもんじゃないですが、聴こえるのは「Life」でしょうよ。
ちょっと言いにくいですが、このあたり、日本のトップシンガーで英語もネイティブ並みな方も「earth」でカバーしてましたね。「while they pass」もそうだったかな…。YouTubeで見られます。たぶんメロを知ってるから目の前にあった歌詞を信じていたんでしょう。もしくは…NAKEDのバージョンではなく、聴き取りにくい「LET IT BE」バージョンを参考にしたのでしょうか。ちなみにアコギ2本で演奏していたので、Keyは変えていますが形とするとネイキッドにかなり近いです。
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「全詩集」 my opened views(?)
「全曲歌詞集」 my opened ears(!)
これもよく聴くと「views」ではなく「ears」だと思いますが、意味としては、全詩集ではare ringingを含め「僕の開かれた視野に鳴り響いて」と訳されています。悪いとは言いませんが、その後の「inciting and inviting me」まで考えると、耳に鳴り響いて僕を誘うという内容が良いんじゃないかと思います。ちなみに「inciting and inviting me」は、「inviting and inciting me」と前後が逆になっているものもあるようです。正しくは「inciting and inviting me」です。
ということで、ACROSS THE UNIVERSEだけを研究した結果、「全曲歌詞集」が信頼できるという結論に達しました。ただ、これを買うのにはためらいもありました。5,000円+税ですし、目的はACROSS THE UNIVERSEの歌詞だけ。それでも買って良かったと思います。ここに至るまで、ネットも見たり、ビートルズに関するいろんな本やムックを読んで、歌詞の表記に関する何かの手掛かりをつかむための調査もしていましたが、残念ながら有力な情報を探し出せなかったので、もはや自分が「こう聴こえる」と思っている歌詞が形になっている「紙」「出版物」が欲しかったんです。そうしないとモヤモヤが晴れない。一番近かったのがヤングアメリカンズの歌詞カードという、不思議に感じるけどある程度根拠のある情報を経て、最終的に最も豪華な本で一致点を見いだせたのは自然だったというか、必然だったというか、そう思いたいです。
こんなことを長々と書いてしまって…最後まで読んでもらえる人は、本当にACROSS THE UNIVERSEの歌詞に興味がある方だけでしょう。ご意見をいただければ幸いです。