今日は世界一有名なドナルド君の話である。と言っても、合衆国大統領への返り咲きを狙うトランプのことではない。トランプなんか目じゃない。もし子供にも選挙権があったら、圧倒的な大差でぶっちぎるであろうドナルド=マクドナルド君のことだ。関東ではマック、関西ではマクドと称されることが多いあのハンバーガー店のマスコットである。日本から出国するとロナルド君になるらしいが、そこは大目に見ていただきたい。
さて、このハンバーガー店だが、クラスメイトだったたまちゃんに言わせると、タイでは日本にないメニュー(例えばガパオライスとか練乳を付けて食べる揚げパン「パートンコー」など)があって、とても面白いのだそうだ。だがそれよりも、店の前に立つドナルド君がタイの伝統的な挨拶であるワイのポーズをしていることの方が、カロリーを気にする私にはずっと興味深い。恐らく、ワイをしているドナルド君は、日本には一人もいないだろう。
ワイはただ手のひらを合わせればいいというものではない。少しばかりふくらみを持たせるのが美しいとされている。また、相手に応じて、やり方を変えるのも特徴の一つ。相手を敬う度合いによって、親指の位置(手の高さ)が顎、鼻、額等に変化するのだ。正しく美しいワイができるよう、タイの子供たちは、学校でみっちりワイの仕方を教わると言う。従って、いくらタイをリスペクトしていても、外国人が見よう見まねですると、おかしなワイになってしまう。また、ワイは基本的に年下の人が年上の人に対してするものなので、私のような年寄りはあたり構わずワイをするものではないとされる。
ある日の朝、チュラ大タイ語講座の職員室に宿題を提出しに行ったら、担任の若いアーン先生と目が合ったので、「サワディークラップ」(おはようございます)と言って、顎の位置でワイをしたら、先生もにこやかに「サワディカー」とワイを返してくれたのだが、横にいたこれまた担任のワンラパー先生から指導が入った。
「貴方は歳上なんだから、自分からワイをしてはいけないわ。」
「でも先生、僕は生徒なんですけど。」
「先生か生徒かは関係ないの。貴方はアーン先生より遥かに年長なんだから、ワイをされるまで待っていればいいのよ。わかる?」
そして、ワンラパー先生はニヤッと微笑みながら最後に付け加えた。
「あなたからワイをしていいのは、この部屋の中では私だけよ。」と。
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