父も母も衰えが激しい毎日。
肉体が衰えるのは寂しいですが、精神が衰えて行くのを見ているのは、もっと悲しいかも。
頭が衰えるだけではないのです。精神が衰え、崩れて行くのです。
うちの母は、まあ、もともと子どもより自分が第一の人だったので、アレですが…
子どものころは私を慈しみ、気にかけてくれていた父が、脳の衰えとともにどんどん自己中心的になり…
我が子を思いやる余地が、頭の中から失われて行くのを見るのは寂しいものです。
病院や歯医者の予約ひとつとっても、私の予定は急にキャンセルさせて、自分の予定を優先してもらいたがる。
仕方ないです。人間の精神も、脳やその他の身体(はら、とか、ほね)に宿っているものであり…
それが縮み、壊れて行くのと共に、精神も縮み、壊れて行くのです。
何度もこのブログでも触れた通り…
人生の始まりを支える育児と、人生の終わりを支える老人介護は、全く違う体験です。
肉体的にも、精神的にも、よりきついのは、老人介護の方です。
何よりも、赤ちゃんは軽い。老人は、重い。それだけでも、世話をする際に使う体力は全然違います。
おもらしすると言っても、哺乳している赤ちゃんのうんちはあまり臭くないし、見た目きれいです。
離乳食が始まるにしたがって、徐々に臭く汚くなって行きますけれど。
一方、老人のうんちは、要するに大人のうんちですから、ものすごく臭いし、見た目も汚いのです。
下の世話ひとつとっても、赤ちゃんより老人相手では、全然違います。
そして、赤ちゃんはどんどん大きくなって、しっかりして来て、手がかからなくなってきます。
一方お年寄りはどんどん小さくなって、力が抜けて行き、ますます手がかかるようになります。
赤ちゃんは成長し、物がわかるようになり、親を気遣ってくれるようになり、最後は立派な大人になります。
それは、上昇する曲線です。達成感のある、希望に満ちた仕事です。
お年寄りは衰えて、物がわからないようになり、子を気遣えなくなって、最後は死別することになるのです。
それは、下降する曲線です。喪失感のある、かなり悲しい仕事です。
でも、どちらもとても大切な、重要な仕事です。子育て、看取り、人生の始まりと終わりを支える行為。
それなのに、長い間それは「当たり前の仕事」として、やったことのない人たちから、軽視されてきました。
日本の「伝統的家庭観」にのっとれば「嫁がやる」やって当たり前、できて当たり前の仕事だったのです。
こんなにきつくて大変で、しかも難しく、尊い仕事が、当たり前だなんて……
「もともと女がやる当たり前の仕事」だから、いま職業としてこれをやっている人は…
金銭的にも、労働条件的にも、あまりにも報われていなさすぎるのです。
やったことのない人間に、1日でも体験させてみれば「これは大変な、プロのスキルがいる仕事だ」とわかるはず。
あんな報酬では、とても合わないと納得するはず。
ところが社会の仕組みを作る「力のある」人々のほとんどが、これを体験しない。体験してみようとも思わない。
そういえば、あえて脱線しますが…
岸田総理が、菅氏に負けてしまった前の自民党総裁選のとき、テレビに出て来て…
流しで皿洗いする仕草をしながら「食器洗いはね、毎日私が担当してやってるんですよ」と笑顔で言ってました。
そのとき「ああ、このひとは嘘つきだな」と思ったんですよ。
なぜなら、洗い物をするのに、上等そうなワイシャツの袖もまくらず、高級時計をはめたままだったから。
一目で信用ならない人物だなと。そういう細かい所、見てる人はどのくらいいたのかな。
それはともかく。
そんな風だから世の中は変わらない。
こんなに難しく、きつくて、しかも尊い仕事が、いつまで経っても恵まれず…
従って、あえてやろうという人が少ないのです。
父がデイサービスに通っている施設でも、慢性的な人手不足の上に、改善されるどころか…
辞めて行く人ばかり多いので、残っている人はますます追い詰められています。
近い将来、少なくとも老人介護は、衰退する日本よりさらに貧しい国から来る外国人労働者か…
もしくはロボットにやってもらう以外、方法が無くなるのではないかと思います。
「ガイジン」も「ロボット」も、両方嫌い、というわがままな老人になってしまったら…
それこそ老後は真っ暗ですよ。
いや、きつくて汚くて報われない仕事でも、やるしか選択肢がない「日本人」を作り出すために…
「家族は助け合わねばならない」なんていう、およそ憲法の条文にふさわしくない「徳目」を改憲草案に入れて…
大変な仕事を、なるべく家族の無償労働に押し付けようとしているのでしょう。これは明白。
それでも、少子化がもはや止められない状況にあるのをわかっていて、家族だけではカバーし切れないから…
あえて今、庶民をいじめる政策をやって、貧しい「日本人」を増やしているのかもしれないな、なんて。
日本が貧しい国になってしまえば、低賃金できつくて汚い仕事に従事する人を…
他の国からわざわざ連れて来なくてもいいですから。
そうして格差を拡大し、一部の特権階級は、物質的な豊かさや心のゆとりを独占して、のうのうと暮らしたいと。
まさに鬼畜の政策ですね。
なーにが「愛国心」だよ!
その実は、自己愛と身内愛のかたまりなのを、ごまかすためじゃないか!
と暴言を吐いたところで、いったんこの記事は締めます。
すぐに、これを受けた記事をアップする予定です。では。