詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

余命宣告を受けた末期癌患者のノクターン

2025年02月26日 | 星へ、2021~


それは変わってゆくもので
最初
ピリオドの無い狂いそうなプレスティシモとフォルティティシモの無限クレシェンドに煽られ続け
憤怒や絶望や焦燥や無念や喪失や慚愧の6連符地獄が
嵐と
嵐と
嵐の激高の拳になって毎日毎日わたしを叩きのめし
秒により
分により
時間により
朝により昼により夜により
変わり続け打ち続け

そのうちに
チャイコフスキーの交響曲第6番4楽章の最後のフレーズに向かい
最後の一音に同化し
毎夜ベッドの中で自分を殺していた
安らかに至り
安堵の息と共に
死に続けていた

今は
たったひとつの
近年の推しと呼ばれるものの中での
自己満足
だけの為の
ノート11冊目を書いている
ノート11冊分の文字を書いてきた
大好きなキャラデザの精密な絵を描いている

ノクターンは
100パーセントの自己満足で満ち溢れ
100パーセントの自己満足は
100パーセントの幸せだ

たとえ営みの99パーセントが
我慢や
我慢や
我慢や
諦め
だとしても
残りたった1パーセントの中に
100パーセントのノクターンの瞑想と祈りへの
埋没がある

嬉しい

楽しい

愛しい

幸せや
笑み
がある

なのでノクターンは
昼の日常生活の中でも何一つ変わることなく流れ続けている

ノクターンはわたしを動かすものではない
ノクターンは
終始変わることなく
途切れることなく絶え間なく
わたしを夢の中に置いておくものなのだ

ノクターンの中でわたしは全てを忘れ
無になる
虚空の中で孤高になり
虚無の中で宇宙(そら)を見る

神なんぞは信ずるに足らず
事・物・生の、時の、全ては素粒子の一員として
暗黒の無に帰す

だからわたしは思い残すことなく
思う存分
ノクターンの幸福に
只只浸る
たった一つの
その中に
浸り切る
どこまでも深く
際限なく
浸り続ける

肉体を死神に侵食されつつも
わたしは自由だ

馬鹿
だけどね。


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