青草俳句会

草深昌子主宰の指導する句会でアミュー厚木での句会を主な活動としています。

「WEP俳句通信」114号

2020年03月01日 | トピックス
「WEP俳句通信」114号に草深昌子主宰の評論が掲載されました。

特集〈西池冬扇『高浜虚子・未来への触手』〉を読む
ウエップ社から昨年秋に刊行された西池冬扇『高浜虚子・未来への触手』をどう読んだか、について8人の方にお書きいただきました。 

 堀切実   「虚子の『非情の世界』の可能性」   
 岸本尚毅  「メタ虚子論」   
 草深昌子  「神は虚子を俳人にした」 
 前北かおる 「触手によって何が生み出されつつあるか」   
 角谷昌子  「無常』から摑む虚子の触手」 
 神田ひろみ 「茂野六花先生」  
 石寒太   「人間探究派からの読み方」   
 柳生正名  「虚子、脱ポストモダンへの触手」

   (WEP俳句通信114号2020年2月14日発行所収)  

『WEP俳句年鑑』2020

2020年03月01日 | トピックス
『WEP俳句年鑑』2020に「青草」主宰ならびに主宰推薦による同人6名の自選7句が掲載されました。

  雪の解けぐあひを隣近所かな   草深昌子
  黴の鍵かくも大きく書庫のもの
  夏芝の高きところの禿げてあり
  君が墓キリンビールで濡らしけり
  欄干を跳んで蛙や秋の風
  底紅に看板出して鍛冶屋かな
  たまに来てすつかり秋の道であり 

  初富士や峠に古き道しるべ   坂田金太郎
  冬紅葉托鉢僧の声低し
  嘴に青藻引つかけ残る鴨
  掛軸は武蔵贋作月今宵
  阿夫利嶺は我が守護神や下り鮎
  辛いとは言えへぬ吾なり秋の蝶
  つつがなく蝶の来てゐる冬籠花

  冷や人行くところ灯が点り   佐藤健成
  サーファーの若布絡めて上がり来る
  折り返し直ぐ来る電話あたたかし
  病窓の一つ一つに今日の月
  秋霖や捻れブランコそのままに
  手袋を投げ捨てここが勝負どこ
  子育てを終へて世に出る白日傘

  鳥雲に新幹線の自由席   佐藤昌緒
  ふるまひの美しきひと薄氷
  夏めくや富士しろじろとそこにあり
  春泥やおほき仔犬の歩きぶり
  雲切れてユングフラウに夏の月
  大氷河ふもとの村の百日草
  吾が袖に雪の六角とどまれる

  髭剃りの肌柔はらかや梅雨夕べ   間草蛙
  鉄橋の梅雨をロマンスカーの行く
  生垣を蝶の越ゆるや梅雨晴間
  めだか群れどれが親やら子どもやら
  河原町どの家にもある門火かな
  パン焼きて独りなるかや処暑の夜
  落鮎を釣る人影の濃くありぬ

  畑のもの畑で燃やすや雲は秋   二村結季
  福藁や花柄足袋のお母さん
  鍬初老いの手際のよかりけり
  蟻穴を出づる歳時記膝の上に
  端居して父の背中の黒光り
  蜩の夕べ小豆を洗ひをり
  初富士や田に起重機の寄せてあり

  皐月朔日令和元年鹿島立ち   松尾まつを
  枇杷の種舌に転がす三つ四つ
  夏木立石燈籠は五列なり
  霧深き木立の向かう女坂
  自著を手に燈火親しむ傘寿かな
  寒晴や花の模様のもの干して
  万緑や君とキスせむ丘の上

     (ウエップ発行「WEP俳句年鑑」2020所収)

青草新春句会(2020年)

2020年02月27日 | お知らせ
開催令和2年2月20日(木)午前10時~12時句会場・アミュー厚木502号室
懇親会・レンブラントホテル厚木 午後1時~午後3時

 主宰特選天賞
  もの言はぬ日も十日目や春の水  昌緒

 主宰特選地賞
  春ショール扇のやうな藻の揺れて  しょう子

 主宰特選人賞
  春寒や水鳥の羽舞ひ上がり  翠

 高得点賞
  釣る気などなくて釣人春の風  小径

 編集長賞
  かたかごの花や小雨の詩仙堂  千世

 同人会長賞
  さりさりと薄氷に来るかいつぶり  まさ一

 その他特選句
  春眠やたどりつけない夢ばかり  欣次

  雛菓子の一つ二つと増えてをり  一枝

  運河より海へ舵取り春夕焼け  しょう子

  まつさらな原稿用紙寒明くる  黎

  乗り継いで初めての町月朧  しょう子

  切株に座すればすぐに蝶寄り来  ちとせ

  花咲くや仕舞ひしままの車椅  健成

  蕗の芽のあと一週間は太らせよ  桂香

  かたかごの花や小雨の詩仙堂  千世

 主宰作品
  金塊のただつるつるの寝釈迦かな  昌子
  日輪に顔を曝して梅見かな  
  磐石につぐ磐石や梅見頃

        

青草本部句会(2月)

2020年02月27日 | 青草本部句会
令和2年2月14日(金)午後2時~5時句会場アミュー厚木608号室
  兼題「和布」席題「青」

 (以下特選句)
  若布干す縄新しく張つてをり   さとみ

  ひらひらの若布拾ふや由比ヶ浜   小径

  夢路ゆく若布ゆらゆら海の底   欣次

  若布売り手早く捌く皿秤    きなこ

  大福の甘さも丁度梅まつり  あき子

  春の野に座れば小さき子となれり  桂香

  二度寝して障子の白さ寒明くる  金太郎

  青空にけぢめつけたる花モミザ  あき子

  にいにいと駆け寄る妹や春の宵    美知江

  雲晴れて本部句会の午後の春  珠水

  ふらここの今てつぺんや丘の上   まさ一

  節分の空は真青の抜けにけり  草蛙

 主宰作品
  潮風の折々種を下ろしけり  昌子
  春宵の椿油の匂ひけり   
  大洋の和布干し場にひらけたり      

「青草俳句会」選後に(1月)

2020年02月27日 | 「青草句会」選後に
  あらたまの紅柿ひとつ鏡台に  伊藤欣次
 あらたまの年の「あらたま」は枕詞であるが、この「あらたま」を新年の意として用いたものであろう。
 あらたまの年の、の紅柿をポツンと一つ鏡台に置いたというのである。紅柿は、収穫のあとに実生りの祈りとして残しておいた木守柿であろうか、あるいは干し柿であろうか、いずれにしても読者はただ全き紅の色合いを思い浮かべるばかり。なぜなら、その置きどころが女の艶なるものを映し出す鏡台であるというからには美しいすがたに決まっている。
 作者はあたりをはらうかのように存在感を示す紅の一個がいとおしくてならないのである。あらたまの年のめでたさをこういう角度に見届けた心には何か秘めたるものの明るさが灯っているようである。

  初鴉羽をたたむにゆっくりと  山森小径
 お正月の季題はなべてその「めでたさ」を本情としている。
 初鴉もしかり。元日の早朝に聞く鴉の声は、神の使いのように思われもするのである。そんな初鴉の羽のたたみようもことのほかゆっくりと優雅であった。つまり作者もまた初鴉に気息を合わせるかのようにゆったりと目出度さを感受されているのである。

  嫁が君これぞ伊勢なる一刀彫  神﨑ひで子
 「嫁が君」とは正月三が日の鼠のこと。ちなみに、子(鼠)は干支の先頭に置かれているが、令和2年は子年である。古くから鼠は大黒様の使いとされてお正月にもてなす風習もあったというが、一般的には嫌われものとしての鼠であろう。
 嫁が君古人は心ひろかりし 富安風生
 なるほど鼠を嫁が君として歓迎するとは、人間の敬虔なる心の現れであろう。
 さて掲句の、伊勢の一刀彫とはまこと由緒あるものに違いない。家宝とも言えるものかもしれない。
 そんな大事なものにやってきた鼠はすでに目出度い、嫁が君は齧らんとして齧らざるというところであろう。いずれにしても作者の嫁が君に寄せる気持ちもまた古人同様にやさしいものとなっているのである。

  凧三田の田んぼに一つきり  東小薗まさ一
 三田は厚木市の東部にある町の名で、実際は三田(さんだ)と称するが、それを知らなければ大方の人は三田(みた)と読むであろう、そして字面から三つの田のあるところと印象するであろう。事実に即して「さんだのたんぼ」でもいいが、知らないままに「みたのたんぼ」と読んでもいい。
 むしろその方が字余りにならずに、すらっと読み下せていい。田んぼの上に広がった空を独占したかのような悠然たる凧(いかのぼり)が思われるものである。

  大年の大三角を仰ぎけり  平野 翠
 冬の大三角とか冬の大三角形というのは、オリオン座のペテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンという一等星で構成される三角形の星々、そこにはまた一角獣座も含まれるとか。
 星にくわしくないが、とにもかくにも冴え冴えと鮮やかに眺められるのは冬の夜空の星ではなかろうか。大晦日の大三角を仰ぎてやまない作者。その心に往来するものは何であったろうか。
 さまざまにして一切は星のきらめきに吸われていったことであろう。今年はいい年であったという清らかな思いに満たされるのである。

  連凧の一番上の強かりき  加藤洋洋
 「凧」は春の季題であるが、よく見かけるのはお正月である。凧揚げというのは本来との競技で相手の凧の糸を切り合う凧合戦であるというが、子供のころからお正月の遊びとして馴染んでいるものでもある。
 連凧は一本の凧糸に沢山の凧を繋げて揚げるもの、これを揚げるのには相当の気合が要るのではないだろうか。掲句は「一番上の強かりき」と、まさに直截に言い切った。その力強さが「強かりき」そのものである。風をきって、風にあらがうさまも思われるものである。

  大根引く力士のやうな巨大もの  菊竹典祥
  一読凄いなと思う。力士のようなと言えばもう、巨大である。
 そこをまた畳みかけるように、いや何の気なしに「巨大もの」と言い切るあたりが何とも清々しい。新鮮な驚きがそのまま一句のリズムにのっている。俳句に手練れになってくると、こうは詠えない。青草俳句会最高齢の典祥さんならではの迫力に満ちていて、こんな大根にあやかりたい気持ちや切である。

  寒月や温泉津温泉下駄の音  河野きなこ
 温泉津温泉(ゆのつおんせん)の固有名詞でもって寒月が一層冴え冴えとする。湯治の人のものであろうか、聞こえるのはただゆったりとした下駄の音のみ。世界遺産である石見銀山の銀を積みだした港のある温泉街、そんなレトロな風情はいかばかりであろうか。
 訪れてみたいものである。

  寒の雨行き先待ちの救急車  漆谷たから
 席題に「寒の雨」が出ると、一息に仕上がった。丁度「青草」の新年句会に出向く途上に救急車に出くわしたというのだ。
 受け入れ先の病院がなかなか見つからぬとかで救急車の赤いライトが折からの寒の雨のなかを点滅するばかりであったのだろう。こういうところをも俳句にしようとする俳句初学の熱意に見習わねばならない。

  塵の無きテーマパークや寒雀  奥山きよ

  人住まぬ家の寒椿おびただし  石原虹子

  平袖の白き産着や冬うらら  松井あき子

  豆苗に薄き沙を張る冬囲  米林ひろ

  初針や緩き釦の付けなほし  加藤かづ乃

  天辺のこの座譲らぬ寒鴉  湯川桂香

  寒禽の声の高さや竹箒  佐藤昌緒

  吹き降りの雨を来たるや初句会  末澤みわ

  病院のエントランスは水仙花  黒田珠水

  大年に届く大鯛退院す  二村結季

  冬晴や最下位走る医学生  中原初雪

  ブティックの狭き間口や室の花  大山 黎

  谷根千を歩いて食うて年始め  木下野風

  図書館の新刊棚や日脚伸ぶ  森田ちとせ