広町公園から荻野川界隈
日下しょう子
荻野川ゆくやひたぶる荻のこゑ 昌子
平成三十年十月十六日、三十名が広町公園に集合、秋晴の荻野川界隈を思い思いに吟行した。公園には鬼胡桃、朴の木等の高木が生い茂り、湧水池には初鴨が数羽見られた。
手すさびにしたる椿の実の二つ 光子
数珠玉や水辺のここはまだ青き 一枝
公園を出て、荻野川の土手を上流に向かって歩く。荻野川は、まさに名の通り、荻や芒など荒草が茫々と枯れの兆しを見せている。
右岸には多くの稲架が掛けられ、遠く民家には柿紅葉が美しい。左岸には、高木にさまざまの蔦が絡んで這い上がっている。更に進むと牛舎が廃れたままひっそりと残されていた。
蜂をまへ蜂をうしろの稲架日和 昌子
溝蕎麦の小さき花に小さき蝶 桂香
牛小屋の荒れの久しき刈田道 きなこ
主宰選の特選句は次の通り
草踏めば飛蝗飛び出す瀬音かな さとみ
秋水や鯉ゆるやかに鯉を避け ちとせ
一木の半分だけに薄紅葉 しょう子
橋挟み瀬音異なる秋の川 ひで子
一句目は瀬音への転換が巧い。二句目はしみじみとした秋水の趣。三句目はよく観察している。四句目は静かに耳を澄まされたのだろう等、入選二十数句を含め明解なる主宰選評を頂いた。
毎日通る道も俳句の目を通して見ると、発見の連続であることをあらためて実感した。
写真提供 狗飼乾恵さん