主催 青草俳句会
日時 11月21日(木曜日)
14:00~15:00
会場 アミュー厚木504号室
講師 松尾まつを
演題 「俳句と仏教」
司会 草深昌子
多数のご来場をお待ち申し上げます。
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「青草」会員の日下しょう子さんの一句が、結社誌「炎環」に掲載されました。
俳誌拝読
虚と実の間へ 近 恵
木の芽張る狸の糞のひとところ 日下しょう子
「青草」2019年秋季号より。
木の根元近くに狸のため糞がある。
かなり臭い筈だ。しかしその上方に伸びた木の枝にはしっかりと張った木の芽が。
ユーモラス、かつ繊細な観察眼。
まるで狸の糞も栄養として木の芽が膨らんでいっているようである。
(『炎環』2019年11月号 所収)
「青草」同人坂田金太郎さんが掲載されました。
その一部を紹介いたします。
超結社句会・新12番勝負にゲストとして
「青草」同人の坂田金太郎さん、「都市」主宰の中西夕紀さん、「秀」同人の増山叔子さん、「晨」「梓」「棒」同人の水野晶子さん。
ホストは「玉藻」主宰の星野高士さん、「泉」主宰の藤本美和子さん。
以下、一部抜粋
掛軸は武蔵贋作月今宵 叔子・晶子・高士
高士 わたしからいいます。「武蔵贋作」って多いんでしょ。「贋作」 が人気あるのよ。作者は分からない。そんな謎めいたものが、この句にはある。満月に部屋に武蔵の贋作が飾ってある。「贋作」って知っていて普通は飾れませんよ(笑い)。「贋作」を堂々と飾っているというのは、誉れ高いですよ。わたしなんか虚子の「贋作」なんか恐くて飾れませんよ(笑い)。
晶子 「武蔵贋作月今宵」がいいなと。これが非常に著名な絵師の「贋作」だったらつまらないんだけど、「武蔵贋作」でそこに「月今宵」で、作者がご満悦な感じがいいなと。
叔子 全く同感です。欠けている月ではなくて、「月今宵」を置いてきたのが面白い。
美和子 採っていません。1句としては出来ているし、形もきれいなんだけど、何か芝居がかっている感じ。
叔子 なるほど。
美和子 見得を切っているような感じがしちゃって、ついていけなかったかな。
高士 やり過ぎ?
美和子 芝居がかり過ぎ、という感じを受けた。
高士 確かにそうだね(笑い)。
金太郎 漢字ばかり。ふんわりした感じの満月なのに、漢字ばかりで堅苦しいな、という感じはしました。
夕紀 わたしは予選では頂いたんです。最後にやめたのは「月今宵」が出来すぎているから。
高士 逆にいいと思ったけどね。「贋作」だから。
美和子 そこに作為を感じた。
高士 みんな演技が上手いね。どなた?
金太郎 金太郎。「月今宵」はやり過ぎかなという気はしたんです。「贋作」に対して、本物の月をこれでもかと、もってきたんです。
高士 ところで「武蔵贋作」は持っているんですか?
金太郎 妹のところにあるんです。
その他、下記のような句々についても、忌憚無き意見のやりとりが掲載されています。
けぶりをる堅田の雨や新松子 中西夕紀
いちじくを煮てをり母に詫びてをり 水野晶子
置石の一つは四角初嵐 星野高志
水甕の水飲む鳩や野分雲 藤本美和子
待宵や一人事務所の灯を消して 増山叔子
写経には無の字多しや今朝の秋 坂田金太郎
以上、坂田金太郎さんには、「青草」同人として大いに活躍されましたことをご報告いたします。
令和元年十月二十二日(火)、「即位の礼」の祝日、台風二十一号は温帯低気圧に変わったものの午前中、関東地方に激しい雨と風をもたらしました。気温は十一月相当の低さといわれました。折しもその中での中央句会開催となりましたが、熱意ある二十八名がうち揃い楽しくも有意義な句会となりました。
芭蕉記念館は、芭蕉ゆかりの地である江東区に位置し、その名の通り様々な資料が展示されていて近くには芭蕉稲荷人社があります。墨田川堤防沿いには芭蕉の句が掲げられています。しばらく行くと、芭蕉庵史跡展望庭園で、芭蕉像と句碑のそばには萩が咲いていました。
そして、小名木川にかかる万年橋を渡り、町中に入ります。高田川、錣山、尾車といった相撲部屋も皆ビルとなり、今は木の看板ばかりに相撲の情緒を留めています。
部屋の名に山また川や雁渡る 昌子
秋時雨江戸深川に来てをりぬ わこ
相撲部屋蔦の紅葉の初めかな さとみ
秋深むもんじや焼屋の赤提灯 小径
大川の観光船や秋時雨 あき子
この辺りから清澄庭園は間近です。祝日であるにもかかわらず、荒天のためか人影もまばらな庭園の、何処もたっぷり水を含んだ風情は、いつにも増して美しく、池の中の島の青鷺が雨に打たれてじっと立っているかと思うと、一方では若い鴨たちが元気いっぱいに水に戯れていました。木々はほとんどがまだ緑で一枝、二枝の先に紅葉が始まったばかり、滑りやすい石に気を取られ、寒さの中で震えながら、この景色に見とれました。
秋惜しむ雨の飛び石伝ひかな 昌子
色変えぬ松やはるかに即位礼 まつを
秋園の数寄屋百年屋根の艶 いづ
こぼれ萩雨に堰きつつ押されつつ ちとせ
石橋の青き縞目や秋の雨 きよ子
赤石の赤の際立つ秋黴雨 草蛙
この界隈には深川江戸資料館があり、江戸の町が再現展示されていて、時代小説のあれこれの名場面を彷彿とさせ、興味深いものでした。
深川や江戸の長屋の暮の秋 秀弥
頭陀袋下げて飯屋に火の恋し 園子
句会場は芭蕉記念館の研修室で窓から墨田川が望める、情趣溢れるお座敷でしたが、和室での句会は初めてでしたので、どうなりますことかと少し心配でしたが、この地に相応しい落ち着いた雰囲気の会となりました。
そして、句会の途中には一瞬日が差しこむこともあり、閉会の頃には完全に天候は回復しました。
大川に雨の上がりて柳散る 昌子
すつぽんの貌突き出すや初紅葉 光子
水嵩を増し、荒ぶる墨田川を眺め、風雨に煽られ、足元を濡らして歩いたことは、きっといつまでも、私達の心に刻まれることでしょう。〝雨の日は雨を愛そう、風の日は風を好もう〟という言葉で始まる詩がありますが、この日はその境地をはるかに超えていると思いました。これが、吟行の醍醐味というものでしょうか。
逆まきの隅田の流れ鴨渡る 金太郎
冷まじや鷗吹かれて波の上 昌緒
記事 佐藤昌緒