『リサちゃん…聞いてる?ね どうしたの?』
『あ…アンリ。ごめんなさい。ちびっとぼんやりしてしもて…』
『リサちゃんアルコール弱かったんだ(笑)ワインで酔った?』
アンリはあたしの事心配そうに見つめる。
ワインで酔ったわけやない。
気持の理由を上手く説明できないからと曖昧に笑い返したら
アンリは冷たい水を手配してくれた。
『はい どーぞ。』
手渡されたお水は 水道からジャーって出したものではなく
レモン水というおしゃれな飲み物。
綺麗なグラスとレモンの飾り
ほのかに香る柑橘系があたしの心を少し和ませてくれる。
『んー おいしっ 生き返るっ♪』
そう答えると静かにアンリが切り出す。
『リサ…今更言葉にしなくてもわかってくれてると思うんだけど…
ねぇ そろそろ本気でボクと付き合って欲しいんだ。結婚を前提として…』
『えっ?』
そんな予感してた。
けど まさかあたしがって思ってたし自惚れられるほどええ女でもない。
それに大谷がいてたから…
ただの冗談やっていつもはぐらかしてきた。
アンリは人柄もええし 同じ職種やからきっと仕事にも理解がある。
笑うと三日月になる目も優しそうやってずっと思ってた
だけどそれは異性としてやない。
同じ仕事してて尊敬出来る上司とか同志ううん 師匠と弟子みたいな関係。
いくらあたしに好意持ってくれてて優しくしてくれるといっても
大谷から目の前の人に乗り換えるなんて絶対できひん。
あたしの好きなのは大谷だけやもん。
外は 雨…。
降る雨は大阪でも東京でもフランスでも同じ…。
『ごめんなさい。アンリ…あたし…』
『あやまらないでボクあきらめないから』
『えっ?』
『ボクはリサを好きだよ。Je l'aime』
違う。あたしがスキって言ってほしいのはアンリやない。
あたしの欲しい声は 姿形は…
大谷。
ほんまにもう何もかも遅いん?
あたしがこの仕事やめてすべて放りなげて大谷の元に帰るのなら
ずっとずっと…そばにおれるの?
夢
やりたくない仕事やレールから脱線した自分
もう何がなんだかわからんくなってきてる。
目の前のこの手を取ったら すべて忘れられるん?
★★★
自分の気持ちに自信がなくて 話を聞いてほしくてのぶちゃんに電話してみた。
『もしもし…のぶちゃん あたし…。』
『あー小泉さん元気?』
のぶちゃんの携帯に出たのは中尾っち。のぶちゃん携帯忘れて買い物に出たらしい
ほんまにあの2人は仲ええなぁ(笑)
『うん 元気。中尾っちは?』
『元気元気…(笑)そうや小泉さん知ってる?大谷(ガー)結婚する(ガー)って…』
中尾っちの携帯が悪いのかあたしのが悪いのか雑音?
『結婚?結婚するって…』
『うん。なんや大学で知り合った人と8月にするらしいで…』
『そうなんや』
『しかも ここだけの話できちゃった結婚らしいねん。』
『で…できっ?』
『小泉さん結婚式が8月3日やけどこっちに帰って来れそうかなぁ?ってのぶちゃんが…』
『8月3日?』
『そう8月の3日。』
大谷が結婚する。
大学で知り合った子って川島さん?で できちゃった結婚。
そして結婚式があたしの誕生日ってなんの嫌がらせなん?
そんなにあの手袋の件が気にいらんかったん?
『中尾っちごめん。あたしきっと帰れんってのぶちゃんに伝えといて』
それだけゆうてあたしは電話を切った。
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