大谷と別れてから
どうやって歩いて 小泉家に帰って来たかわからんかった。
川島さんと何もないという 大谷の瞳は曇ってなかった
せやからそれはきっと本当のお話やから…信じればよかった。
もっと冷静になればよかった…
仲直りするはずで来た日本やのに…
のぶちゃんに背中押されたのに…
ヤキモチと嫉妬で素直になれんかった。
頬にキスと抱き合ってたのは うっかりやったかもしれんし
おんぶも何か理由があったはず…
一方的すぎに言い過ぎた。
逢ったら ゴメンナサイってゆうて抱きしめようと思っていたのに…
あたしってほんまのアホっ娘。
けどあたしからのプレゼント。『いらん』って言葉聞いたの何回目なんやろ…
あたしは大谷から拒否された。
『おまえ変わったな。モデルになって生活が派手になったみたいやな。
正直オレは庶民やし ついてけんわ(笑)』
違うねん。
あの手袋は少しずつお金溜めて買った
派手な芸能人みたいにぽんっと買ったわけやない。
基本会社員のあたしにはそんな宵越しの金は持たんみたいな事できひん。
なんでわかってくれへんの?
あたしはそんなに変わってしもた?
放された手の感触が消えへん。
目を閉じると あの時の言葉が胸を詰まらせる。
無表情な大谷の顔があたしを責める。
浅い眠りの中浮かんで消えて現実なのか夢なんかわからんくさせる。
気が付けば朝。
あたしは夢の中で泣いていたみたいで頬を涙が伝っていた。
『さぶっ…。』
久々の自分の部屋の中で暖房のスイッチを入れる。
毛布をぐいっと肩までかけてその中で携帯をこっそり盗み見る。
『…』
大谷からのメールも着信もない。
もしかしたら『言い過ぎた』って大谷が連絡してくれるって期待してた。
『オレがうっかりしてて…』とか
『アホ オレの彼女はおまえしかおらん。』とか言ってもらえると甘えてた
あたしから『川島さんとの事 やきもち焼いてしもててん』って言えば…
いえへんよ。
だってあたしは…
モデルになって生活派手になってしまったらしいから…
あたしはちっとも変っていないはずやのに何ですれ違うん?