21.Une nouvelle rencontre to.anri

久しぶりの日本
来日の目的はデパートのディスプレイの確認＆春のパリコレのモデルオーディション
オーディションは昨日無事に終ったけど収穫なしで困っていた。
最初からオーディションのやり直しを考えると頭が痛い

次の目的地であるＩデパートへ行こうとした時

『しまった。地図がない。』

カバンのポケットにネジ入れてたはずのＩデパートの地図がないのに気が付いた
地図代わりになりうるはずのスマートフォンは充電切れて役にたたない。
（アレってどうして消耗が早いんだろうね）

あとは　人間の感を頼りに現地に行こうと試みたが　さっぱり分からない。
繰り返される都市開発で　全く変わってしまった土地での地図なし一人歩きは危険。

少しだけ知った景色に出た時　あいつの事を思い出した。
そういや　相沢の事務所ってこの近所のはず…。

『仕方ない。相沢の所に寄って行くか』

ボクは相沢デザイン事務所をめざして歩き出した。
ここからあいつの事務所なら目をつぶっても行ける。

相沢とは高校の時の親友

ハーフであるボクの事を偏見も持たずに付き合ってくれた唯一信頼出来る奴
相沢は　デザインからスタイリングなどを請け負う会社を立ち上げた時
ボクは　un rêveという名前をプレゼントした。
『名前に負けないような会社にして篠崎といつか仕事出来るように頑張るよ』
なんて笑ってた相沢…。それが今回こんな形で叶う

『Un événement splendide』
（素晴らしい出来事だよ。）

見覚えのある路地を曲ってすぐの赤いビル
３階のドアを開くとそこが事務所。

『Est-ce qu'il n'y a pas l'aujourd'hui?』と声に出して気が付く
そうだここは日本だった。

『すみませーん。』

何回か　声を掛けても事務所の中は無人
受付と描かれているテーブルには
＜御用の方は地下倉庫に声をおかけください＞とあった。

地下倉庫に降りていくと
『ふーんふーんふーん♪これとこれっ　かわいいっ』

ふいに　聞こえてきたのは女の子の声。
そっとドアから中を覗き見るとボクがデザインした洋服を楽しそうに組合してる女の子。

『いやーん。このアクセサリーめっちゃクールやんっ　これはこっちに…』

くるくる変わる表情が　キュートだ。
背が高いな。１８０㎝ぐらいあるのかな？
スラッとスレンダーなボディに　きっとボクのデザインした洋服が似合うはず…。

『見つけた…。Mon ange』
（ボクの天使）

事務所の電話を無断拝借してＩデパートで待機しているスタッフに連絡を入れる

『Anna je.. Henri　
今どこ？早く現地に来いって（笑）わかってるよ。
　　それより例のモデル見つけたよ。逸材だMon angeだよ。
　　…だから…ねえ？そこに相沢いる？いたら電話　変わってくれないか？』