投資家の目線

投資家の目線172(金融危機と貸し渋り、貸し剥し)

 先週、米国第6位のS&Lワシントン・ミューチュアルが経営破綻した。預金量は日本円で約19兆円と報道されており、昔の下位都銀ぐらいの規模である。あのワコビアにも身売り話が出ている。サブプライムローン問題が発端となり、ここまでの金融危機に至ったかという感じだ。サブプライムローンを利用してきたのは通常の住宅ローンが組めない信用度の低い層の人や、一部のグループのセカンドハウスを購入する人だったと聞く。自宅を担保に借り入れを行うホームエクイティローンの利用もあり、米国の住宅価格の下落はローン債権のデフォルトにつながりやすいと考えられる。
 本来、サブプライムローン問題はそのような層の人々に資金を貸したことが問題のはずだが、選挙対策のためかどうか有権者の受けが悪そうなそのことはあまり問題とされない。確かにその階層だけで済めばこんな大事にはならなかっただろう。しかし、今はむしろそこから派生した証券化商品への不信・不安の方が大きいように感じる。証券化商品になかなか買い手がつかない流動性リスクの増大による価値の低下である。そんなところからか、証券化商品を組成した投資銀行などの方が悪玉にされている。
 日本では、貸し渋りや貸し剥しが問題視されている。しかし、貸付金利の上限が実質的に下がった現在、信用度の低い層に貸付を行わなかったり、債権回収を行ったりすることは不良債権化を防ぐ上で正しい行為だ。特に、貸付債権を証券化して転売することによって資金回収が難しくなっている今、資金を回収する手段として貸し剥しは有効な手段であり、むやみに批判するのはいかがなものかと思う。もっとも、借り入れができなかった側とすれば自分はそんなに信用度が低いのかと怒るだろうが・・・。

 また、香港の大手銀行では取り付け騒ぎが起こった。言ってみれば、預金者の銀行に対する貸し剥しだ。携帯電話の情報がきっかけとか。携帯電話がこれだけ普及した時代に、いろいろな意味で取り付け騒ぎを抑止するのは難しいかも。
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・2008/9/26日本経済新聞朝刊(首都圏版)によれば、新銀行東京の2008年4-6月期の無担保・無保証融資の実行件数が、前年同期に比べて9割以上減、融資金額は27億円と前年同期の38億円から3割減だった。正社員が大量退職したことを考えると、新規融資先を幅広く開拓することができにくくなっているのではないかと推測される。

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