しばらく前だが、ライブドア事件で堀江、宮内両氏が上告した。高裁の堀江被告への判決要旨を見ると「規範意識」を問うている。しかし、そこには裁判所の求める経営者の規範意識はどういうものなのかは書かれていない。
堀江氏の高裁判決が出た直後7月27日の朝日新聞の社説「堀江被告実刑―断罪が導く地道な時代」では「頼みになるのは顧客や従業員、そして社会からの支持だ。事業を通じて社会にどう貢献するか。ここに心を砕く経営者が増えるよう期待したい」と書かれていた。しかし、TCIのホームページによれば、本年のJパワーのプロクシーファイトの際に、2500通を超える委任状が届いたそうである。本年6月29日付の読売新聞社説ではJパワーや日本興亜損害保険の株主総会について「両社とも、安定株主作りで懸命に防戦し、なんとか乗り切った形だ」と書かれているほどだ。それならば株主に対する配慮に乏しい、朝日新聞社説の唱える経営者の規範意識は社会常識からずれている。少なくとも不十分である(すかいらーくの例を見れば、必ずしも従業員をあてにできるわけではない。また、久保利英明氏は「株価下落続けば来年の総会の波乱要因に」と書いていたNIKKEI NET 経済羅針盤2008/9/16)。
第一、判事に経営者の規範はかくあるべしと規定する権限はあるのだろうか。
今後、舞台は昨年暮れに裁判員制度の広報において不適切な契約処理、会計処理を指摘された最高裁に移る。
先週の日本経済新聞で、SPC取引の特集があった(「揺れるSPC取引」)。SPCはSpecial Purpose Vehicleの一形態だが、実質支配の線引きは難しいようですね。また、粉飾決算だのなんだのっていう騒ぎにならなければよいのだが。
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・不適切な情報開示などが問題視されているアーバンコーポレイションが民事再生法適用を申請した8月13日に突然、健康上の都合により社外取締役を辞任した土肥孝治氏は元検事総長だったんですねえ。同社のコンプライアンスに役に立っていたのだろうか?
そのうえ先週、また検察官等の不祥事が報道された。
[セクハラ]検察官ら、3件で懲戒処分 山口地検 2008/9/30 毎日新聞電子版
http://news.livedoor.com/article/detail/3839151/
・3日に米国で「金融安定化法」が成立した。その前に、東京都議会財政委員会でも新銀行東京の減資に伴う財政措置を含んだ補正予算案が可決された。世界各国で金融機関の「bailout」関連の問題が発生している。なお、金融庁は、民主党との会合で新銀行東京の現在の経営状況について「流動性と支払い能力は問題ない」との認識を示したものの、検査結果開示には否定的な回答をしたと報道されている。
「新銀行の検査結果開示を否定、金融庁、民主と会合」 2008/10/4 日本経済新聞朝刊 (地方面東京)
追記
・10月7日の読売新聞一面には「入団に制限案いきなり大リーガー、帰国後のプロ野球」が(毎日新聞も一面も同類だけど)。読売グループにとってプロ野球問題が一大事であるのは分かるとしても、NYダウが1万ドルを割り込んだ日の朝刊に・・・平和ですねー。