投資家の目線

投資家の目線889(農産物の不作)

 最近、農産物の不作に関する記事が多い。フランスからルーマニアまでのトウモロコシ畑が熱波に襲われ(“Europe’s Parched Earth Hits Corn as Climate Crisis Resounds” 2022/8/4 Bloomberg)、カリフォルニア州は渇水で、「用水路の壁には白い塩分が張り付いている状態で農業用水としては使用不可」(「米カリフォルニア州が深刻な渇水 河川に海水が流入して塩分濃度が上昇 農業に大きな影響― スポニチ Sponichi Annex 社会」 2022/8/10)だという。イングランドの一部地域も干ばつで、環境・食料・農村省や環境庁、水道会社などからなる「国家干ばつグループ」が、イングランドの南部や東部などを「干ばつ状態」に位置付けることを決めた(「イングランドに干ばつ宣言 英、76年以降で最も乾燥」 2022/8/12 日本経済新聞WEB版)。一方、日本や大韓民国では水害によって農産物に被害が出ている(「7月大雨、激甚災害指定へ 農地復旧へ国が補助」 2022/8/5 共同通信、『879ヘクタールの農地が浸水、病虫害まで…集中豪雨で「物価災難」=韓国』 2022/8/12 中央日報日本語版)。

 

 投機筋が減って価格は下がったものの、『ゴールドマンのアナリストは3日のリポートで「トウモロコシ、大豆、春小麦の生育状況はここ6週間、ほぼ継続して悪化している」と指摘。米国の収穫量が2~3%減少し、トウモロコシと大豆は消費量に対する在庫量の割合が過去最低水準に落ち込むとの予測を示し』(「【焦点】投機筋が消えた穀物市場、価格下落に拍車」 2022/8/6 ダウ・ジョーンズ配信)ている。ウクライナからの輸出が再開すれば、将来の小麦不足が解消されるというものではないようだ。米農務省は、2022~23穀物年度の世界の小麦生産見通しを過去最高の7億7960万トンに引き上げ、トウモロコシは米国が減産の見通しであることを発表した(「世界の小麦生産、過去最高見通し 米農務省」 2022/8/13 日本経済新聞WEB版)。同記事によれば小麦はロシアの生産を過去最高と見込んでいる。しかし、ロシアの非友好国である日本に良い影響はほとんど見込めない。

 

 ロシア、ベラルーシが原料を多く生産するカリ肥料だけでなく、窒素肥料の価格も上がっている。窒素肥料はアンモニアを原料とするが、成分のうち水素を作るためのエネルギーとして主に天然ガスが使われる。ロシアからの天然ガス供給の減少でドイツの化学産業は原材料不足を訴えており、「Ifoの専門家、アンナ・ウォルフ氏は、窒素肥料の価格が5月に170%上昇したと述べた」(「ドイツ化学業界、ガス価格上昇で大打撃」 2022/8/9 ダウ・ジョーンズ配信)という。気象問題だけでなく、肥料問題も農業に悪影響を及ぼしている。

 

 日本は小麦の約9割を外国からの輸入に頼っており、49.8%がアメリカ、33.4%がカナダ、16.8%がオーストラリアである(2016~2020年、「小麦はどこの国から輸入(ゆにゅう)されているのかおしえてください」 農林水産省HP)。日本が約半分を輸入している米国での小麦の収穫量減少は、日本の食品業界の業績や消費者の家計、栄養状態に悪影響を及ぼすことが懸念される。

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