投資家の目線

投資家の目線926(拡大するBRICS)

 新たに19カ国がBRICS加盟に関心を示している。そこには、サウジアラビア、イラン、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、エジプト、バーレーン、インドネシア、東アフリカの2カ国と西アフリカの1カ国が含まれ、南アフリカのスークラル大使は、「13カ国が正式に参加を要請し、さらに6か国が非公式に要請した。毎日参加申し込みをいただいています」と言っている(”BRICS Draws Membership Bids From 19 Nations Before Summit” 2023/4/24 Bloomberg)。南アフリカのラマポーザ大統領は、同国が国際刑事裁判所から脱退する可能性について表明している(『南アフリカ、「国際刑事裁判所からの脱退」を巡り混乱』 2023/4/26 日本経済新聞電子版)。同国は、ロシアのプーチン大統領がBRICS首脳会議に出席しても逮捕する気はなさそうだ。

 

 アルゼンチンは、中国からの輸入決済を人民幣建てで行うことにした。「4月の輸入額10億4千万ドル(1ドル=約135円)と5月に輸入を予定している7億9千万ドルも人民元で支払うという」(「アルゼンチン、対中輸入の決済通貨を人民元に」 2023/4/28 新華社通信)という。ブラジルのルラ大統領は、BRICS共通通貨や南米諸国の共通通貨創設を提唱している(「BRICS共通通貨の創設を支持=ブラジル大統領」 2023/4/26 ロイター)。また、「ルラ氏は中国を訪問中の4月13日、新開発銀行(NDB)本部を訪れた際、BRICS諸国に向けて自国通貨で決済するよう呼びかけた」(「中国をはじめBRICSで進む“ドル離れ”の動き 真の要因はアメリカにあり 心配される前代未聞の事態」 2023/4/25 デイリー新潮)。2021年にウルグアイは、UAE、バングラデシュ、エジプトとともにBRICSが運営する新開発銀行に加盟している。パラグアイも、中華人民共和国との関係を何とかしないと近隣諸国との貿易に支障をきたすのではないだろうか?

 

 一方、米国には連邦政府の債務上限の問題がある上に、「米連邦預金保険公社(FDIC)が米中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクを近く管財人の管理下に置く準備を進めている」(「米FDIC、ファースト・リパブリックを近く管理下に=関係筋」 2023/4/28 ロイター)と報じられるなど、金融不安は継続したままだ。これも米ドルに不利な要因だろう。米ドルの価値を維持するには高い金利で引き付けるぐらいしか手はないのではないか?供給のボトルネックの影響を理解せず、インフレ見通しを誤ったイエレン財務長官に(『米財務長官、インフレ見通し「間違っていた」 抑制が最優先』 2022/5/31 ロイター)、有効な対策が打てるのだろうか?

 

 インドのシン国防相はロシアのショイグ国防相と会談し、「両国は特に防衛面における継続的な信頼と相互尊重に満足していると表明した上で、パートナーシップの強化に向けたコミットメントを再確認した」(「印ロ国防相が会談、防衛関係強化で合意」 2023/4/28 ロイター)という声明を出している。フィリピンのマナロ外相は中国との関係について、「両国のリーダーたちは西フィリピン海(南シナ海)における立場の違いが両国関係の全てではないことで合意している」(「中国・フィリピン外相が会談 南シナ海問題など議論」 2023/4/22 日本経済新聞電子版)と発言している。シンガポールは中国と合同軍事演習を行う(「中国とシンガポール、合同軍事演習実施へ」 21年以来 2023/4/24 ロイター)。アジアでも中ロは孤立しているわけではない。

 

 ロシアが議長国を務める4月24日の国連安全保障理事会には、UAE、ガボン、ガーナは外相級が出席した(「ロシア議長で国連安保理、欧米と衝突 両者の溝深く」 2023/4/25 日本経済新聞電子版)。岸田首相がアフリカのエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークやアジアのシンガポールを(「岸田文雄首相、シンガポールのリー・シェンロン首相と会談へ」 2023/4/26 日本経済新聞電子版)、萩生田自民党政調会長はフィリピンを(「インド太平洋で連携確認 萩生田氏とフィリピン高官会談」 2023/4/29 日本経済新聞電子版)、二階元自民党幹事長が先日ブリンケン米国務長官の訪れたベトナムを(「自民・二階元幹事長、5月にベトナム訪問へ 国家主席と会談」 2023/4/26 日本経済新聞電子版)、林外相がトリニダード・トバゴ、バルバドス、ペルー、チリ、パラグアイを訪問する(「林外相、中南米5カ国訪問へ 中国の経済関与警戒」 2023/4/28 日本経済新聞電子版)。これは訪問する国々にG7側についてくれるよう説得するためだろうが、後手に回っているようにしか見えない。プーチン大統領は、ロシアの議会、政府、地方当局のすべての力を動員して、「ユーラシア、アフリカ、中南米の友好国と実利的かつ平等で、双方に利益をもたらす、独占的な協力関係を拡大するつもりだ」(「ロシア、中南米・アフリカとの関係拡大 欧米に対抗=プーチン氏」 2023/4/28 ロイター)と述べている。岸田首相らの訪問国の中で、財政難の今の日本に実利的な利益を与える能力があると信じる国はどれだけあるのだろうか?G7サミットを前に、「日本は頑張ってますよ」アピールにしか過ぎないのではないだろうか?

 

追記:最終更新 2023/10/5

↓南米の産油国ベネズエラもBRICS加盟を望んでいる。

ベネズエラはBRICS加盟を望んでいる=マドゥロ大統 2023/5/30 sputnik

 

↓バングラディシュもBRICS加盟申請

BRICSへの加盟を希望する国が増加  2023/6/22 新華社通信

 

↓エチオピアもBRICS加盟申請

エチオピア、BRICS加盟要請 アフリカの成長国 2023/6/30 ロイター

 

↓ベラルーシもBRICS加盟申請

ベラルーシ、BRICSへの加盟申請 5月に=通信社 2023/7/25 ロイター

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