岩上安身著「あらかじめ裏切られた革命」(1996年 講談社)を読んで、90年代前半のロシアと現在の日本を比較してみた。
1.経済
・ワシントンコンセンサスに基づく経済運営
露:IMF主導の経済運営
日:TPP、(国家戦略特区も内容によってはあてはまる可能性が否定できない)
・インフレーション
露:ハイパー・インフレーション(社会的弱者にシワ寄せがくる)
ドルを得るために外国との合弁企業に勤務
日:2%のインフレ目標
・公共財産の私物化
露:「公共財産管理局」の問題
ロシア軍からの武器・兵器の売却・拡散(テロルにも使用可能な放射性物質を含む)
日:以前あった、「かんぽの宿」売却批判はこの観点からと思われる
復興予算の流用
・モノ不足・物価
露:モノ不足あり、物流の混乱、供給の独占構造が続いたので価格自由化後に価格が高騰
日:モノ不足なし、原材料価格の上昇の兆候はあり、M&Aにより企業が大規模化し始める
・経済へのマフィアの関与
露:マフィアの横行
日:暴力団対策はしているが、除染作業員の募集に反社会勢力の関与の報道
『特別リポート:福島除染に巣喰う「ホームレス取引」と反社勢力』 2014年1月8日 ロイター
・大都市と地方小都市・農村の格差
露:格差拡大
日:猪瀬都知事(当時)の法人住民税の国税化(地方への税の再分配)反対
(農地の大規模化が農村に悪影響を与える可能性も考えるべきではないか?)
2.政治
・対外関係
露:欧米のエリツィン政権支持
日:安倍総理らの靖国神社参拝へ批判
・右翼政治家の台頭、右傾化
露:「非西欧」の旗印、ジリノフスキー人気
(欧州でも極右(を看板にしてビジネスを行う)政治家が台頭、ネオ・レイシズムの拡大、94/3/6の朝日新聞朝刊は欧州各国の右翼政党と統一教会の関連団体「カウザ」の親密な関係を報じる)
日:海外でも安倍政権の右傾化が報道される、在特会のデモ
・政権内部
露:エリツィンと「最も近い同志たち」が、最高会議を解散させるため作戦を練る(のちに、エリツィンは最高会議ビルを砲撃する)
日:第一次安倍政権は「おともだち内閣」と揶揄される
・少数民族問題
露:少数民族の分離独立(独立後のグルジアで内戦発生)
(旧ユーゴの処理失敗で西欧諸国は民族自決主義原則が無制限に拡大して地球規模の「アウト・オブ・コントロール」を招くことを恐れる)
日:沖縄独立論、アイヌ民族党発足
3.マスコミ
・対外関係
露:汚職政権のスキャンダルについて公表することは非常に難しい
日:記者クラブ問題
4.その他の感想
・ロシア国家評議会議長の娘が米国留学して米国籍取得、企業を設立し、彼女のビジネスはファミリービジネスではないかと疑われる。中国の温家宝前首相の蓄財問題が報じられたが、どこの国でも同じようなことが起こっていたのだと実感する。
・グルジアにおける、民主主義の形式上の正統性はないが、統治者個人の政治的力量があり、武力で実効支配の既成事実があるシュワルナゼ政権を国際社会は承認する。シリア国内で武力に勝るアサド政権に有利に働く要因だと感じる。
・「どこかで誰かが計画をつくり、官僚が命令したら、国民はただ黙って従わなくてはならない」、「ポスト共産主義のロシアにおける「法秩序の確立」とは、先に富と権力を奪うことに成功した者が、その傷跡を隠蔽し、あとから遅れて来て奪おうとする者をとりすました顔で裁くこと、そしてそれを正当化する欺瞞的な名目と機制を打ち立てるだけのことになるだろう」という言葉は覚えておくべきだろう。
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事