投資家の目線

投資家の目線759(鉄鋼業界の決算)

 2月7日、日本製鉄の今期第3四半期決算が発表され、同時に2020年3月期の連結最終損益が4400億円の赤字になる見通しと修正するとともに、生産設備構造対策を発表した。同社のニュースリリースによれば、和歌山製鉄所の第1高炉や名古屋製鉄所の厚板ラインの休止、大分製鉄所光地区のチタン溶接管製造ライン撤退などが計画されている。なお光市は安倍首相の弟岸信夫衆議院議員の選挙区にある。

 しかし、一番地域に大きな影響を及ぼすのは、2023年上期末をめどとする呉製鉄所の全設備休止(実質的閉鎖)であろう。「同製鉄所で働く従業員約1000人は他の製鉄所への配置換えをする見通しだが、特定の業務を委託する協力会社や取引先企業も地場には多い。地域経済や雇用に与える影響を懸念する声が広島県から出ている。」(「日本製鉄、呉製鉄所閉鎖へ 地域経済・雇用に打撃」 2020/2/7 日本経済新聞WEB版)という。呉市のある広島5区は寺田稔総務副大臣兼内閣府副大臣の選挙区である(参議院の広島選挙区には、話題の河合案里氏もいる)。

 2月6日には神戸製鋼所の2020年3月期の第3四半期決算が発表され、今期の予想連結最終損益が前回予想から赤字幅が100億円増加し150億円の赤字になるという。同社のアルミ事業所は、安倍晋三首相の地元下関市や、上野通子(参議院議員)文部科学副大臣の地元栃木県(栃木県には日産自動車の工場もある)、佐々木さやか文部科学大臣政務官の地元神奈川県には藤沢事業所が、さらに広島県東広島市(広島4区)には西条工場もある。直接の選挙区ではないが、赤羽一嘉国土交通大臣の地元神戸市には神戸製鉄所がある。

 2月12日のJFEホールディングスの2020年3月期の第3四半期決算では、今期の予想連結最終損益が前回予想から200億円減の130億円の黒字になると発表された。傘下のJFEスチールには、仙台市、千葉市、川崎市、西宮市、愛知県半田市、倉敷市、福山市に製造拠点があり、千葉地区と京浜地区の製造ラインの一部を休止し、約360人の従業員を配置転換することも発表された(「JFE、東日本製鉄所の鋼板加工一部休止 需要減で」 2020/2/12 日本経済新聞WEB版)。川崎市川崎区からは田中和徳復興大臣が選出されている。また、仙台市宮城野区のある宮城2区で選出されたのは秋葉賢也内閣総理大臣補佐官で、他に仙台市関係では西村明宏内閣官房副長官(宮城3区)がいる。西宮市からは赤羽一嘉国土交通大臣、倉敷市からは加藤勝信大臣と橋本岳副大臣の厚生労働省コンビが選出されている。さらに、造船部門では舞鶴事業所の新造商船事業が終了し、艦船修理事業だけになる。

 2月8日から、米国が鉄鋼、アルミの一部加工品に25%、10%の追加関税を徴収するようになった。日本製鉄やJFEホールディングスの動きはそれを一部見越した動きかもしれないが、神戸製鋼所には新たな対策が必要になってくるのではないだろうか?

追記:2019年の鉄鋼輸出実績(全鉄鋼ベース)、米国への輸出は128万トン(「2019暦年鉄鋼輸出入実績概況」 一般社団法人 日本鉄鋼連盟)。

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