東洋経済オンラインで日産自動車がアメリカ市場で販売不振に陥っていることと報道された(「日産がアメリカで陥った販売不振の深刻度」 2020/2/13 東洋経済オンライン)。
この記事では、販売台数を伸ばすために販売奨励金を原資に値引きする薄利多売の販売戦略や、レンタカー販売への依存が批判的に取り上げられていた。レンタカーは数年後にメーカーが買い戻す契約になっていて、買い戻した車は中古車市場に回り、『中古車相場が崩れ、個人が新車を買い替える際の下取り価格も下がる。「リセールバリューを同じサイズのセダンで比べると、日産車はトヨタ車より約3000ドルは低い」(日産ディーラー)』(同記事)という。
しかし、利益を抑えてもシェア拡大を図る戦略が間違いとは思わない。生産台数が少なければ工場の稼働率や部品業者などに対する購買力が落ち、コストは上がるだろうからだ。
日産自動車に限らず、日系メーカーの自動車に経済性以外の売り物があるのだろうか?先のトヨタ車のリセールバリューが高いというのも経済性の問題だ。フェアレディZのブランド価値がフェラーリやポルシェより高いとは思えないし、インフィニティのSUVやセダンがポルシェカイエンやメルセデスベンツ、リンカーン、キャデラック、ロールスロイスよりも高級とも思えない。そもそもインフィニティやトヨタ系のレクサスにしても30年ぐらいしかたっておらず、欧米メーカーよりも歴史は浅い。ブランドが定着するには、なお数十年かかるのではないだろうか。さらに、かつてならフェラーリのような高級スメ[ツカーには手が届かないが、フェアレディZなら買えるという生活にチョット余裕があった人たちもいたが、今のように中間層の生活が苦しくなればチョットお高い趣味の車に手を出す余裕もなくなっただろう。
ゴーン元会長はトヨタほどの力はない大衆車メーカーである日産の実力を最大限引き出した経営者だと思う。ゴーン氏らの逮捕以降、外国人幹部の同業他社への転職が見られ、取引のあった顧客もそちらに流れる可能性も考えられる。
2019年累計の日産自動車の国内生産台数に占める北米への輸出比率は34%(=272054台/807744台 2020/1/30日産自動車HPニュースルーム)とトヨタの25%(=851006台(含むレクサス)/3415864台(ダイハツ、日野を除く) 2020/1/30トヨタ自動車HPトピックス)に比べて高い。先の東洋経済の記事でナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストが言うように、一部の工場閉鎖の検討も必要になるのではないだろうか。日米貿易不均衡の主因が自動車であることを考えると、特に日本国内の拠点の見直しが必要で、国内の雇用の悪化要因となるだろう。
なお、日産の持分法適用会社の三菱自動車と合わせた日本国内の製造拠点と、そこに選挙区のある安倍内閣の大臣、副大臣、大臣政務官は次の通り。
日産自動車関連
福島県
森まさこ(参議院議員)法務大臣(いわき工場)
栃木県
上野通子(参議院議員)文部科学副大臣(栃木工場)
神奈川県
佐々木さやか(参議院議員)文部科学大臣政務官
菅義偉官房長官(本社)
小泉進次郎環境大臣(追浜工場)
河野太郎防衛大臣(日産車体、オーテックジャパン)
義家弘介法務副大臣(相模原部品センター、厚木先進技術開発センター・テクニカルセンター、座間事業所)
福岡県苅田町
武田良太国家公安委員長兼防災担当大臣(日産自動車九州、日産車体九州)
三菱自動車
愛知県岡崎市
青山周平文部科学・内閣府・復興大臣政務官(岡崎製作所)
京都市
木村弥生総務大臣政務官(京都製作所、直接の選挙区ではない)
岡山県倉敷市
加藤勝信厚生労働大臣(水島製作所)
橋本岳厚生労働副大臣(同上)
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