投資家の目線

投資家の目線380(尖閣諸島の緊張)

 尖閣諸島の領有問題について、勝股秀通読売新聞調査研究本部主任研究員の「尖閣衝突 問われる日本の覚悟」(世界の艦船 2012月10月号)では、『今年5月、東京で開かれた米大使館主催のシンポジウムで,米海軍分析センター上級研究員のマイケル・マクデビッド氏(元海軍少将)は,「現時点において尖閣諸島は日本の行政管理下にある。クリントン国務長官の発言は,日本に行政権がある以上,安保条約の対象だといったのであって,それを失えば安保条約の対象から外れる」といい切った』と書いている。

 また、2012年9月17日のしんぶん赤旗では、アメリカの文書から『米国務省が72年3月に作成した「報道手引」(注)は「(日中間の)尖閣諸島の領有権争いについて中立であるという米国の基本的な立場に変更はない」との立場を示した上で、安保条約が適用されるかどうか問われた際「安保条約の条項は“日本施政下”に適用される、それゆえ尖閣諸島にも適用されると解釈できるようにこたえるべきである」と明記しています 米軍は尖閣諸島を「防衛」するという「解釈」を日本側に与えるとの立場です。』と書いている。尖閣諸島の領有問題で米軍が出てくることは期待できない。


 2012年8月28日のWSJ日本版で石原都知事は、「この問題についてアメリカは、日本が強い意思表示をすることに反対して、『穏やかにやれ、話し合いでやれ』と言って、あくまで日本に力を貸さなかったから、結局、(中国に)押し切られてしまって、日本単独であの島を守り切れなかった場合、アメリカは、結局太平洋を全部失うことになる=と、私はウォール・ストリート・ジャーナルに書いた。」と答えて(あるいは脅して)いた。尖閣諸島の紛争で米軍が出動しないとき、日本では日米安保、ひいては在日米軍基地の存在に疑念が生じ、石原都知事にとっては懸案である横田基地の返還が実現できる(普天間、辺野古、嘉手納、高江のヘリパッド、厚木、岩国、三沢などの基地問題にもかたがつく)というメリットがある。一方で、貴重な自衛官を犠牲にし、島を失うというというデメリットが生じる可能性も大きい。石原知事の言うとおり、日本に基地をおけなくなるというのはアメリカの軍関係者にとってはデメリットだろう。また、2010年の尖閣での漁船衝突事件のとき、アメリカ側に近づいた東南アジアの一部の諸国もアメリカは頼りにならないと見限るかもしれない。

 しかし、戦争にはお金がかかる。だがアメリカ政府にはお金がない。そのうえアメリカが一番借金している国は中国だ。アメリカが中国と戦争したら、アメリカの国家財政が破綻する可能性もあると思う。アメリカ市民はできれば外国の無人島の領有権争いに軍事介入したいとは思ってないだろう。


 台湾の空軍パイロットがF16に搭載した爆弾に「釣魚台は我々のもの」と書いたそうだ(2012/9/19 中央社フォーカス台湾)。日本では台湾のことはほとんど報じられないが、尖閣諸島の領有は中華人民共和国より中華民国(つまり台湾)の方が先に言い出したものだ。23日には台北でデモも予定されていた。尖閣諸島の領有問題は日中間の問題とはいえ、大陸と台湾で実質的にはひとつの政府になっていないので、北京の政府と交渉しただけでは根本的な解決にはならないように思う。やはり、この問題はまた棚上げに近い解決方法にならざるを得ないのではないだろうか?

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