「原発プロパガンダ」(本間龍著 岩波新書)は、日本で原子力発電を推進するための宣伝・広報戦略について書かれたものである。
広告主は電力会社が多いが、チェルノブイリ事故後の1986年の青森の東奧日報には資源エネルギー庁や科学技術庁が、1996年新潟県巻町の原発住民投票時には新潟日報には経済産業省・資源エネルギー庁が広告を出している。このスポンサー料は税金から出たものだろう。
ほかにも2015年2月8日の福井新聞に1兆円以上の税金を投入しながら何の成果も上がっていないゴクツブシ「もんじゅ」の広告が文部科学省によって、2014年には、原発事故で発生した汚染物質である「指定廃棄物」の最終処分場の必要性を周知する広告が河北新報などに環境省によって、「放射線についての正しい知識を。」という政府広報が全国五紙と福島の二紙に掲載された。これらは電通や博報堂のような広告代理店を通したものが主であった。
一方、青森放送の「核まいね」や広島テレビの「プルトニウム元年」のような原発に不利な番組には圧力がかかったという。田原総一朗氏がテレビ局をやめることになったのも著書「原子力戦争」への圧力が原因だったという。ちなみに1991年の原子力PA方策委員会委員長は読売新聞社の論説委員だった。原子力の分野において、税金で広告代理店とマスメディアが潤う構図だ。
本の話からはそれるが、原発を巡っては、日本は中国企業とも連携するようだ(原発部品輸出へ企業連合 中国国有大手と連携 2016/7/7 日本経済新聞 電子版)。これはあらゆる国の企業とも組まないとやっていけないほど、原発の採算性の低下を表しているのではないだろうか?原子力規制委員会は「もんじゅ」の運営体制見直しを勧告したが、このまま金食い虫「もんじゅ」を存続させるのか(もんじゅ運営体制見直しを勧告 規制委、文科相に 2015/11/13 日本経済新聞 電子版)?これも参議院選の争点になってもいいのではないだろうか。
さらに以前より緩和されたが、福島周辺県の農水産物を輸入規制している国はまだ結構ある。
「諸外国・地域の規制措置(平成28年6月30日現在)」農林水産省HP
福島県への観光客は減少したままで、売り上げがダウンしている郡山市の和菓子屋が、7月1日に東京や岡山の老舗と一緒にまんじゅうの無料試食会を開くほどだ(「郡山の柏屋、「三大まんじゅう」試食会、東京・岡山の老舗と。」2016/7/2 日本経済新聞 地方経済面 東北)。原発は事故が起こったら悪影響が長期間続くが、それでもまだ続けるのか?大規模な発電設備より、小規模水力発電の方が地域の雇用につながり、東京一極集中リスクの低減になるのではないだろうか?
福島第一原発の事故処理は前例がなく、いつまでかかるのか、どれくらいの金額がかかるかわからない。これは、どの党が政権をとっても日本が責任をもって行わなければならないが、その財源は大丈夫なのか?五輪のようなお祭り騒ぎよりこちらの方が重要だろう。
これも選挙の争点としてふさわしいと思うが、まったくと言っていいほどそれらをどうするかという主張は聞こえない。このように日本政府に事故処理の当事者能力がなければ、再び連合国(United Nations)に占領されることにならないだろうか?
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