投資家の目線

投資家の目線842(地区連銀総裁の金融取引)

 米国で地区連銀総裁2人の活発な金融取引が問題視されている。「米連邦準備制度理事会(FRB)は当局者の金融市場での活動を管理する内部規則の見直しに着手した」(「FRB、幹部の金融取引巡る内部規則を見直しへ」 2021/9/17 ダウ・ジョーンズ)という。そのうちカプラン・ダラス地区連銀総裁は元ゴールドマン・サックス副会長で、投資銀行部門を統括していたという(「米金融政策決めるFOMC参加者が個人的に株投資」 2021/9/18 日本経済新聞WEB版)。金融政策は、企業の内部情報に関わるものではないが、株式市場全体の動向や金利敏感銘柄などに大きな影響を及ぼす。

 かつて日本銀行では、総裁が「村上ファンド」に資金を拠出していて非難を浴びたことがあり、その時に「役員の金融取引等に関する特則」、「職員の金融取引等に関する特則」が制定されている。

 具体的には、「役員の金融取引等に関する特則」には、預貯金や保険などの取引可能金融商品以外の金融商品や投資目的不動産の取引禁止、金融政策決定会合直前の取引の禁止などがあげられている。

 また「職員の金融取引等に関する特則」には、「職務上知ることができた秘密を利用した金融取引等の禁止」、「日本銀行における地位や職務を利用した私募ファンド等の取得の禁止」、「短期売買等の自粛」があげられている。

 特定の職員については、金融政策決定会合に出席する職員は金融政策決定会合開始日の7日前からその終了日まで金融取引等を行ってはならない、金融市場調節またはこれを補助する事務に携わる職員は金融市場調節において日本銀行が売買の対象とする国債その他の債券の取得または処分を行ってはならない、外国為替平衡操作またはこれを補助する事務に携わる職員は外貨預金、外国有価証券、通貨デリバティブ等の取引を行ってはならない、当座預金取引もしくは貸出取引の相手方に関する選定基準の企画立案等に携わる職員は取引先株式等の取得または処分を行ってはならない。また、上席考査役または考査役に任命された場合には、取引先株式等を1か月以内に所属長に報告するものとされている。そのため、利益相反の問題があってもかなり限定的なものになりそうだ。

 ただし日本銀行の場合、ETFやREITも購入している。金融商品取引法では、公開買付者等関係者は公開買付け等の事実が公表された後でなければ、当該証券を売買してはならない。同行のETFやREITの売買情報を、外部を含めて事前に知った者がそれらを売買した場合、日本銀行の内部規定違反だけでいいのだろうかと思う。
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