投資家の目線

投資家の目線824(バフェット氏のSPAC批判)

 最近、SPACの上場について報じられることが多い。『SPACとは、英語の「Special Purpose Acquisition Company」の頭文字をとった略称。「スポンサー」と呼ばれる運用者が設立し、機関投資家から資金を募り、証券取引所に上場する。通常2年とされる期間内に、他の事業を営む未上場企業を買収して改めて上場することを前提にするが、SPACとして上場する時点ではどの企業を買収するかは未定なので、「空箱」とか「Blank Check Company(宛名のない白紙小切手会社)」などとも呼ばれる。』(『通称「空箱上場」...米市場で流行する「SPAC」とは何なのか そのメリット、懸念点を解説する』 2021/1/17 J-CASTニュース)。

 ウォーレン・バフェット氏らは、バークシャー・ハサウェイの株主総会でSPACを批判していた。『バフェット氏はSPACを「厄介者」と表現した。SPACは通常、設立から2年で買収先を見つけられなければ解散となる。設立者は買収成立で多額の報酬を得られる仕組みになっており、期限内に何とか案件を作ろうとする。競争は激しく、買収価格はつりあがる。マンガー氏は「品格を失っている」と批判した』(『バフェット氏「SPACは厄介者」 総会で投機に警鐘』 2021/5/2 日本経済新聞WEB版)。バークシャー・ハサウェイも今でこそSPACと同じ投資会社だが、もともとは紡績会社だった。米国だけでなく、日本でも、現在では投資銀行業務を行うOakキャピタルは、以前は平田紡績という漁網会社だったという例がある。

 『マネーの魔術史 支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか』(野口悠紀雄著 新潮選書 新潮社 p111)には、南海泡沫事件の頃に「誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す事業を運営する会社」が設立され、出資金が集まったら設立者はその夜のうちにカネを持ち逃げしたことが書かれている。SPACは企業買収を目的とするだけで、最終的にどんな事業を行うのかわからない会社だ。短期間で設立者が多額の報酬を得られることも、「誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す事業を運営する会社」と共通する。事業が投資しかないSPACは、法には触れない「誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す事業を運営する会社」のように見える。今の株式市場はバブルの様相を呈しているとしか思えない。

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