投資家の目線

投資家の目線829(東芝の調査報告書)

 2021年6月10日、株式会社東芝の「会社法第316条第2項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者による調査報告書」を提出された。調査に当たった弁護士は、東芝と経済産業省の関係について「やや不当な関係性が見受けられる。決して良い関係であったとは言えない」と語った(『東芝調査の弁護士「東芝と経産省、不当な関係性」』 2021/6/10 日本経済新聞WEB版)。6月15日には、監査委員会委員長ら2人を第182期定時株主総会の取締役候補から撤回することが発表された。

 報告書p61の脚注に、次のような記述がある。
『この点、車谷氏はヒアリングにおいて、①朝食会への出席について暗に認めつつ(当初は記憶がないと述べた。)、②自ら添削もしていたことが認められるポジションペーパーそのものにつき記憶がないと述べ、また、③菅官房長官との朝食会では個別の話はできず、会食の前後にも話はできないなどと述べた。しかしながら、当該朝食会で菅官房長官に対して説明することを前提に、加茂氏らが事前準備を行いポジションペーパーを作成し、車谷氏が自ら修正していたこと、改正外為法の適用第一号案件になり得る事案であって政策的関心も高く個別企業の陳情に留まらない事案だったと推認されること、その後、7月27日朝に車谷氏の部下である加茂氏が、菅官房長官との朝食会に出席し、持参した資料に基づき菅官房長官に説明し、菅官房長官から「強引にやれば外為で捕まえられるんだろ?」などとコメントされていたことからすれば、車谷氏の上記発言は信用することができない。』

 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長らの逮捕直後にも日産自動車の専務執行役員が菅官房長官(当時、現首相)と会見したことが報じられていた(投資家の目線753(カルロス・ゴーン氏の無断出国) 投資家の願い)。会長逮捕後、日産自動車の業績はさらに悪化した。

 日本のSPAC解禁は、経済産業省の新原経済産業政策局長が旗振り役だという(『経産省が頼る「首相の一文」』 2021/6/15 日本経済新聞朝刊)。金融庁は、海外ファンドの参入を容易にしようとしている(「ファンドの日本参入、迅速に 実績あれば審査不要」 2021/6/13 日本経済新聞朝刊)。日本政府は投資自由化路線の経済連携協定を推進しているのでこの方向性は理解できる。とはいえ、都合が悪くなれば、強引な法解釈で議決権行使をなどの投資家行動を制約するのなら、海外投資家は安心して日本企業に投資できないだろう。投資家は資産を増やすために投資するのであって、日本政府の都合に合わせて投資するわけではない。日本政府におもねり、ファンドの顧客の利益をないがしろにするなら、その運用担当者は信任義務(fiduciary duty)違反である。

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